おかしな日本語「テンションが上がる」

いつから使われるようになったのでしょう。
「テンションが上がる」という表現をやたらと目にします。

「この服着るとテンションが上がるのよね~」
「テンションが上がる曲ベスト100」...など。

ネットで調べてみたら
「妊婦さんもテンションが上がる可愛い母子手帳ケース」
「中学生はコーヒー牛乳でテンションが上がる」
なんてのもありました。

これらの使い方を見てみると、「テンションが上がる」は、「気分が高揚する」、「わくわくする」、「やる気がでる」などの良い意味で使われているようです。

私はこの表現を見聞きするたびに、「テンションは上げたらあかんやろう~」と言いたくなるのです。

tension の意味は、そもそも「ぴんと張ること、伸ばすこと」で、物理の用語では「張力にあたるものです。これが精神的な意味になると、「緊張、不安、国家間の緊迫状態」を指します。

Longman の定義
1. a nervous worried feeling that makes it impossible for you to relax
リラックスできないピリピリした不安な感覚

2. the feeling that exists when people or countries do not trust each other and may suddenly attack each other or start arguing
 人々や国家間で信頼が築けず、突如互いを攻撃したり論争が始まる可能性がある場合に存在する感覚

このように tension は良い意味で使われることはありません。

「テンションが上がる」を直訳すると tension rises になります。
実際に tension rises という表現は、「(好ましくない)緊張が高まる」という意味で普通に使われています。

google で tension rises を調べてみました。

以下は tension rises を含む英文の例です。
China vows to fight Trump tariffs 'to the end' as tension rises.
Tension rises in Hong Kong as protesters stand their ground.
UNHCR - Kosovo: tension rises after killing of Albanian journalist
Tension rises between Chile and Bolivia over water dispute.

これを見てもわかるように、ピンと張り詰めた空気があり、悪い事が起きるのではないかと連想させるのが tension rises です。「気分が上がる、わくわくする」などの意味で使われることは一切ありません。したがって、日本人が使う「テンションが上がる」は、とてもおかしな表現なのです。

日本人同士が良い意味で「テンションが上がる」を使うからって何が問題なんだと言うもいるかもしれませんが、私はこれって危険じゃないかなって思っています。例えばアメリカ人に、「この服を着ると、テンションが上がるの」と楽し気に言いたいときに、"My tension rises whenever I wear this dress." なんて言ったら、「こいつ危ない奴」と思われます。

ある単語を、英語の本来の意味と異なる意味で日本語化して使っていると、その単語に対する固定観念が出来てしまうように思います。これはあまり良いことではない気がします。

では、日本語の意味における「テンションが上がる」を英語で言いたいときには、何と表現するのでしょうか。

英辞郎には get hyped up という表現が載っていました。私はこの表現のニュアンスがよくわからないのですが、英語圏ではよく使うのでしょうか。weblio には to get excited とありました。「わくわくする」という意味のポピュラーな表現ですね。「やる気満々」の意味だったら、I’m so motivated. でもよいかも。

蛇足ですが、昔は smart も間違った使い方がされていました。「あなたってスマートね」の意味は「すらっとしてカッコいい」でしたね。今は smart の英語本来の意味が浸透してきて、「頭が切れる、洗練された」などの意味で使われるようになったようです。

ということで、今日は私が気になっていた言葉「テンションが上がる」について思うところを書いてみました。

ではまた。
Commented by KeisEcho at 2018-07-23 14:50 x
なるほどね~
いや、おっしゃるとおりですね。

ムーディーな音楽、なんてのもありますが。
今回の記事、ちょっと笑わせていただきました。

「僕は酒を飲むとテンションが上がるんですよ」なんて、
・・・危ない。
Commented by ladysatin at 2018-07-24 14:36
KeisEcho さん
こんにちは。「テンションが上がる」ってどこからこういう使い方をするようになったのでしょうね。とても変だと思います。個人的には、日本語として定着してほしくない言葉です。
Commented by naoty at 2018-07-24 22:38 x
日本語のハイテンションに近い、口語英語でhyperがあるようですね。
カタカナ語が沢山あるのに、違う意味で使われてるのは残念です。
同じ意味、近い発音で普及すると、もう少し日本人も英語が上達する気もします。
Commented by ladysatin at 2018-07-25 04:07
naoty さん
コメントをありがとうございます。hyper も使うようですね。Weblio で調べてみたら、get hyper で「気分が上がる」とありました。日本語の「テンションが上がる」の意味と大体同じかもしれません。「テンション」の代わりに「気分」を使ったらいいんですね。英語を日本語に取り入れるときは、やっぱり同じ意味で使いたいと思いました。
Commented by tempus fugit at 2018-07-30 01:32 x
過日の「日の名残り」スレでのやりとりにあらためて感謝いたします。新しい記事を興味深く拝読しました。

私も仕事で日本語と英語との間の溝に悩むことがよくありますが、ladysatinさんとはちょっと考えが違い、外来語はあくまで日本語としてとらえるようにしています(「カタカナの濫用」の問題はひとまず脇に置きます)。

最近、「リスクを取る」という表現を見聞きします。take a riskの影響でしょうか、英語から見れば理にかなっていますが、私には違和感があります。「危険」の意味で「リスク」を使うのなら「冒す」とします。それでも、「リスクを取る」が普通になったら、自分は使わないでしょうが、それを受け入れるつもりです。

外来語が元の用法と違ってしまうのは仕方のないことです。またこれは日本語に限りません。honchoが「班長」より意味が広いのは微笑ましいですが、「津波」がa tsunami of laughterなどと使われているのを見ると、先の震災で親族を失った知人がいることもあり、私は内心穏やかではありません。しかしそれに目くじらを立ててみても詮無いことです。

(続く)
Commented by tempus fugit at 2018-07-30 01:34 x
ふだん使っている日本語の言葉あるいは漢字も、昔の日本人が中国語を取り入れて自分たちなりに咀嚼・変形した結果、今の形になったものが多いはずです。原語を起点にして「この日本語はおかしい」というのは、日本語を外国語の視点や発想に縛りつけ、その生命力を奪うものだと考えています。

外国語学習でも、カタカナ語に限らず、母語の影響は避けられません。学習者が心すべきは、外来語の入った表現を外国語にする時に、日本語の直訳ではまずダメだということに常に気をつけ、適切な表現を必ず探るようにする態度ではないでしょうか。

なお上記のハンドル名には、十数年前に自分のブログに書いた、多少関係ありそうな記事をリンクさせていただきます。
Commented by ladysatin at 2018-08-01 04:53
tempus fugit さん
ご無沙汰しております。先日は色々と勉強させていただきありがとうございました。

tempus fugit さんのコメントならびにリンク先を拝見しました。おっしゃる内容はよく理解できました。しかし、私の考え方とは全く異なるものでした。これはどちらが正しいということではなく、単なる意見の相違になると思います。

私が今回、「テンションが上がる」について言及したのは、英語の意味とは全く異なる意味で使われていることを指摘したかったからです。私は外来語が悪いと言っているのではないのです。「リスク」は英語そのままの意味で使われており、それについては特に問題は感じません。しかし、「テンションが上がる」は「リスク」とは別の問題です。

私がこの記事を書いたのは、英語の学習者如何にかかわらず、ごく普通の人々が、何も不思議に思うことなく「テンションが上がる」を使っているのではないかと考えたからでした。そして、もしそういう方がこの記事をご覧になって、「本当は違う意味なんだね」って思っていただければそれでよいのです。

tempus fugit さんのお考えでは、「テンションが上がる」は日本語になっているのだから受け入れるべきということになると思いますが、その考え方は私にはかなり衝撃的です。
Commented by ladysatin at 2018-08-01 04:53
また時間があるときに続きを書きます。
一旦ここまでで失礼いたします。
Commented by nory at 2018-08-05 13:43 x
手近な(笑)英語人の旦那に日本語化しているカタカナ「テンション」使いどう思う?と聞いてみましたっ!
本人も「誰それはテンションが高い、低い」などと日常会話で言いますから使用感覚すっかりジャパナイズドされちゃってますけど(笑)英語本来の意味付けとしてはSatin姐さんが本文で説明されている通りの持論を展開してました。
日本語の会話でテンション、リベンジ、シンパシーあたりが登場しても日本式のニュアンスを共有出来て大意がおおむね通じ合えれば特に問題ないんだろうなあと思いますよ。
がしかし問題はいざ日本語が通じない相手に対して英語で話す、手紙やemailを書く機会・・・う~むむむ、元来の意味を知らない場合には望まぬ誤解が生まれたり、場合によっては相手の地雷を踏んでドッカーン!大激怒させてしまうかもしれません。(^_^;汗、汗、冷や汗。
言葉は川のこっち側とあっち側に架ける橋の役目を担う為の道具ですから、危ない橋を渡らない為にも外来語使用は場面次第で表現に気を付けた方が良さそうです。
豪人の女友達は私の苗字をファーストネームだと思い込んでいましたが知らないんだからしょうがないですよね「ハンガリー、中国、韓国、日本、は苗字が先、名前は苗字の後、ヨーコ・オノではなくオノ・ヨーコなんだよ~」と親切心で入れ知恵しておきました!彼女は物凄く恐縮して私に謝って来ましたけど一度こうして情報を仕入れておけば彼女は舞台やコンサートの照明スタッフとして世界中を飛び回っている人なので外国人との出逢いも多そうですし何か別の機会で彼女の役に立つと思います。(苗字呼び捨てを不快に感じる人は世界中どこでも少なくないと思いますので~)
Commented by ladysatin at 2018-08-06 15:25
nory さん
こんにちは。お久しぶりです。ご主人はネィティブの方でしたね。わざわざ聞いてくださってありがとうございます。日本に長く住まれていると、感覚が日本人的になるかもしれませんね。

リベンジ、シンパシー、リスペクトなどは英語の意味とそれほど変わらないのでまだよいのですが、「テンションが上がる」は首をかしげたくなります。「テンションは上げない、張るの」なんて言ったら嫌味かしら。その昔、「ナウい」という言葉が流行りましたが、今では死語になりました。「テンションが上がる」は生き残るんでしょうか。個人的にはそうなってほしくないですけど。

名字の呼び捨ては不快ですね。以前、外国人と仕事をしていたときに、日本の文化を知らない外国人が自分の上司の日本人を呼び捨てにしているのを聞いて、びっくりしたことがあります。文化を知らないから仕方がないということにはなりませんものね。人間関係に影響しますから注意してあげた方がよいですね。
Commented by 花子 at 2018-08-08 20:39 x
はじめまして。
語学好きとして興味深く読ませて頂きました。

横からになりますが私はtempus fugit さんの考えに近いです。
もちろんそれはLady Satinさんの仰る通り、単なる相違でしかないのですが。

昔、ほんの少しだけ言語学をかじったことがありました。
言語の洗練度合は、その言語が外来語をいかに取り込めるかで測れると、習った記憶があります。
そういった意味では、日本語は世界でも屈指の洗練された言語であると。
それを聞いて、日本語の母語話者として誇らしく思ったものです。

英語を学習し始めたばかりのころは、「本来の意味と違う」「みんな間違った使い方をしている」なんて思っていたものですが、日本語を言語として学んだ時に、日本語の懐の深さに触れたというか、英語を基準として考えていた自分に気づきました。

なので、私もテンションは受け入れ可能です。
とはいえ、あまりにもかけ離れた使われ方だと、びっくりすることもありますね。
Commented by tempus fugit at 2018-08-10 20:50 x
多忙で返信が遅れましてすみません。
私は愛読する夏目漱石を旧字旧かなでしか読まない一方、やっている仕事では「こんな和製外国語はおかしい!」と正論を吐いていたのでは始まらない場合もあるためか、言語感覚が分裂しているといいますか、この面で保守なのか革新なのか自分でもわからなくなることがあります。

「テンション云々」も、tensionとは意味や使い方が違うことを承知しつつ、日本語としてほぼ定着していると考えており、自分でも使います。一方で「リベンジ」は英語でrevengeとは言わない状況でも使われていると思いますが(ladysatinさんが「リベンジは・・・英語とそれほど変わらないのでまだよい」とお書きになっていのは、私には「かなり衝撃的」です)、こちらはなぜか非常に抵抗があり、使いません。我ながら分裂気味です。

こうした言葉を最初に流行らせるのはタレントやマスコミなどまちまちでしょうが、その人が外国語に詳しいとは限らず(むしろ逆のことが多い?)、使い方を決める公的機関も日本にはありません(英語圏もそうだと思います)。使用が広まるにつれ、原語とくい違ってくることがあるのは避けられないと思います。

この問題に本当に白黒をつけようとすると、言葉の「正しい」使い方は誰がどう決めるのか、さらにはそれを定める「お上」を認めるのかどうかまで論議が行ってしまうと思います。かなりイデオロギー的色合いが強くなってしまうので、ここで深入りはしません。

まあ、言葉の使い方について私はladysatinさんよりずっとチャランポランなところがあるのだと大目に見て、agree to disagreeということにしていただければ幸いです。
Commented by ladysatin at 2018-08-10 23:59
花子さん
初めまして。コメントをありがとうございます。

花子さんも「テンション」受け入れ OK でしたか。tempus fugit さんや花子さんのように英語力の高い方からそう言われると、私って心が狭いのかしらと思ってしまいます。とはいえ今のところ自分の考えは変わらないですが。

私が懸念していることは、多くの人が「テンションが上がる」を何の疑問ももたずに使っているのではないかということです。テンションの本来の意味を知っていて使うのと、知らずに使うのとでは大きな違いがあります。

私はかつて高校生に英語を教えていた経験があるのですが、もしも彼らが「テンションが上がる」を使っているのを聞いたらどうするか。「テンションの本来の意味をあなたは知っているか」と問います。そして、「知らない」と言われたら、英語の tension はどういう場合に使うのだと教えます。あるいは、tension を辞書で引けと言います。

そうすることで、彼らの知識が新たに増えるわけですね。私はそれはお節介でもなんでもなく、指導者として正しいことだと思います。その上で、彼らは「テンションが上がる」をこれからも自分は使うのか使わないのかを決めればよいと思います。ただしひと言「あなた達にはそういう使い方はしてほしくないけどね」と添えると思います。

花子さんのご意見、大変勉強になりました。
ありがとうございました。
Commented by ladysatin at 2018-08-11 00:00
tempus fugit さん
こちらこそ、中途半端なコメントバックで失礼しました。私も多忙で皆様へのお返事が遅れていました。

「リベンジはまだよい」と書きましたが、「復讐」の意味で使われているのなら英語の意味が無視されてないのかなと思ってのことでした。しかし、私自身が「リベンジ」を使う場面は、これまでも、これからもないと思います。恐怖を覚える言葉です。

この記事を書いた当初は、私の意見に近い人が多いかなと思いましたが、tempus fugit さんや花子さんは異なる意見をおもちだということがわかり、勉強になりました。私がお二人と違うところは、言葉に対する寛容度が低いということかもしれないですね。良くも悪くもこだわりが強すぎるのかもしれません。

これからも忌憚のないご意見をお願いできれば幸いです。
Commented by 免努苦齋 at 2018-08-12 14:32 x
こんにちは。

何か呼ばれたような気がしたので(笑)。

というのは、このエントリーは実に日本人的な議論だなあと思いながら、私は読んでいましたので。こういうことを気にし、またそれが話題になるのは、実に日本人らしい、と。これはまた我々日本人があまり意識していない日本語というエクリチュールの特性とも関係があるとも思うので、その点について少しばかり私見を述べさせてもらいたいと思います。確か「国語は祖国」といった言葉もあったはずなので。


言うまでもないことですが、我々日本人はもともとは書き言葉というものを持ってはいなかった。大雑把に言えば中国語を基に、それと対決することで現在の表記法にたどり着いた訳ですが、かっての高度な中国文明の周辺諸国の中で、例えば日本と韓国やベトナムを比べたときに最も目立つのは、漢字に対する態度の違いです。韓国やベトナムなど中国の周辺諸国は、すべて漢字を受け入れた訳ですが、現在は全部放棄してしまっています。言語のタイプが異なる(中国語が独立語であるのに、周辺の言語は膠着語)ので、漢字の使用が困難だからです。しかし、日本には漢字が残っている。のみならず、漢字に由来する「ひらがな」と「カタカナ」という二種の表音的文字が使われていて、日本では、この三種の文字によって、語の出自を区別しています。たとえば、外国起源の語は漢字またはカタカナで表記される。このようなシステムが千年以上に及んでいる。こういった漢字仮名交じり文という日本語のエクリチュールは世界でも非常に希な特異なものと言って良いでしょう。
Commented by 免努苦齋 at 2018-08-12 14:35 x
一般に公的、論理的、難解な概念は漢字で表され、仮名は心情、感覚的なもの、平易なものを示すとされるように思いますが、これら表意文字と表音文字とが交用され、片一方に統合されることがない。またこの点で、日本人には漢字はある意味では内面化されていると言えますが、ある意味では外在的であるとも言えるので、この意味では日本語というのは一種のハイブリッド言語だと言っても良いと思われます。日本語の中には「漢字」という内面化された外国語が常に存在しているので、常に外国語(の概念)との対立をその中に含んでいると言い換えても良い。「漢和辞典」というものの存在は実にこのことを象徴的に表していると私には思われます。日本においては「国語辞典」や「中日辞典」とは別にその存在理由がある事実は、考えてみれば不思議な事ではないでしょうか。

そして、こういった日本語の特徴は、勿論、功罪相半ばで、良い点もあれば悪い点もある。功の部分としては、外国語を取り入れるのに非常に長けている。音は(近似的にではあるが)カタカナで表せるし、概念も(近似的にではあるが)漢字を組み合わせることで表すことが出来る。日本語としてたちどころに消化し内面化できる訳です。言い換えるとどのような外国語であろうと”訓読み”が容易に出来るのです。よく日本人の語学下手が言われますが、我々日本人の長い歴史的伝統による”訓読み”という習い性がその大きな理由ではないかと私には思われます。ともあれ、これは逆に言えば、外国語を取り入れるのに非常に長けているということは、節操がないとも言えるので、罪の部分としては背後にある文化的な文脈をすっ飛ばして短絡的な内面化によって、言葉や論理の混乱に陥りやすいとも言える訳です。

Commented by 免努苦齋 at 2018-08-12 14:44 x
日本が明治維新以降急速に近代化出来たのも、この日本語の特性が大きくものを言っているのは間違いないでしょう。従ってこの外来語の問題は、現在の日本のあらゆる諸制度やその背後にある思考を考える上で非常に大きな問題を孕んでいるとも言えるので、この点について少し前に日本におけるリーガルマインドについて書いたので、私も上記のハンドル名に記事をリンクしておきました。もし興味があるという奇特な方がいれば、読んで頂ければ何らかの参考になるのでは、と思います。

ということで、前置きが長く難しい話になりましたが、「テンションが上がる」についてこのような議論が起るのも、日本語では「テンション」が外国語である事が明確に分かるように表記されていることがその理由だと思われます。例えば英語ではtempus fugit さんの挙げられていた「honcho」や「tsunami」は、由来を知っている人は別として、外国語である事はあまり普通英米人の意識に上らないでしょう。綴りなどからある程度の見当は付くでしょうが。ために日本人は外来語にセンシティヴにならざるを得ないとも言えます。
Commented by 免努苦齋 at 2018-08-12 14:46 x
そして外来語を議論する時に欠かしてはならないと思うのは、彼我の考え方や発想法の比較文化論的視点で、「テンションが上がる」という言い方が日本でこれだけ広まったのは、日本人の考え方や発想法にそれだけしっくりくる表現だからでしょう。この表現には「緊張感が足りない。」「たるんでいる。」といった言い回しに共通した考え方や発想法を私は感じます。ですから、「テンション」という外来語を使ってはいますが、これはむしろ日本的考え方や発想法の文脈に則った表現への転用と考えるべきで、この意味で ladysatinさんの文章の中で私に非常に違和感があるのは、

<「テンションが上がる」を直訳すると tension rises になります。・・・ピンと張り詰めた空気があり、悪い事が起きるのではないかと連想させるのが tension rises です。「気分が上がる、わくわくする」などの意味で使われることは一切ありません。したがって、日本人が使う「テンションが上がる」は、とてもおかしな表現なのです。>

という部分で、「テンションが上がる」を tension rises と訳すのは、明らかに誤訳でしょう。それを根拠として「おかしな表現」とするこの議論はちょっといただけないように思います。

では、「テンションが上がる」はどう訳せば良いのか。幾つか挙げられていたget(or be) ~ed というのは一種の説明訳で、間違いではないのでしょうけれど、私には「上がる」と動詞で表現しているのだから、やはり動詞を使った

It raises(or pumps or lifts) me up.

といった表現のほうが、よりしっくりくるような気がしますが、どうでしょうか。もっとも、その時の文脈にもよるのでしょうが。
Commented by ladysatin at 2018-08-13 19:17
免努苦齋さん

The Remains of the Day の記事の際には、様々なご教示をありがとうございました。
今回もお時間を割いていただき、前回同様に深い知識を共有していただき感謝申し上げます。
Commented by 免努苦齋 at 2018-08-15 14:33 x
ladysatinさん

ちょっと持論に引き付けすぎて、暑い最中、お忙しいところにコメントを返しづらい長文の書き込みで失礼いたしました。

結局、和製英語というものは、新しい和製英語(または和製外国語)に次々に取って代わられていくだけのものなので、「テンションが上がる」も、廃れていくと思いますよ。それらは、簡単に受け入れられただけに、所詮カタカナとして表記上区別される以上、日本語として本質的に内面化されることなく、それに対する闘いもないので、単に外来語として次々に脇に片づけられていく運命にあると考えます。多分、十年二十年スパンでみれば「ナウい」と同じように、そういえば昔はこんな和製英語があったな、ということになるかと思います。

ですから和製英語に関しては、tempus fugitさんは、謙遜して「チャランポラン」とおっしゃってますが、一々目くじらを立てるまでもないと思うので、そこから英語学習の得をする算段の方が大事ではないかという主張には大いに賛成です。そういえばチャランポランで思い出しましたが、「チャラン・ポ・ランタン」というグループが主題歌を歌っていたドラマの題名をもじって言えば、こんなところでしょうか(笑)。

「和製英語は恥だが、役に立つ!」
Commented by nory at 2018-08-15 19:20 x
挨拶表現の「お疲れ様です!」を文字で読んだり耳で聞いた際、英訳したところで何の意味も無い・・・日本語ベラベラ、第一言語が日本語でない私の友人知人、ついでに(笑)うちの旦那、日本語感覚で覚えて「あ、どうも、お疲れ様です!」と返せばそれでいいんじゃん?と言う人は結構多いですよ。

コトバを耳障り、目障り、快適に感じるか否か?は個々人の感受性、主観に左右されるんじゃないでしょうか?

うちの旦那だと日本語カタカナの「スキンシップ」が苦手らしく、旦那の脳内で感覚的に英語変換されちゃうんでしょう。
「スキンシップはなんとなく気持ち悪い、なんとなくヘンタイのいやらしいロリコンみたいな感じに聴こえて来るコトバだな~」って言いますから日本語で。
でもおじいちゃんやおばあちゃんが孫を抱っこしたり手をつないで歩く行為←微笑ましいスキンシップ光景だという意味だという事もちゃんと分かってます。
なので旦那は他人が「スキンシップ」どうのこうの言っていても耳障りに感じない反面、使いたくない日本語なのですって。
うははは!ロリコンもばっちり日本語ですよね。笑
シュミレーションと言う日本人は多いですけど私は特に耳障りには感じないですね、相手の云わんとする意味さえ理解出来ればシュミレーションでも話しは通じますから私の耳が不快に感じないだけなんだと思います。
まっ、日本語通じない相手であれば英語で頑張るしかないので発音もシミュ(死守と同じ角度母音を高めに)レーションと言う様にはしていますが。
言葉は道具ですよね、点字でも手話でも何でもいいんですが道具の使い方を私が書き下ろしたわけでもない、たかが辞書からいちいち固定化されたくはないですよ、以上私見でした!
Commented by ladysatin at 2018-08-15 20:49
免努苦齋さん

お察しくださってありがとうございます。コメントに圧倒されて、きちんとしたお返事が書けずにすみませんでした。この記事は「テンションが上がるっておかしいよね」って言いたかっただけで、それ以上の意味は何もないんです。誰も疑問に思わず使っていることが、不思議でならなかったのです。しかし、tempus fugitさんや免努苦齋さんのコメントを拝見し、私って実に薄っぺらい人間だと感じた次第です。他の方々のコメントも読ませていただいて、私の考え方のほうが少数派なんだなと、今では思っています。色々とありがとうございました。
Commented by ladysatin at 2018-08-15 20:50
nory さん

言葉が快適かそうでないかは、確かに個人の感性の問題かもしれません。今回、皆様から様々な意見をいただき、私の考えは軽率なものだったのかもしれないと反省しています。あまり良い内容の記事ではありませんでした。しかし、お時間を割いていただいてコメントをくださったことは、大変ありがたく思います。本当にありがとうございました。
Commented by tempus fugit at 2018-08-19 21:14 x
「シミュレーション」ではなく「シュミレーション」がよく使われている理由について、後者の方が日本語として発話しやすいからだとする音声学の専門家の説を読んだことがあります。

私も simulation を知っているのに日本語だと「シュミ~」と言っている自分に気づいて「あれっ」と思ったことがあり、なるほどと感心しました(肝心の説明内容は忘れてしまいましたが・・・)。

以前読んだ英語史の本に、母語話者にとっても発音しにくかったと思われる英単語が時代を経てより発音しやすい現行の形に変わったという例が挙げられていましたが、こうした現象はある程度どの言語にも共通しているのかもしれませんね。そういえば February を「フェビュアリー」、nuclear を「ニューキュラー」のように発音する英語ネイティブがいますね。いつの日か、こちらが標準発音になるのでしょうか?

和製外国語の話に戻りますと、「チャレンジ」を challenge と英訳したのでは意味をなさない場合があるのはよく知られていますが、最近、「~という考え方にチャレンジして・・・」と言っている人がいて(日本人です)、「英語みたいな使い方をする人だな」と面白く思いました。

その人に尋ねたわけではないので理由はわかりませんが、テニスなどのスポーツで、判定に対する異議申し立てを「チャレンジ」と言いますよね。もしかしたらその影響で、英語と同じような意味でも使われるようになってきているのだろうか、と考えたりもしました。

ついでに、「ナウい」(さらにさかのぼれば「ナウな」)は確かに死語になりましたが、いまSNSで盛んに使われている「○○なう」を見ると、別の意味で復活したのかな、とも思います。

以上、皆様のコメントを拝読して連想した長話になりましたが、英語にせよ日本語にせよ、私にとって言葉は(耳障り、目障りなものも含めて)本当に面白いことばかりです。
Commented by ladysatin at 2018-08-20 14:41
tempus fugit さん
「シュミレーションの方が日本語として発話しやすいから」というのは大変納得できます。これは「スマホ」にも当てはまりますね。smartphone ですから「スマフォ」の方が英語に近いと思いますが、「スマフォ」は発音しにくいです。また vitamin, vivid のように v が入る言葉はすべて「バビブベボ」になります。日本人だけに限らないのかもしれませんが、外国語を取り入れるときは、自分たちに都合のよいようにアレンジしてしまうのかもしれませんね。
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by ladysatin | 2018-07-22 22:57 | 語法_English Usage | Comments(25)