Oh England My Lionheart – Kate Bush 訳詞考察

今日は Lionheart の考察をします。
Kate Bush のファンの方が検索してここにたどりついてくださることを期待して。(^^)

前回の Lionheart の和訳の記事から是非お読みください。
→ 訳詞の世界~Oh England My Lionheart – Kate Bush(和訳)

さて、この曲の舞台はタイトルにもある通り、イングランドです。

今さらだけど。。。イングランドとイギリスの違いを簡単にまとめておきます。

イギリスの正式名称は、「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」ですね。そして、その連合王国は、「イングランド England、ウェールズWales、スコットランド Scotland、北アイルランド Northern Ireland」の四つの国の集合体です。単に 「連合王国 United Kingdom UK」とも呼ばれています。

なんかややこしいですが、Kate Bush は、イギリスの中のイングランドに特化して曲を作ったということでしょう。実際、詞の中に出てくる London Bridge, Kensington Park, Thames などはロンドンにありますものね。

前回の記事で私は、Lionheart の詞は、第二次世界大戦で命を落としていく兵士の視点から綴られていると書きました。何度も読んでみたのですが、登場人物は一人だけのような感じがしています。無事で帰れなかった兵士の無念さと祖国イングランドへの愛がいっぱい詰まっているようです。

考察していく中で、ひとつ特徴的なことを見つけました。
詞の中に「死」に言及する内容がいくつかあるんです。
具体的には「die 死ぬ」の代わりに、違う単語を Kate は使っています。
それも3つ。。。


その単語とは何でしょうか。
今回も謎解きを楽しんでね。

ではいきましょう。

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Oh, England, my Lionheart
I'm in your garden, fading fast in your arms

ああイングランド
私のライオンハート
あなたの庭で
あなたの腕に抱かれ
私は固くなり息絶える
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★Oh, England, my Lionheart
ここは England と my Lionheart が同格になっています。
つまり、イングランド=勇猛な心です。

★I'm in your garden, fading fast in your arms
ここでの fading fast は分詞構文になっていて、I’m in your garden からつながっています。
fading の主語は「I = 私」です。

実は die の代わりに使ってある単語の一つ目が fade です。

fade には、文語体で「死ぬ」という意味があります。まさにその通りの内容だと思います。そして fast はこの場合は「速く」はそぐわない感じがします。辞書を引くと、fast にも文語体で「固く hard」の意味がありました。

fading fast = 私は固くなり息絶える
素直につながるように思いますがどうかな。

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The soldiers soften, the war is over
The air raid shelters are blooming clover
Flapping umbrellas fill the lanes
My London Bridge in rain again

兵士たちは和らぐ
戦争は終わったのだ
防空壕にはクローバーが茂り
傘の花が路地を埋める
再び雨にけむる私のロンドン橋
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★The soldiers soften, the war is over
やっと戦争が終わり、緊張感から解放された兵士の様子が読み取れます。

★Flapping umbrellas fill the lanes
flap は「パタパタと揺れる、はためく」という意味があります。
人が歩くたびに傘が揺れている風景を思い浮かべます。
そして、lanes は路地。street よりもっと小さい通りです。
単語の選び方ひとつにしても、Kate の感性の豊かさを感じます。

★My London Bridge in rain again
ロンドンは雨が多いと聞きます。
いつもの光景 - また今日もロンドン橋に雨が降っている。

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Oh, England, my Lionheart
Peter Pan steals the kids in Kensington Park
You read me Shakespeare on the rolling Thames
That old river poet that never, ever ends

ああイングランド
私のライオンハート
ケンジントン公園でピーターパンが子供たちをさらう
渦巻くテムズ川でシェークスピアを読んでくれた君よ
あの古い川辺の詩人に決して死は訪れない
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★Peter Pan steals the kids in Kensington Park

ピーターパンはイギリス・スコットランドの作家 James Matthew Barrie による戯曲・小説の主人公ですね。私は、ロンドンに行ったことはないのでネットで調べただけですが、ケンジントン公園にはピーターパンの像があると知りました。

ところでなぜ、ピーターパンはケンジントン公園で子供達をさらうのでしょう?

ためしに、Peter Pan kidnapper で検索するとたくさんのサイトがヒットします。海外のサイトでは、ピーターパンのことはあまりよく書かれていないようです。ピーターパンは愛すべき子供なんかではなく悪党だと書かれている記事が結構ありました。あるサイトでは、原作では、ピーターだけが不死として描かれていて、永遠に不死を享受できるように、それと引き換えに思春期の人間の子を誘拐して殺したのだと書かれてありました。

私はピーターパンについては詳しくないので、正直なところよくわかりませんが、ピーターパンが子供をさらうということは周知の事実だったようです。知らなかった私はもしかして小数派?

考えてみると、ピーターパンがもつ「immortality 不死」は、兵士の死とは対極位置にあるんですね。
Kate が示唆したのはこのことだったのではないかと思いました。

★You read me Shakespeare on the rolling Thames
rolling Thames...テムズ川についても渦を巻くのが特徴だと今頃知りました。(恥)

★That old river poet that never, ever ends
That old river poet はその前の Shakespeare を指しています。

ここで出てきました。
die の代わりに使ってある単語の二つ目・・・ end

主語は「poet 詩人」ですから、ends の意味は「終わる」ではなく「死ぬ」にならないと意味が通りません。
end の古英語の用法です。Shakespeare の魂は死ぬことはないと言っているのではと思いました。

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Our thumping hearts hold the ravens in
And keep the tower from tumbling

音を立てるほどの私たちの心臓の鼓動は
ワタリガラスを制し
塔を崩壊から守るのだ
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ravens はワタリガラス、tower はロンドン塔のことです。

Wikipediaにそのものズバリの解説がありましたので引用します。
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ロンドン塔には、世界最大級の大きさであるワタリガラス(Raven)が一定数飼育されている。ワタリガラスは大型で雑食の鳥で、1666年に発生したロンドン大火で出た大量の焼死者の腐肉を餌に大いに増えたともいわれている(しかし、実際に記録されているロンドン大火で死者は5名だけである)。当然、ロンドン塔にも多数住み着いたが、チャールズ2世が駆除を考えていた所、占い師に「カラスがいなくなるとロンドン塔が崩れ、ロンドン塔を失った英国が滅びる」と予言され、それ以来、ロンドン塔では、一定数のワタリガラスを飼育する風習が始まったとされる。(引用ここまで)
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hold the ravens in の hold in は成句です。
hold in - <動物>を制する (ジーニアスより)

ravens はまさに動物です。こんな使い方があったんですね。

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Oh, England, my Lionheart
I don't want to go

ああイングランド
私のライオンハート
私は逝きたくない
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die の代わりに使ってある単語の三つ目・・・ go

fade, end, go ...この歌の中には「die 死ぬ」の婉曲表現にあたる単語が3つも使われていたんですね。

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Oh, England, my Lionheart
Dropped from my black Spitfire to my funeral barge

ああイングランド
私のライオンハート
黒のスピットファイアから
私は葬儀のはしけに落とされた
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ここででてくる Spitfire は第二次世界大戦で使われたイギリス製の戦闘機です。

funeral barge は「葬儀のはしけ」と直訳しましたが、調べてみると funeral barge について、以下のような記載がありました。

●A funeral barge is a boat that ancient Egyptians used to send dead bodies down the river.
「葬儀のはしけ」は古代のエジプト人が死体を川から運ぶのに使ったボートのことである。


このフレーズ funeral barge を Kate がいれたのは、きっとエジプトへの造詣が深かったからでしょう。
実際、Kate の歌の中に Egypt という曲があります。
その中で彼女は、I’m in love with Egypt と歌っています。

ちなみに funeral barge を画像検索したらたくさんでてきました。
こんな感じです。

f0307478_17344523.jpg









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Give me one kiss in apple-blossom
Give me one wish, and I'd be wassailing
In the orchard, my English rose
Or with my shepherd, who'll bring me home

りんごの花咲く中でキスをひとつくれないか
願いごとをひとつかなえてくれないか
そしたら乾杯しよう
果樹園で。。。
イングリッシュローズとともに
あるいは私を家へと導く羊飼いとともに
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★Give me one wish, and I'd be wassailing
wassail という単語は知りませんでした。古英語で「乾杯する」という意味です。

★Or with my shepherd, who'll bring me home
ここでの home は「家」としましたが、「祖国」の方がよいかもしれません。
shepherd はイエス・キリストのことでしょう。
Kotobank には、イエス・キリストの象徴的な呼称として「善き羊飼い Good Shepherd」が載っています。

以上で lionheart の考察は終わりです。

この曲を Kate Bush が書いたのは、二十歳の頃だったんです。
何という感性をもった人なんだろうと、今さらながらに思います。

お読みくださった皆様
ありがとうございました。

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Commented at 2015-06-11 21:06 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ladysatin at 2015-06-11 22:16
Thank you. (^_^;)
Commented by at 2018-08-19 03:36 x
a natural womanの考察からたどり着き、懐かしく読ませていただきました。ケイトブッシュは中学生の頃に従兄弟の影響でよく聴いてました。レコードをかけてただただよく歌いました。
Commented by ladysatin at 2018-08-19 15:25
あ さん
コメントをありがとうございます。
私も Kate Bush は大好きで、デビュー作からずっと聴いています。
彼女が作り出すメロディは独創的で美しく神秘的でした。
見た目も麗しかったので当時は憧れていました。
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by ladysatin | 2014-06-14 17:10 | Music & English_3 | Comments(4)