Desperado - The Eagles 訳詞考察(1回目)

Last updated on April 13, 2018

Desperado の記事は全部で3回のシリーズです。
是非、初回の訳詞から読んでくださいね。

こちらです。→ 訳詞の世界~Desperado – The Eagles(和訳)

そうそう、今気付いたのですが、Eagles には定冠詞の The が付くのが正式なんですね。
The Rolling Stones や The Beatles と同じです。

一方、Bon Jovi, KISS, Aerosmith などには The が付きません。

なぜでしょうか?

●これについて現代英語冠詞事典(大修館書店)にはこう書いてあります。
「文脈に依存しないで、「文化」あるいは「常識」」に基づいて、複数形に the が付けられる。」
その理由としては、「構成物(構成員)が同定可能であるため」ということです。

つまり、The Beatles の構成員は、Paul, John, George and Ringo の4人って決まってるから The が付くということなんですね。Bon Jovi は複数形ではないので The は付けるわけにはいきません。

前置きが長くなりました。

では Desperado の考察です。

皆さんはこの曲に描かれている Desperado ってどんな人だと思われましたか。
私はざっと詞を読んでみて、人生に絶望して自分の殻に閉じこもっている人のような印象を受けました。

ところが、言葉の意味を調べていくうちに考えが少し変わりました。

最初のところから見ていきましょう。
****************************
Desperado, why don’t you come to your senses?
You been out ridin’ fences for so long now

デスペラード
正気に戻ったらどうだい
一体いつまで自分の殻に閉じこもっているつもりなのかい
*****************************

★Desperado, why don’t you come to your senses?

●come to your senses (Cambridge Idioms Dictionary より)
 - to start to understand that you have been behaving in a stupid way
  「愚かな振る舞いをしてきたことを理解し始めること」

すごくわかりやすいですね。もうひとつ今度は英和から。

●come to one’s senses: 正気に戻る(研究社の新英和中辞典より)

さて次の表現は難解な箇所でした。
★You been out ridin’ fences for so long now

ここは文字通り訳せば「長い間、柵(フェンス)にのっている」となります。私はこの記事を書いた頃、「もうずいぶん長いこと空をながめては思案している」と訳していました。

というのも、ジーニアスでこんな表現があったからです。
●be on the fence, sit [stand] on the fence: (略式)日和見的な態度をとる

これを見て ride fences はこの変化形だと確信しました。それは以下の理由です。

「日和見」について広辞苑ではこう定義しています。
①天気模様を見ること
②事の成り行きをみて有利な方につこうと形勢をうかがうこと


ということは、デスペラードは、自分の利益になる方向に行こうと思いをめぐらしているんです。
どっちに行ったら自分にとって有利かと考えている計算高い人なのだということが読み取れます。

そして、広辞苑の①の意味の通り、デスペラードはお天気を見ていました。
最後のフレーズで、まさしく天気の話をしています。

★It may be rainin’, but there’s a rainbow above you
雨が降っているかもしれない
だけど君の頭上には虹が広がっている

このフレーズ It may be rainin' は適当に作ったわけではなくて、デスペラードが日和見ばかりしているからこそ、意味のある言葉として使われていると思っていたのです。

以上が当初の解釈でした。しかし、これは考え過ぎだろうと思うに至り、訳を「一体いつまで自分の殻に閉じこもっているつもりなのかい」に変えました。その理由は、先日、ある方からコメントをいただき、下記のフォーラムの詳しい記述に納得したからでした。

こちらに riding fences についてネィティブの方々が説明してくださっています。
上記のフォーラムでとてもわかりやすく解説している方がいました。その方のコメントを引用させていただきます。
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This phrase is much older than the Eagles song. The literal meaning describes a cowboy who has the job of riding the fence line around a ranch and making repairs. This job is usually done alone on horseback. When you consider that the early ranches in the Western USA could be 100's of square miles, that's a lot of fence to repair. It could takes weeks, or months, to do this job. Consequently, this phrase refers to someone who is riding and working alone for long periods of time. Such a person is isolated from civilization, and is truly a loner. I can recall seeing old cowboy movies about someone who was "out riding fences", and went crazy from the isolation. The Eagle's song refers to someone who has become isolated from the world because he won't let other people into his life, and he suffers from it. He's been "out riding fences" for too long.

試訳)
このフレーズは、イーグルスの曲より古くから存在しています。牧場周りのフェンス沿いを、通常は馬の背に乗って修理することを職業とするカウボーイについて述べている言葉です。アメリカ西部の初期の牧場は、100平方マイルに及ぶものもあったので、修理の箇所も多く、数週間、数か月かかることもありました。よって、このフレーズは、長期に渡り一人でフェンスを修理するカウボーイについて言及しているのです。彼は、文化的生活から孤立し、実に孤独な人です。昔のカウボーイの映画の中では、"out riding fences" し、孤独に耐えきれず気が狂ってしまった登場人物がいました。このイーグルスの歌に出てくる人は、他人を自分の生活に入れることができないがために孤立し、それが故に苦しんでいます。彼は "out riding fences" の状態があまりに長いのですね。
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とても納得しました。「一体いつまで自分の殻に閉じこもっているつもりなのかい」という訳にしたのは、ずっと孤独な状況を心配した友人の気持が込められていると思ったからです。

さて、もうひとつ。You been out ridin’ fences for so long now の out についても再考してみました。私は、この out は「外にいる」を表しているものと思っていましたが、「社会と離れて遠くにいる」という意味にとった方がよさそうです。

Collins COBUILD に以下の記載があります。
If you say that someone is out in a particular place, you mean that they are in a different place, usually one far away.

では次の箇所です。
***************************
Oh, you’re a hard one
I know that you got your reasons
These things that are pleasin’ you
Can hurt you somehow

全く気難しい奴だな
君なりの理由があるのは僕にもわかっているけど
君を喜ばせているそうした理由ってやつが
どういうわけか君を傷つけることだってあるんだよ
****************************

★Oh, you’re a hard one
ここの hard の意味なんですが、最初は「頑固な」という訳を考えましたが、最終的に「気難しい」に落ち着きました。

hard = difficult のこと

「頑固」と「気難しい」を広辞苑で調べてみました。

●頑固 – かたくなで意地っ張りなこと。人の言うことや情勢の変化などを無視して、それまでの考えや態度を守ろうとすること。
●気難しい - 自分の考えや感情にこだわり、たやすく人に同調しない。神経質である。

この詞全体を通して受ける印象は、彼の心の繊細さです。本当は心を開いて相手を受け入れたいのにそれができない。また臆病さも感じます。そう考えたときに、Desperado は頭から他人の意見に耳を貸さない頑固者とは少し違うような気がします。気難しい人はなかなか考えを変えないけれども、聞く耳はもっていて、ポンと背中を押してあげたら心を開くいてくれるかもしれない。そういうところに思いを馳せて「気難しい」としてみました。

***************************
Don’t you draw the queen of diamonds, boy
She’ll beat you if she’s able
You know the queen of hearts is always your best bet

なあ、ダイヤのクイーンは絶対引くなよ
そいつに力があれば君をひっぱたくだろうね
いつだってハートのクイーンが確実なんだって知ってるだろう?
****************************

ここではダイヤとハートが出てきました。
ダイヤのクイーンではなくてハートのクイーン選べと言っていますね。

思い出したのですが、Sting の Shape of My Heart の中にもダイヤとハートがでてきます。
以前の記事に少し書いています。→ Shape of My Heart – Sting 訳詞考察(2回目)

ダイヤ  ・・・貨幣 → 商業
ハート  ・・・聖杯 → 聖職者


★She’ll beat you if she’s able
そいつに力があれば君をひっぱたくだろうね

この訳はまさに直訳です。
She はダイヤのクイーンなのですが、トランプの中から出てきて彼をひっぱたくなんてできません。
だからここは仮定法過去 if she was able になっていると私は解釈しました。
「もし彼女が実在してひっぱたくことができるとすれば」という感じになるかと思います。
そして、主節が would でなく will なのは「その場合は必ずひっぱたくはず」という強い推量の表れだと思います。

★You know the queen of hearts is always your best bet

●ここでの bet の意味(ジーニアスより)
 - [形容詞と共に]行動の仕方、取るべき策;期待にこたえる人[物]
例)a good [one’s best, the best] bet - うまく行きそうな[最も確実な]方策

bet にこんな意味があるとは知りませんでした。

では前半の考察は以上です。
残りを次回やります。

また皆さん読みにきてくださいね。

Commented by KENKEN at 2014-10-02 09:46 x
古い記事にコメントするのは気が引けましたが、もともとこちらの記事から巡り合いましたので。私の中で、Desperadoはアルバム自体、特別な存在でした。高校生の時に聞き込みながら、多感な若者の気持ちがアメリカでも日本でも共通していることを感じ、涙がこぼれたものです。アルバムのブックレットに記載してある和訳は、どうしても納得できるものではなく、自分なりにも考察していたのでこちらにたどり着いたというわけです。ridin' fencesの部分、感激しました。西部の荒くれ者のイメージからsitを馬を駆るrideに置き換えたんですね。Desperadoは実在したDoolin Daltonギャングの栄枯盛衰をイーグルス自身に例えて作られたアルバムだと思います。1曲目から物語になっているのですが、すべての曲を聴き込むと、ridin' fencesのイメージが固まってくると思います。アルバムの最後の方は絶望感であふれてるんですよね。でも最後にmaybe tomorrowで終わるところが私は好きです。
Commented by ladysatin at 2014-10-02 22:02
KENKEN さん
こちらの記事を最初に読んでくださっていたのですね。
うれしいです。古い記事へのコメントも大歓迎です。
Desperado には特別な思いをもっておられるのですね。

> 西部の荒くれ者のイメージからsitを馬を駆るrideに置き換えた

なるほど。そういうことでしたか。
ここは全く気付きませんでした。ますます考えが深まりました。
アルバムの最後の方の絶望感については、私は深く考えたことはありませんでした。
このアルバムは Walkman に入れているので、明日の通勤時間にまた聴いてみます。
いろいろな知識を本当にありがとうございます♪
Commented at 2015-12-19 17:31 x
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Commented by ladysatin at 2015-12-19 21:47
川○○○さん
はじめまして。コメントをありがとうございます。
おそらくご本名だと思い、お名前は伏せさせていただきました。

Desperado の素敵な解釈をありがとうございました。
私も川○○○さんの解釈に賛同いたします。
Desperado はきっとあまのじゃく。そんな彼を優しく見守る友人。
心を開いてくれたらいいのに。
最後はきっと開いてくれるはずだと思わせるエンディングですね。

Thank you for your comment.
Commented at 2016-02-03 20:51 x
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Commented by ladysatin at 2016-02-04 02:04
長瀬さん
コメントをありがとうございます。

私もホテルカリフォルニアが大好きです。
何度聴いてもあきることがありません。

素晴らしい音楽に乾杯♪
Commented at 2016-05-19 10:37 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ladysatin at 2016-05-19 20:23
tatu5rou さん
コメントをありがとうございます。

そんなふうに言っていただくとうれしく、またこの記事を書いてよかったと思います。
Desperado は本当に多くの方に愛されている曲なのですね。

こちらこそありがとうございました。
Commented by at 2016-05-26 23:56 x
はじめまして。
You been out ridin' fencesのoutが気になります。
今まで私は、柵を乗り越えようとしているのに乗り越えられずにいるということかと思っていたのですが、このoutは(日和見するために)戸外に出ている事を表しているだけなんでしょうか?

ダイヤのクイーンとハートのクイーンのくだりは、お金より愛が大事だろと言ってる感じがしますね。
「金づるの女よりお前を愛してくれる女を選べ」「金づる女には痛い目にあうぞ」という意味と解すると、
末尾のlet somebody love youと繋がりがいいように思います。
Commented by ladysatin at 2016-05-27 12:31
梨さん
初めまして。コメントをありがとうございます。

ダイヤとハートのクイーンのところは、おっしゃる通りだと思います。
お金より愛が大事ということですよね。

out の件ですが、私は深く考えず、外にいることを表しているだけだと思いました。
You have been out (あなたはずっと外にいる)主文
riding fences (柵にのって)分詞構文

「柵を乗り越えようとしているのに乗り越えられずにいる」という解釈をされたのはどのような理由ででしょうか。よろしかったらお聞かせいただけませんか。
Commented by まさ at 2016-11-17 15:57 x
素敵な訳詞ですね。歌詞を掘り下げようと読み解く貴重なブログだと思います!

さて、you've been out riding fencesですが、ちょっと飛躍してるかなぁと思ったのでコメントさせていただきます。ride fencesする=カウボーイがフェンスの周りを馬に乗って回って壊れたりしていないかチェックする、という事のようです。僕もここがわからなかったのでネイティブの友人に聞きました。

なので、「今の自分(の立場や状況を)を守ろうとしている」みたいな意味になるのではないかと思います。

そしてそれが最後の「ゲートを開けてフェンスからこっちにおいで」に繋がってくるんだと思います。

乱文失礼しました!
Commented by ladysatin at 2016-11-17 21:36
まささん
コメントをありがとうございます。

You’ve been out ridin’ fences のところは色んな解釈があるようです。おっしゃるように、「カウボーイがフェンスの周りを馬に乗って回って壊れたりしていないかチェックする」という説も、何かで読んだことがあります。このあたりの解釈は難しいですが、どなたの意見もとても参考になります。ここでは、私の解釈を書かかせていただきました。自分では飛躍しているとは思っていないのですが、そのように思われたのですね。

個人的にはネィティブの意見も、英語に精通された日本人の意見も同様に参考にさせていただいています。異なる意見もあっていいという考え方です。まささんのご意見もありがたく拝受いたしました。また何かお気づきの点がありましたら、お願いいたします。
Commented by Lain at 2017-01-10 18:16 x
素晴らしい訳をありがとうございました。
私も最近ワケあって、この曲の意味を掘り下げようとしていた居り、
案の定"You’ve been out ridin’ fences "の部分で躓いており、この記事にたどり着きました。
ちなみに、私はまささんが解釈されるように、この部分は「保身」と意訳しました。

理由は、曲の後半部で「”寒い”という感覚はあっても、雪も降らない、キラキラした太陽もない、どうやってそのことを判断するんだい?」とありますので、これは「室内」を意味すると解釈し、「だから、外にでてこいよ」と諭す様子なのかなと思っております。

ですので、曲冒頭のこの時点では「君」は空模様は見てないのでは、と解釈しております。

乱文、大変失礼いたしました。
Commented by ladysatin at 2017-01-10 19:20
Lain さん
コメントをありがとうございます。

「室内」を意味するという箇所は、You’ve been out ridin’ fences のところでしょうか。
そうだとすると、ここで使われている out はどういう意味になりますでしょうか。
You’ve been out の意味は「あなたはずっと外にいる」という解釈になると思ったのですが。
私の勉強不足かもしれませんので、ご教示いただけると幸いです。
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by ladysatin | 2014-05-06 20:46 | Music & English_2 | Comments(14)