2014年 03月 02日
英語の欠陥について
それはこんな文でした。2つほど例をあげてみます。
1. 基準位置から何番目のレコードを読み出すか指定します。
2. 読み取った連結QRコードを構成するコードのうち、何番目のコードであるかを示します。
何か堅苦しい日本語ですが、上記の2つに共通している「何番目の」という表現が今回のテーマです。
「何番目の」ってどう表現したらいいのでしょう?
これって。。。そう「序数」をたずねる文ですよね。
そのまえにちょっとおさらい。。。
英語の数詞には、基数(cardinal number)と、序数(ordinal number)というのがあります。
基数・・・ one, two, three など基礎となる数のこと
序数・・・ first, second, third など順序を表す数詞のこと
ということで「序数」をたずねる文を作りたいのです。
しかし、「序数をたずねる疑問詞ってありますか?」と言われたら何と答えましょうか。
たぶん誰も答えられない。。。なぜなら、英語には「序数をたずねる疑問詞がない」から。
まあ、なんてこと!
簡単な例をあげてみましょう。目の前に複数の鉛筆が並んでいます。
まず基数をたずねる疑問文から。
「鉛筆はいくつありますか?」
→ How many pencils are there?
簡単でしたね。では序数をたずねる疑問文にいきます。
「何番目の鉛筆を使いますか?」
???????? うっ、英語で書けません。。。
What number ...? なんて言えないし。。。
これが「どの鉛筆を使いますか?」だったら簡単なんです。
Which pencil do you use? でいいですよね。
このように「序数をたずねる疑問詞がない」という事実は、英語という言語の大きな欠陥を表していると言わざるをえません。日本語では問題ないのにね。
「安倍首相は、何代目の内閣総理大臣ですか?」って英文書けと言われても困っちゃう。
答えは He is the 96th prime minister.(96代目です。)と簡単なのに、96th を得るための質問が作れません。
ではどう表現するのかというと、こんな感じになります。
●How many prime ministers preceded Abe?
●How many prime ministers were there before Abe?
「安倍首相の前に何人の首相がいましたか?」という質問だから「95人」と答えますよね。そこから安倍首相は、96代目だと考えるんです。
●What number prime minister is Abe?
「安倍首相は何番の首相ですか?」ってこれも可能だけど、苦しい。。。
何番目じゃなくて何番ってきいてますから、序数でなく基数の質問になっちゃう。
●Which prime minister is Abe?
「どの首相が安倍首相ですか?」 ああ~どんどん遠ざかっていきます。
とにかく序数をたずねる文を作るのは不可能なので、あれやこれや表現を考えねばならないということなんです。
元に戻って私が悩んだ文ですが、あれやこれや悩んで、以下のように訳しました。
1. 基準位置から何番目のレコードを読み出すか指定します。
This specifies what number record from the reference position is read.
2. 読み取った連結QRコードを構成するコードのうち、何番目のコードであるかを示します。
This shows the code position (number) among the codes constituting the read concatenated QR code.
2つとも苦しいですね。(汗)
特に2つ目なんか、カッコ書きまでしています。(泣)
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そうそう。序数といえば、過去の報道でおもしろいものがあったんです。
これも首相がからんでくるのですが、皆さんは安倍首相の前の首相は誰だったか覚えていますか?
忘れた方は思い出してね。野田さんです。
2011年に野田氏が首相になったときの報道記事をコピーしてとっていたので引用します。
「何人目の首相?知りません」=野田新代表選出で米報道官 (時事通信)
「知らないわ。何人目の首相になるの?」。米国務省で29日に行われたヌーランド報道官(女性)の定例記者会見で、民主党の新代表に選ばれた野田氏はこの数年間で何人目の日本の首相になるのか質問され、報道官が苦笑混じりにこう問い返す一幕があった。ヌーランド氏は、野田氏の新代表選出のコメントを求められ「日本政府や次期首相と幅広い課題について緊密な連携を続けていくことを期待している」と回答。これに対し、米国の記者が「それは(近年)何人目の首相だ」と突っ込みを入れた。日本で毎年政権交代が繰り返される事態に、米国では「回転木馬のような政治」などと否定的な論調が多い。(引用ここまで)
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「それは(近年)何人目の首相だ」
「知らないわ。何人目の首相になるの?」
ネィティブのインテリはどうこれを表現したのか興味津々でした。早速調べて、米国国務省のプレスリリースの記事にたどりつきました。
その該当箇所です。
記者:How many prime ministers would that be?
報道官:I don’t know. How many prime ministers would that be?
「何人目の首相ですか?」 ⇒ How many prime ministers would that be?
なるほどぉぉ。。。と言うしかないでしょうか。今までに見たことがない表現です。
おもしろいので現在形の文をまず書いてみましょう。
●How many prime ministers are there?
これは How many apples are there? と同じですから「首相は何人いるか?」と存在している数をきいています。
これを仮定法の婉曲で表現すると
●How many prime ministers would there be?
となり、「何人の首相が存在することになるだろうか?」という意味になるでしょう。
そこで今回出てきた表現は there の代わりにthatを使っている点に注目です。
●How many prime ministers would that be?
that は there のように存在を表しません。指示代名詞なので何かを指しています。おそらくこの場合の that は「状態」を表しているのだろうと思います。that は具体的な物に限らず既知の状態を指すことができます。
つまり「(野田氏が首相になったという)その状態」= that と考えることができるでしょう。
最終的に考えられる訳は「(野田氏が首相になって)そうなると、これで何人の首相ということになりますかね?」になり、おそらくこれがネィティブにとっては感覚的に序数を表しているのではないか、と思った次第です。
ところでこれに対して、記者は何と答えたのか。。。
記者:It seems - better keep that in the book. (Laughter)
「本にしまっておいた方がいいですね。」(笑)
がっかり。
言ってほしかったなあと思うけど、もし答えていたとしたら、95th(序数) ではなく、95(基数)で答えているはずです。
もうひとつおまけですが、How many prime ministers would that be? で will ではなく would を使っています。would ですから仮定法ですよね。
「首相の数を数えたら(ここで仮定の意味が出る)、その数(=that)は何人?」と言ってるんじゃないかな。そして、ネィティブの知人にきいたところ、この would には皮肉が入っているとのことでした。普通にきくなら will でいいはず。日本では首相がころころ変わるので、ちょっとイヤミ?を込めたんですね、きっと。
最近は、序数を表す疑問詞として How manieth なるものがあるとかきいたことがあります。斎藤和英大辞典に載っているとか。私の勉強不足でこの本の著者を知りませんでした。おもしろい表現だとは思ったのですが、実際に使われている文献を見たことがありません。。。
ということで、「序数を表す疑問詞がなくて困っちゃたよ~」というお話でした。
読んでくださったみなさん、ありがとうございます!


I'm the N th prime minister. のNを聞きたいわけですから、
What th prime minister are you?なんてどうでしょう?
この表現が広がることを祈って。

What numberth prime minister are you?
はどうでしょうか?!
コメントをありがとうございます。
この記事への最初のコメント、とってもうれしいです。
What th prime minister are you?
What numberth prime minister are you?
両方ともいいと思います。本当に序数をたずねる質問には難儀していますから。
下の numberth を使った文の方が発音しやすそうでいいですね。
この表現、真面目に広がるといいなと思います。
ありがとうございます。