2013年 12月 12日
Sure Know Something – KISS 訳詞考察(1回目)
現在・過去・現在完了のサンドイッチ構造を読み解いていきましょう。
初めて読む方はここからスタート
→ 訳詞の世界~Sure Know Something – KISS(和訳)
Sure Know Something は、1979年の KISS のアルバム Dynasty に入っています。Paul Stanley とプロデューサーの Vini Ponica の共作です。たぶん Paul の個人的な経験をもとに書かれているのではないかしらと想像しています。個人的にはこの曲のメロディラインが抜群だと思っていて、Paul でないと作れない曲だと思っています。
本当に Paulって歌心があるのね。(゚・゚*
さて、前回、この曲には複数の時制が入っていると書きました。
「現在形・過去形・現在完了の継続」この3つなのですが、これらの時制をしっかり感じながら読んでいくと、話のストーリーがつかめますのでやってみましょう。
まず、詞の中に I was seventeen という箇所があります。
そしてこの曲が出た1979年、Paul は27歳だったのです。
となると、こう考えるとわかりやすいでしょう。
過去形のところ・・・17歳の僕
現在形のところ・・・27歳の僕
現在完了の継続のところ・・・17歳から27歳の今にいたるまでの僕
では最初のところからいきます。
現在形のところは黒、過去形のところはピンク、現在完了の継続のところは青にしています。
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①I've been up and down, I've been all around
②I was mystified, almost terrified
③But late at night I still hear you call my name
①浮き沈みもあったけれど、これまで僕には出来ないことなどなかった
②かつて僕が感じた当惑、それは恐れに近いものだった
③だけど、今でも夜遅くに聞こえるんだ。。。僕の名を呼ぶ君の声が
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①は現在完了の継続ですから、27歳の今に至るまでの僕です。
up and down ・・・文字通り「良かったり悪かったりで、浮き沈みが激しい」ということ
all around ・・・「幅広い才能を持った、万能の」
日本語のオールラウンドプレーヤーはここからきています。
「いろいろあったけれど、大人になった今では立派にやっているよ」ということが述べられています。
②17歳の僕を回顧しています。
大人になるということへの不可解さと恐れの気持ちがあったのです。
この箇所は①と③のストーリーの流れをさえぎるかのように挿入されています。
次の③を見るとわかります。
③27歳になった現在の僕です。
この部分は But で始まっています。「しかしながら、今でも君の声が聞こえる」につなぐためには②ではなく、①を受けなくてはなりません。
つまり、「①今では何でもできる人間になったけれど、③まだ君のことが心にひっかかっている」という話の流れになります。
この「現在完了継続→過去の回顧→現在の心境」という流れは、次の節でも全く同様に描かれています。
チェックしましょう。
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④I've been on my own, I've been all alone
⑤I was hypnotized, I felt paralyzed
⑥But late at night I still want you just the same
④自分だけの力でやってきたし、ずっと自分だけが頼りだった
⑤僕は君に魅了されて、麻痺したかのようだった
⑥だけど、夜になると今でも君を求めてしまうんだ。。。 あの頃と全く変わらずに
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④現在完了の継続です。
on my own, all aloneで主張されているのは、「僕が自立した人間」であるということです。
⑤過去の回顧です。
この過去の記述のところでは効果的に韻が踏まれています。
②の mystified, terrified そして⑤の hypnotized, paralyzed はすべて受け身になっていて、fied, zed のところが韻を踏んでいます。
⑥現在の僕です。
ここもやはり⑤でなく④を受けていますね。
自立した人間である僕が、「just the same いまだに変わらず」君を追い求めてしまうということ。
★今までのところの読み取りで大切なところは、過去形の②と⑤が真ん中にサンドイッチ状態になっているというところですね。
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I've been a gambler, but I'm nobody's fool
And I sure know something, sure know something
You showed me things they never taught me in school
And I sure know something, sure know something
No one can make me feel the way that you do
And I sure know something
ずっと危険を顧みない人生を送ってきたけど、僕は簡単には騙されやしない
僕にはわかっていることがあるんだ
学校で教えてくれないことを君は教えてくれたね
僕にはわかっているんだ
誰も君のようには僕を感じさせることはできない
僕にはわかっているよ
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★gambler
まず冒頭のgamblerなんですが、そのものズバリの「賭博師」は合わないですよね。これは比ゆ的に使われていて、「危険を恐れない人、冒険家(risk-taker)」(ジーニアスより)の意味だと思います。
★nobody’s fool
おもしろい表現だと思います。直訳すると「誰かの愚か者ではない」ということで、そこから転じて「だましにくい人、抜け目のない人、一筋縄ではいかない人」の意味。
同じタイトルの映画がありましたっけ。
曲の最初からこの辺りまで読んでいくと、この主人公の僕は、とっても負けず嫌いなんだなとわかりますね。
And I sure know something のところ。。。
ここは訳詞なので「僕にはわかっていることがある」とか「何かを知っている」でいいのですが、somethingって何のことかしらって思いますよねえ。。。ここは難解なので最後にやります。
★You showed me things they never taught me in school
そっか~。彼女は学校で教えてくれないことを教えてくれたんですね。
ポッ(。~ー~)(~ー~。)ポッ
だからいまだに忘れられないわけです。
あとで You were just a dream とありますから、とってもきれいな年上の女性だったんでしょう。
そういえば以前、Paulがインタビューで「早く16歳になりたかった。女の子と遊べるし。」って言ってたわ。「女の子と遊べるし。」のところはもっと直接的な表現やったけど。(▼-▼*)
次は大切な構文です。
★No one can make me feel the way that you do
この文の「the way は何ですか?」と聞かれて即答できる人はすごいと思います。
辞書の分類では名詞です。だけどただの名詞ではなくて、接続詞的に使われています。
ジーニアスに完璧な説明があったので引用します。
wayの用法から抜粋
[(in) the way, in a way (that)];接続詞的に] ...のように(as)
She sang the way I did.
彼女は私の歌うとおりに歌った。
(引用ここまで)
昔、ビリージョエルの「素顔のままで」の中にこのフレーズがありました。
I love you just the way you are.
この the way は、接続詞的用法の中の一つで形容詞節を導いています。
ジーニアスにも同じ構造の例文がありました。
I like you the way you are.
今のそのままのあなたが好きだ。
the way の前に in を入れて考えるとわかりやすいですね。
No one can make me feel (in) the way that you do
「誰も君がおこなうようなやり方で、僕を感じさせることはできない。」となります。
こんな文を非常にマジメに解説している私ってかわいい奴でしょ?"(/*^^*)/ハズカシ
大学入試を控えている人々には超重要な文法項目ですから押さえておかないと。
ここ、関係副詞と混同されやすいので注意してくださいね。
もう一度見てみましょう。
No one can make me feel the way that you do
実は、最初私はこの文の the way を見て関係副詞だと思いました。
how の代わりに用いられてるのだと。
関係副詞の how は先行詞の the way を含み名詞節を導きます。
これもジーニアスからです
howの用法から抜粋
[関係副詞(無強勢で);先行詞を含んで]
(...する)方法、(...である)と言うことの次第[様子、ありさま]
名詞節を導く
This is how he smiled at me.
この how は the way (that) または the way in which で言い換えられる(the way how はまれ)
しかし、問題の文を名詞節ととらえると意味が変わってきちゃう。
「誰も君がおこなうやり方を私に感じさせることはできない」となり、feel は他動詞として the way 以下を直接目的語ととらえた解釈になります。
ここはそうではなく、feel は自動詞なのです。
ううっ、ややこしいですなあ。
まだ書き足らないけど、あとは次回に回します。
ここまで読んでくださった方に感謝。
2回目に続きます~。