The Load-Out / Stay - Jackson Browne 訳詞考察

思い出しましたが Jackson Browne はイーグルスの Take It Easy を作った人です。Glenn Frey との共作だったかしら。あの曲はとても有名ですね。

さて今日は The Load-Out / Stay の考察をしたいと思います。
文法・語法の観点から大切な表現だと思うところだけピックアップしていきます。

訳詞を読まれていない方はこちらからどうぞ。
訳詞の世界~The Load-Out / Stay - Jackson Browne

では最初のところ。
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Now the seats are all empty
Let the roadies take the stage
Pack it up and tear it down
They're the first to come and the last to leave
Working for that minimum wage
They'll set it up in another town

客席は全部空っぽになったね
あとはローディーにまかせよう
ステージを片付けて解体する
一番最初にやってきて一番最後に出る人たち
最低賃金を得るために働いている
彼らはまた別の町でステージをセットしてくれるんだ
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ここは、ローディーのことをうたっています。

★Pack it up and tear it down
この it はその前の stage を受けています。

イディオムとして覚えておくといいですね。
英辞郎より抜粋
pack up --- (送るために物を)荷造りする、梱包する、片付ける
tear down --- (建物などを)取り壊す、解体する


★Working for that minimum wage
この箇所は「最低賃金で働いている」とすると誤訳とまではいきませんが正確な訳ではないです。
大学入試だったら減点されますね。
ここでの for は「...を求めて、得ようと」という意味ですから「最低賃金を得るために」となります。

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Now roll them cases out and lift them amps
Haul them trusses down and get'em up them ramps
'Cause when it comes to moving me
You know you guys are the champs

今からケースを転がして、アンプを乗せて運ぶ
トラスを引っ張り下ろして、傾斜台に乗せる
だって僕のステージを移動させるとなると
君たちは最高の仕事をしてくれるからね
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ここもローディーの描写です。
あれっと思ったのは、上に赤でハイライトしている them の使い方。
おかしいよね。間違いでしょ?。。。と思って調べてみたら、この them は those のことでした。
非標準の言い方なのです。

ジーニアスより
them...(非標準)[名詞の前で]それらの(those の代用)

ということは、正規の文法にのっとるとこうなります。
Now roll those cases out and lift those amps
Haul those trusses down and get'em up those ramps

さてここは力をいれて解説します。040.gif

★Haul them trusses down
ここの表現なんですが、「トラス truss を引っ張って下ろす」って何のことだろうと思って調べました。そしたら、トラスというのは舞台の骨組みのことのようです。Googleでいっぱい写真がでてきたので貼り付けますね。

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う~ん。全く知りませんでした。舞台装置に詳しい方はよくご存知かもしれません。

★and get'em up them ramps
ここの訳なのですが ramp は傾斜台のことなんです。だから「(トラス)を傾斜台に乗せる」でいいと思います。傾斜台の写真も乗せておきますね。

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こんな感じで車にひっかけて荷物の上げ下ろしをするあの傾斜台のことだったんですね。





CD に入っていた訳は「照明のランプを外す」でした。これは誤訳なのですが、この訳をした翻訳者の方は ramp を lamp と解釈してしまったようです。また get'em up = get them up だから「外す」という訳になるわけがありません。ここばかりはプロであれば考えられない誤訳です。素人さんなら私も指摘などしませんが。。。

★'Cause when it comes to moving me, you know you guys are the champs

ここは「 when it comes to + 名詞(動名詞)」の構文ですから「~のことになると、~に関して言えば」という意味です。ということは「だって、僕を動かすとなると、君たちはチャンピオンだ。」となるのだけれど意味が通りません。いろいろ考えたあげく、ここで使われている me は「僕も含めた僕のステージ」と解釈できると思いました。その前の描写からもきれいにつながるし、なによりもステージとは彼そのものだからです。

ここの訳は「だって僕のステージを移動させるとなると、君たちは最高の仕事をしてくれるからね」としました。

★So just make sure you’ve got it all set to go before you come for my piano
「だから出発の準備が全部整ったか確認してきてね
僕のピアノを運びだす前に」

ここの you’ve got it all set to go のところは使役になっていますね。
高校で学ぶ「have + 物(=it) + 過去分詞(=set)」の形です。

口語表現の have got = have だから
= you have got it all set to go
= you have it all set to go
と考えるといいです。

all set to go はこのままのフレーズで覚えるといいです。
意味は「出発する[出掛ける]用意[準備がすっかりできている(英辞郎より)」
この all は副詞で「完全に、すっかり」の意です。

★We've got truckers on the CB
「CB無線からはトラックドライバーの声」

この CB はcitizen’s band のことで「市民バンド、CBラジオ、CB無線、市民無線」のことです

Wikiに載っていました。市民ラジオのページにこう書かれてありました。
元々はアメリカ合衆国で1960年代に登場し、アメリカにおいては5~10Wの出力が許されている。
1970年代に大型トラックの運転手を中心にブームとなった。


このアルバムが出たのは1977年ですから、ぴったりと時代が合うではありませんか。
なんか感激。ついでにリンクも張っておきます。
⇒ 市民ラジオ

★We've got Richard Pryor on the video「リチャード・プライヤのビデオもあるよ」

誰だろうと思って調べたら、リチャード・プライヤさんってアメリカのコメディアンの方らしいです。当時はとても人気のある方だったみたい。

こちらもWikiの記事にリンク張っておきます。
⇒ リチャード・プライヤー

★People you've got the power over what we do
「みんなが僕らのショーを動かす力をもっているんだ」

have the power over ...
...に対しての[...を支配する・...を思いのままに操る]力を持っている、...を支配する(英辞郎より)


★But we'll be scheduled to appear
A thousand miles away from here

「僕たちはここから1000マイル離れたところでショーがあるんだ」

ここでの appear は、「ステージ上に現れる]という意味なので「ショーがある」としました。

A thousand miles は「1000マイル」以外に訳しようがないのですが、ここもCDの訳は恐ろしいことになっていました。

CDに入っていた訳
「ぼくたちは何千マイルも離れた町へ行かなければならないんですから」

「何千マイル」は完全な誤訳です。「何千マイル」と言いたかったら thousands of miles としなくてはなりません。

さらに、1000マイルは1609.344 kmですから、ベテランのドライバーでも、1000マイルは一晩かけてやっとの距離でしょう。ネットで調べたら、北海道旭川市から熊本県八代市までの直線距離が1620 kmでほぼ1000マイルです。そう考えると2000マイル、3000マイルなんて距離を、バスで一晩で移動するなんて物理的にまず不可能です。

こういう数字の扱いは適当にしてはいけない。

実務翻訳の方にはわかっていただけると思いますが、スペックなどで数字の間違いをしたら致命傷になります。数字の間違いは翻訳者への信頼を著しく損ない、もう使ってもらえないかもしれません。

今回は二つの誤訳を指摘させていただきましたが、洋楽の訳詞はこの曲に限らず誤訳が多いです。この曲についてはCDの訳と書きましたが、私がこのアルバムを買ったのが CD になってからなので、元はLPに入っていた訳でした。

ということで Load Out – Stay の考察はこれで終わります。

ではまた。001.gif
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by ladysatin | 2013-12-03 21:43 | Music & English_2 | Comments(0)