Angel - Sarah McLachlan 訳詞考察(3回目)

今日は angel の考察の最終回です。

書きたいことがたくさんありすぎて長くなっちゃった。
ではいきま~す。(^^)

全訳はこちらにあります。読まれてない方はここからスタート。

訳詞の世界~Angel – Sarah McLachlan

続きです。

********************************
So tired of the straight line
And everywhere you turn
There's vultures and thieves at your back

まっすぐな道を歩くのにうんざりして
後ろを振り返ったと思ったら
どこを見ても他人を食い物にしたり
盗みをはたらく人ばかりね
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tired of は「疲れて」ではなくて「うんざりして」ですね。
学校で習ったと思いますが tired from が「疲れて」という意味です。
日本人がよく間違うミスだから気をつけて。
ちなみに tired of は fed up with で言い換えられますね。

straight lines は難しい。「まっすぐな道」としましたが、この場合の「まっすぐ」はもちろん精神的な意味です。straight には様々な意味がありますが、ランダムハウスにはこんな記載があります。

★straight
(精神的に)まっすぐな(upright)、正直な(honest)、りっぱな(honorable)
straight conduct まっすぐな行い
keep straight 正直にやっていく(暮らす)


それと line には「職業・商売(job)」という意味があるんです。
What line is he in? 「彼は何の職業についているのか。」

こうやって調べるとついつい深みにはまっていきます。。。
「ミュージシャンとしての職業を(悪いことに手をださずに)りっぱにやっていくことにうんざりして」と言っているのかもしれませんね。

vulture はハゲワシのことですが、「(弱いものを食い物にする)強欲な人、冷血なやつ(ジーニアスより)という意味で、しばしば比ゆ的に用いられます。

ここで、文法ミスをひとつ発見しました。
↓ ↓ ↓
There's vultures and thieves at your back

vultures and thieves は複数ですから、ここは There are であるべきですよね。
しかし、Angel の歌詞をいろんなところで見てみましたが There's すなわち There is でした。
サラの発音も There's です。
そしてわかったことは、会話で使われるとのこと。

Wiktionary 英語版から引用します。
ここ→ http://ejje.weblio.jp/content/There's

There's
Although grammatically incorrect, often used in place of "there are", almost universally in spoken English, even when "there is" would sound incorrect.
「文法的には正しくないがthere areのかわりに会話で用いられる。また there is が正しくない響きがする場合でも用いられる」

訳詞をしていると、こうやって新たな発見があるんです。何だか得した気分♪

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The storm keeps on twisting
You keep on building the lies
That you make up for all that you lack

嵐のような日々があなたにつきまとい
あなたは自分に欠けているものすべてを補いたくて
自分で作り上げた嘘を積み重ねていくの
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ここでの twist を私は「(何かの回りに)巻きつく、からまる、からみつく(ランダムハウスより)」の意味がよさそうと思い「あなたにつきまとい」と訳してみました。

そして、次のところは 1文に関係代名詞が2個 出てきます。
★You keep on building the lies that you make up for all that you lack

関係代名詞の目的格です。これを分解して3文にするとこうなりますね。
You keep on building the lies.
You make up the lies for all.
You lack all.

では、残りのパートで彼の語りをききましょう。

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It don't make no difference
Escaping one last time
It's easier to believe in this sweet madness
Oh, this glorious sadness
That brings me to my knees

状況は何も変わらないんだ
最後にもう一度だけと思って逃避してみると
この甘美な狂気、ああ、この美しき悲しみを
信じることのほうがたやすいことなのだとわかる
僕はそれにさからうことはできない
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★It don't make no difference
ここの don't も本来は doesn't になるべきですが、ロックやポップスの詞には三人称なのに don't をあえて使う場合が多いですね。ここで doesn't にしちゃうと字余りになっちゃいますものね~。

しかし、英語を学習する皆様は、私も含めてですが、こういう英文は書かないようにしてくださいね。ネィティブだから許せても、日本人がわざと文法を崩した文を書いたり話したりすると、ただ単に「教養がない」としか思われませんから。

★Escaping one last time
この one last time には注意した方がいいと思いました。
「最後には逃げる」ではなく「最後にもう一度だけ逃げる」という意味です。
「やめなければいけないことはわかっている。もう一度だけやってやめよう。」という彼の苦しい思いです。

英辞郎に使い方が載っています。
クリック→ one last time

one last time: 最後にもう一度(だけ)
We kissed one last time. : 最後にもう一度キスした。

「最後にもう一度だけ別れた彼に会いたい」というときも使えますよ。^^
I want to see him one last time.
ね。便利な表現だと思いませんか?

最後の3行はひとつの文です。
★It's easier to believe in this sweet madness, oh, this glorious sadness that brings me to my knees.

this sweet madness, oh, this glorious sadness
ここも 同格 になっています。
「甘美な狂気」すなわち「この美しき悲しみ」となります。
同格だから単数扱い。したがってこれを先行詞とする that 以下の関係代名詞節の動詞は brings と単数で受けていますね。

believe in にはいくつか意味があります。
ランダムハウスより引用
(1)...の存在を信じる
(2)...を信頼する
(3)...をよいと信じる、の価値を認める

この場合はもちろん(3)の意味です。
最後にもう一度だけと言っていたのに、彼は this sweet madness, oh, this glorious sadness をよいと信じてしまうことの方が簡単だと思ってしまいます。この時点で彼は負けたのです。

とどめは
that brings me to my knees
この that は sweet madness, oh, this glorious sadness を先行詞とする関係代名詞の主格です。

bring someone to one's knees - (人)をひざまずかせる、(人)を屈服させる(ランダムハウスより)

彼は完全に屈してしまったのです。。。とても悲しい詞です。

あとはサビのコーラスが続きます。

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さて、Angelの解説は以上です。

参考までに、以下のサイトではネィティブスピーカーの皆さんが、この曲についての感想を語っています。
↓ ↓ ↓
Songfacts - Angel by Sarah McLachlan

お時間のある方は読んでいただければと思いますが、美しい曲だという人がいる半面、この Angel とはヘロインのことで不吉な歌だと主張する人も少なからずいます。

しかし、私には「Angel = Guardian Angel 守護天使・守り神」のことだとしか思えません。サラ・マクラクランが書く歌ですもの。彼女の歌はどれをとっても美しい情感にあふれていると思います。本物のアーティストと呼ぶにふさわしい人です。

このシリーズをお読みくださった皆様
Thank you so much.
Commented by nno at 2014-08-16 00:31 x
本当に良い曲ですねぇ。
私にとってスッと納得できるわかりやすい解説,ありがとうございます。
Commented by ladysatin at 2014-08-16 14:52
nnoさん
初めまして。コメントをありがとうございます。
Angel はとっても良い曲ですよね。
長い解説を読んでくださり、そのように言っていただき大変うれしいです。
また遊びにいらしてください。(^^)
Commented by ufocohiba at 2017-02-20 17:19 x
sarah ゎ、お父さん と 距離を縮めようと電話で会話をした 時の 隔たり を話してくれて居るのだと 感じています ..
Commented by ladysatin at 2017-02-20 19:46
ufocohiba さん
そのように感じられたのですね。
コメントをありがとうございました。
Commented by コロリン at 2017-04-12 13:59 x
魂 霊 
素晴らしいメロディ
素晴らしい歌詞
素晴らしい訳
*^▽^)/★*☆♪Thanks!
Commented by ladysatin at 2017-04-12 22:57
コロリンさん

私の大好きな歌に共感してくださりとてもうれしいです。
こちらこそコメントをありがとうございました。(^^)
Commented by space at 2017-05-22 00:54 x
初めまして。Angelの訳詞をありがとうございます。こんな意味だったんですね。
この曲を聴きながら、1ページ目から読ませて頂いてると泣けてきました。
英語が分からないので、City of angel の映画に沿った内容だと勝手にずっと思いながら、ただ曲と声にひたっていました。
英語の歌詞をこのように何度も探りながら丁寧に訳して頂けると、本当にありがたいです。
サラ・マクラクランは時に無性に聴きたくなりますが、またプチはまりしています。
ありがとうございました。
Commented by ladysatin at 2017-05-22 13:36
space さん
初めまして。コメントをありがとうございます。この記事はブログを始めた年に書いたものですが、今読み返すと恥ずかしいくらいに力が入って書いているのがわかります。

サラ・マクラクランは素晴らしいアーティストですね。Angel は Surfacing というアルバムに入っていますが、ライブアルバムの Mirrorball のバージョンも好きです。私も space さんのように、サラの曲を無性に聴きたくなるときがあります。

サラの曲はもうひとつ I Will Remember You の訳詞もしています。
よろしかったら読んでくださるとうれしいです。
こちらになります。 → http://ladysatin.exblog.jp/21522716/

あたたかなコメントをありがとうございました。
とてもうれしかったです。
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by ladysatin | 2013-11-28 21:25 | Music & English_3 | Comments(8)