Shape of My Heart – Sting 訳詞考察(1回目)

今日は Shape of My Heart の謎ときをやっていきましょう。

最初の as a meditation の as は難解です。

初めてこのシリーズをご覧になるかたはこちらがスタートです。
私の全訳がありますので、よかったら読んでくださいね。
→ 訳詞の世界~Shape of My Heart – Sting(和訳)

では考察のスタート。

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He deals the cards as a meditation
And those he plays never suspect
He doesn't play for the money he wins
He don't play for respect

彼にとってカードを配ることは瞑想と同じことなんだ
勝ち金のためにやっているのではないし
尊敬を得るためでもない
だが対戦相手はそれを知るよしもない
***********************************

★He deals the cards as a meditation
deal はトランプのカードを「配る」のときに使う定番表現です。

さて、この文を難しいと考えるか簡単と考えるかが運命の分かれ道。
一見、簡単そうに見えますが、私にはこの文が難解このうえなかったのです。

「瞑想しながらカードを配る」とか「カードを配りながら瞑想する」という訳をよくみますが、おそらくこういう訳にはならないように思います。その根拠となる2つのポイントについて書きます。

●1つめは a meditation のとらえ方です。meditation には可算と不可算の用法がありますが、ここでは不定冠詞の a が使われていますから可算用法です。これが意味するところは「瞑想にはいくつかの方法があって、その中のひとつ」ということです。一般的な瞑想ととらえているのではないというところがポイントです。

●2つ目は as のとらえ方です。この as は言うまでもなく前置詞です。前置詞としての as の意味は非常に限定的です。「~としての、~の時・頃に、~のように」のような場合で使います。

「~しながら」という主節と同時進行をあらわす as は接続詞で使う必要があります。つまり He deals the cards as meditating/as he meditates であれば「瞑想しながらカードを配る」となります。

では as a meditation は何なのかということですが、不定冠詞の a がついていることを考えると「ひとつの瞑想として」という訳が一番落ち着くように思います。もう一つ考えたのが「瞑想するように」だったのですが、これだとわざわざ 不定冠詞の a をつける必要がないように思うのです。

いろいろ考えた結果、「瞑想としてカードを配る」にいきつき「彼にとってカードを配ることは瞑想と同じことなんだ」という訳をあてました。ただ、ここは文法・語法に詳しい方からの突っ込みがありそうな箇所でもあります。私の解釈は dealing the cards = a meditation という考え方なのですが、これではだめだろうという反論がどなたかからくるかもしれません。実はそれをひそかに期待しています。^^これを書き出すと長くなるので、ここはこれでおさめておきます。

★And those he plays never suspect
 He doesn't play for the money he wins
 He don't play for respect


まず、those he plays のところは plays の目的語が those つまり「人」ですからここでの play は「対戦する」になりますね。

この文もややこしいです。実はこういう文でした。
And those he plays never suspect that he does not play for the money he wins or he does not play for respect
見てわかるように that 以下は否定文になっていて、それを主節でさらに never で打ち消すという二重否定になっていますDouble Negative Sentence ですね。

直訳するとこうなります。
「彼が勝ち金のためにとか尊敬を得るためにプレイしているのではないとは対戦相手は思わない」
これではとてもわかりにくい訳です。

では、二重否定だから全肯定に解釈してよいかどうか考えてみます。全肯定だとこうなります。
「彼が勝ち金のためにとか尊敬を得るためにプレイしていると対戦相手は思う」
これはもちろんだめですね。二重否定はただちに全肯定とイコールで結ぶことはできません。やはり、二重否定は二重否定で訳さなくては意味が通らないようです。

私の訳はこうなりました。
「勝ち金のためにやっているのではないし、尊敬を得るためでもない。だが対戦相手はそれを知るよしもない。」
that 以下を先に訳し主節につなげました。頭の And は、この場合は逆接の「だが」を当てはめると、何とかうまくおさまりました。

ということで、最初のパラグラフは泣きそうなほど難しかったです。

では次のところ。

******************************
He deals the cards to find the answer
The sacred geometry of chance
The hidden law of a probable outcome
The numbers lead a dance

彼がカードを配るのは答えを見つけるためさ
運という名の神聖なる配列
起こりうる結果の裏にある隠れた法則
その数字に人は翻弄される
******************************

★The sacred geometry of chance

ここの chance も大切な箇所。
chance も可算名詞と不可算名詞で意味が変わります。
この chance は冠詞が何もありませんから不可算名詞ですね。

不可算の chance には「可能性・見込み」という意味がありますが、この chance はズバリ「運」です。
前回の私の記事に引用した Sting のインタビューの中に mystical logic in luck or chance とありました。「幸運」を意味する luck を まさしく chance で言い換えていますね。

geometry は辞書の意味の「幾何学」でもいいと思いますが、英辞郎をみたら「配列」という訳語が載っていて、これいいなと思っていただきました。そう、彼が探しているのは、整然とした法則なのですから。

The sacred geometry of chance の of 「同格」です。
the A of B = B という A

★The hidden law of a probable outcome

まさにここで書かれているのが「起こりうる結果の裏にある隠れた法則」
上からきれいにつながっています。

★The numbers lead a dance

ここの lead a dance は成句で「(人)に余計な面倒をかける、(人)を引きずりまわす」という意味。
このままではぎこちないのでちょっと私はちょびっと格好つけて「人は翻弄される」としてみました。

明日は後半部分を考察します。
また皆さん遊びに来てくださいね。
Commented by Shira at 2015-05-30 15:56 x
こんにちは。カフェでこの曲が流れてきて検索してこちらに参りました。
the money he wins
というのも the があり、現在形なので
「まあ、勝つのもいつものことで、だからお金がついてきて、ご存知のように今もそのお金があるけどね」
という背景が透けて見えるように思います。
Commented by ladysatin at 2015-05-31 15:47
Shira さん
コメントをありがとうございます。

the money he wins の箇所なのですが、ここで money に定冠詞の the がついているのは、関係代名詞節で後ろから限定されているからだろうと思い、それ以上は深く考えていませんでした。Shira さんのコメントを拝見し、なるほど、そういった背景が言葉の裏にあるんだろうと思いました。気付かせていただいてありがとうございました。
Commented by Shira at 2015-05-31 20:37 x
ladysatinさん、返信恐縮です。
言葉足らずに勝手につぶやいただけなので…。

この曲、少し寂しげというか、諦念のようなものも感じて妙に耳の奥に残りました。
Commented by ladysatin at 2015-05-31 21:47
Shira さん
とんでもないです。Shira さんのコメント、とってもうれしかったです。

Shape of My Heart は詞の内容も素晴らしいですが、メロディも抜群ですね。
この曲が好きな方はとても多いので、私のブログにも毎日多くの方が来られるんです。
読んでくださる皆さんに何かを感じていただければ、幸いに存じます。
Commented by かたな at 2015-07-02 14:05 x
こんにちは、ladyさん。

初めて書き込みをさせていただいてから、Shape of My Heartを繰り返し聴いています。ある疑問を抱きながら、すでに100回以上は聴いています。

Stingが歌うこのカードプレーヤーにとって、meditationとは"瞑想"なんでしょうか?

meditationには瞑想という訳があてられることが多いですが、この言葉は全く違う所で生まれ育ったあかの他人であって、英語とフランス語の間にしばしば存在する"語源は同じ"という言葉ではありません。

meditationにaがついている用法を調べました。This book is a meditation of the morality of art.このmeditationは瞑想ではありません。

meditationの意味として、私はserious thoughtがそれを最もよく表しているとの結論に至りました。

日本語で瞑想というと宗教ぽい感じがします。普通の日本人はあまり瞑想はしないと思います。が、英語国民は、日本人が瞑想をするよりは、もっと頻繁にmeditateしていると思います。meditateは、think something overですから、これは普通にあることです。

Shape of My Heartを聴きながら、自分なりにthe hidden lawを求めてカードを配ってみました。

瞑想していたら法則を求めてカードを配ることはできないと思いました。瞑想とは虚無の世界です。しかし、このカードプレーヤーの心は法則を探求しています。

a meditationとは、the product of meditationです。真剣に考えた結果、成果。法則を求めて彼が真剣に考えた結果=彼が配るカード。これなら納得できます。

彼は(法則を求めて)真剣に考え、そして、その結果(a meditation)が彼が配るカード、なら、

彼は自らの思いを乗せてカードを配る

ladyさん、いかがでしょうか?


Commented by ladysatin at 2015-07-02 22:31
かたなさん
今回も深いご指摘をありがとうございます。
かたなさんの分析はいつも鋭いので、つい「そうだったのか」と思ってしまいます。

He deals the cards as a meditation

私も meditation については気になっていました。
かたなさんがおっしゃっていること、今うまくまとめられませんが大体わかります。
deals...as ですから「a meditation として cards を配る」
つまり cards = a meditation ということですよね

「彼は自らの思いを乗せてカードを配る」
この訳も素晴らしいと思います。

私ももう少し考えてみますのでお時間ください。
核心に近づいてきました。
Commented by ladysatin at 2015-07-12 21:42
かたなさん
コメントをいただいてから、私もずっと考えていました。

なぜ meditation に a が付いているのかがポイントですね。
かたなさんが示してくださった例文:This book is a meditation of the morality of art.
こういった使われ方があるのですね。

>a meditationとは、the product of meditationです。
私も最終的に、ここに行き着きました。成果物という考え方に賛同します。
教えていただくまでは全く想像すらできませんでした。

かたなさんの訳「彼は自らの思いを乗せてカードを配る」が素晴らしいので、これ以上のものは思いつかないのですが、「彼はカードを配る – 答えを見つけるために」はどうかなと思ったりしました。
the product of meditation は、カードを配って初めて目の前に明らかになるという感じです。

かたなさん、いつも考える機会をいただき、本当にありがとうございます。
Commented by かたな at 2015-07-26 22:08 x
こんにちは、ladyさん。

Shape of My Heartを知ってはいたものの、ladyさんの解説がなければその歌詞の内容、表現についてここまで深く考える(まさにmeditate)することはありませんでした。

この英語を見て、ladyさんのような反応を示す感性がない私にはない、といいますか、私はmeditationの前のaについていちいち考えていたら、先に進めないと思うタイプなので。このaを見過ごさないladyさんの感度には敬服します。

私は、実はmeditationの前にもともとaはなかったのではないかと思い始めています。

真理を求めるこカードプレーヤーにとってのmeditationの前にはaがないほうがいいと思います。真理を求める行為は不可算であるはずです。

Stingは先にメロディーを作った。それから何となく考えていた言葉を乗せてみた。meditationは本来は不可算名詞。Stingが普通に英語を口にしたらmeditationだけが出てくる。が、asの後に一
呼吸ないと歌が間延びする。aを入れてみたらピッタリきたのでa meditationにした。

The reality is in the cards that he plays.

考えすぎですね。

ladyさんの文章を読みすぎてaの一つを見逃せないようになってしまいました。瞬時に反応しなければならない同時通訳者としては仕事がしにくくなりますが(笑)。
Commented by ladysatin at 2015-07-27 20:49
かたなさん
いつもありがとうございます。

meditation に a はもともとはなかったという発想に行き着かれたのですね。

またしても、かたなさんに一本とられちゃったという気がします。言われてみるまで考えたことはなかったのですが、その可能性は大いにあると思います。メロディに乗せるためには a がないと as で詰まってしまいます。Sting は案外何も考えずに a を入れたのかもしれません。本当に。

かたなさんは同時通訳者なので、瞬時に反応しなくてはならないのですよね。実は、私も過去にインタースクールで会議通訳コースを受講したことがあるのですが、その「瞬時の反応」がとても苦手でした。逆に「じっくり反応」の翻訳が自分にはあっていると思うようになり、翻訳に方向転換したのです。a の有無が気になって仕方がなかったのも、詞をじっくり読みすぎたせいもあるかもしれません。

この曲については、かたなさんに色々と問題提起をしていただいて、私の読みはまだまだ浅いと思った次第です。
本当に色々勉強になりました。ありがとうございます。

これからも、何か気づいた点がありましたら、忌憚のないご意見をお願いいたします。(*^_^*)
Commented at 2015-07-27 21:45 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 通りすがり at 2018-07-27 12:52 x
何度か他の方の訳を見て、曲の印象に合わないと思ってました。
かたなさんのmeditationの訳でスッときた感じです。
a meditationですが、いつも、何度も繰り返している中のある一回って解釈は如何でしょうか?
Commented by ladysatin at 2018-07-28 19:41
通りすがりさん
5年も前の記事にコメントをくださりありがとうございます。

meditation については、わたしもかたなさんと同じで serious thoughts という考え方に落ち着きました。その場合、普通は複数形で用いるようですが、ここでは単数形になっています。通りすがりさんの「何度も繰り返している中のある一回」という解釈はありだと思います。

個人的には、複数ある serious thoughts の中の一つと考えるとしっくりきます。
a meditation = one of the meditations と考えてはどうかなと思いました。
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by ladysatin | 2013-11-13 21:36 | Music & English_2 | Comments(12)