More Than Words – Extreme 訳詞考察(1回目)

今日から More Than Words の解説をシリーズでやります。

初めて読む方はここからスタート。
私の全訳を載せておりますので、クリックしていただき読んでいただければ幸いです。
→ 訳詞の世界~More Than Words - Extreme(和訳)

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Saying 'I love you' is not the words I want to hear from you
It's not that I want you not to say
But if you only knew
How easy it would be to show me how you feel

「愛してる」っていうのが僕がききたい言葉じゃないって言ってるのさ
君がそういわないことを望んでいるということじゃないよ
だけど君がわかってくれさえすればと思ってる
感じているままを僕に表現することがいかに簡単なことかっていうことをね
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最初の文です。
★Saying 'I love you' is not the words I want to hear from you

この文の構造はどうなっているのでしょう?
実は、ものすごく tricky な文なのです。
英語力の高い人でもほぼ100%間違ってしまうところなので、詳しく解説します。

この文の構造については以下のように考える人がとても多いです。
Saying 'I love you' 主語 (S)
is not 動詞 (V)
the words I want to hear from you 補語 (C)

これは SVC の第2文型という考え方です。
この文を見たら、普通はそう思ってしまいますよね。
そして意味は「愛している」と、君から聞きたいわけじゃない」という解釈をされる方がほとんどです。

しかし、この解釈には saying の訳がどこにもありません。
なんかよくわからないけど、こんなこと言ってるんだろうなという想像からきた訳です。
内容としてはそういうことなので、間違いとまでは言えません。
しかし構文が正確にとれていれば、この訳にはなりません。

実は、よくみると SVC とはなりえない文だということがわかります。

SVC というのは、S=Cが成立しなくてはならないものです。
例えば This is a pen. という文は SVC ですが、この文においては This = a pen が成立しています。
だから、This is not a pen. という否定文も成立します。
しかし、問題の文は S=C が成立していません。

ここからは目を皿のようにして見てくださいね。

Saying 'I love you' とは「愛していると言うこと」換言すれば「愛していると言う行為」という意味です。
一方の the words I want to hear from you は「僕が君から聞きたい言葉」と言う意味です。

この時点でわかることがあります。
「愛していると言う行為・動作」は「僕が君から聞きたい言葉」とイコールで結べないということです。
もっと短く言えば「言葉」は「行為・動作」ではない ということです。

Saying 'I love you' is not the words I want to hear from you

これを SVC だと考えて直訳すると
「愛していると言うこと(行為・動作)は、私があなたから聞きたい言葉ではない」
となります。これでは論理が破綻してしまうことがわかっていただけるでしょうか。

SVCの文型において「行為・動作」であるSと「言葉」であるCを対応させることはできない。
対応関係が間違っているんですね。ここは重要はポイントかなと思います。

しかし、この文は間違いかというとそうではありません。
ここからは頭を柔らかくして考えてみる必要があります。

実はこういう文でした。
I am saying that 'I love you' is not the words I want to hear from you.

冒頭の I am と 接続詞の that は省略されています。
「I am が省略できますか?」という質問がきそうですが、これは歌詞なので全く問題ないです。

構造は SVO の第3文型で、that 以下が目的語。
この saying は現在進行形です。

分解すると
★I am saying that
「私は that 以下のことを言っています。」

that 以下のこととはこれです。
★'I love you' is not the words I want to hear from you
「「愛している」が、私があなたから聞きたい言葉ではない」

ここでは見事に S=C が成立しています。
'I love you' 「愛している」 イコール the words 「言葉」ですね。


だから訳はこうなります。
「愛してる」っていうのが僕がききたい言葉じゃないって言ってるのさ

ひとつだけ気になるのは、"I love you" をひとかたまりと考えて is で受けているのですが、そのあと the words と複数形になっているところ。ここが phrase や sentence だと問題ないのですが。
ここはネィティブの間でも文法ミスという指摘があります。

さて続きです。
*****************************
It's not that I want you not to say
But if you only knew
How easy it would be to show me how you feel

君がそういわないことを望んでいるということじゃないよ
だけど君がわかってくれさえすればと思ってる
感じているままを僕に表現することがいかに簡単なことかっていうことをね
******************************

★ It's not that I want you not to say
この文の形はよく出てきます。

that 以下で1回否定して、主節でもう1回否定しています。
いわゆる Double Negative Sentence です。

この文の that 以下の not の位置に注目しましょう。
普通だったらこうなります。
It's not that I do not want you to say
「君にそう言ってほしくないということではない。」

しかし、この文は not to say の形をとり直後の to不定詞を打ち消しています。
It's not that I want you not to say

したがって日本語への正確な訳はこうなります。
「君がそういわないことを望んでいるということではない」

言いたいことは結論同じ。しかし、ニュアンスは大きく異なると思いませんか。

ところで、このような二重否定の文は日常会話でもよくでてきます。
たとえばこんな使い方をします。
It's not that I don't like him.
彼が好きじゃないってことじゃないよ。


★ But if you only knew
高校のときに学習するif only + 仮定法過去だと、But if only you knew の語順になるところですが、意味は同じです。「だけど君がわかってくれさえすればなあ」という意味です。

何をわかってほしいの?というのが How 以下の文です。
★ How easy it would be to show me how you feel
ここも仮定法過去になっています。
「感じているままを僕に表現することがいかに簡単なことかっていうことをね」

この文は一続きと考えることができますね。
But if you only knew how easy it would be to show me how you feel

さて仮定法過去についてはよく知られている通り、話者の主観が「実現が不可能か極めて困難」な場合に用います。しかし、この文においては「今はそうではないがいつかそうなったらいいなあ」という思いで用いられているようです。

今日はここまで。

Thank you for your time.
Commented by yamato at 2015-02-04 19:56 x
昔から好きだった曲[more than words]の歌詞を探しててたどり着きました
なんども聞いてたのに歌詞はぼやっとしか理解せず聞いてたので
このブログを読んでみたら驚きの連続で。
恥ずかしいやら嬉しいやら(笑

他の記事も読んでみますね!
本当に嬉しかったんでコメント残させていただきます。
ありがとう
Commented by ladysatin at 2015-02-04 23:13
yamatoさん
コメントをありがとうございます。
More Than Words は本当に素晴らしい曲ですね。
この記事にはアクセスしてくださる方が多く、とてもうれしく思っています。

お礼を申し上げたいのは私の方です。
ほかの記事も読んでいただけると幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
Commented by ladysatin at 2016-01-28 21:49
前畑 圭一さん
初めまして。コメントをありがとうございます。

この記事は大変アクセスが多くうれしく思っております。
失礼なことなんて全くございません。率直なご意見はありがたいです。
どうぞ気にされないでくださいね。

早速ですが、前畑さんのご質問の意味を私がきちっと解釈できているか、まず確認させてください。

>歌詞冒頭部分の『Saying ”I love you” is・・・』が、
>≪(たった一言だけの)愛してる≫と、括弧部分も省略されて存在していたとして、
>『is』が使われた可能性はあるのでしょうか

この意味は
Saying is not the words I want to hear from you
という形で使われた可能性はあるのかというご質問でしょうか。

お手数ですが、ご教示くださいませんか。
よろしくお願いいたします。σ(^_^;)
Commented by ladysatin at 2016-02-07 19:53
前畑 圭一さん
再度、コメントをありがとうございました。
今やっと、ご質問の意味がわかりました。

「(一度だけの)愛している」がききたい言葉ではないという意味だから is が使われた可能性はあるのかというご質問だったのですね。(一度だけの)は書かれていないが、ここではそれが含意されているのではという疑問ですね。

ここからは私見ですが、その意味はないと思います。ここでは "I Love You" というフレーズをひとかたまりにとらえてあるようです。"I Love You" というフレーズが1個だから単数の is になっていると思います。

ここで言いたいのは「言葉で I Love You と君が言ってくれることが僕の望みなんじゃないんだ。言葉じゃなくて態度で示してほしいんだよ。」ってことなんだと思います。

前田 圭一さんのコメントとてもうれしかったです。
また疑問点がございましたらいつでもご記入くださいね。(*^_^*)
Commented by 英検受験生 at 2016-05-28 20:40 x
素敵なブログをありがとうございます。
「More Than Words」の和訳を探して、ここにたどり着きました 。英語初心者ですが、「Saying」は動名詞ではないんですか?たまたま、動名詞の勉強していたので、そう解釈していたのですが・・・・。
また、「I Love You」はフレーズで「I」、「Love」、「You」の三つの言葉、「Words」と解釈していたのですが
、LadySatin様の解説を読んでいると、少し英語脳がこんがらがって来ました。

Commented by ladysatin at 2016-05-28 22:25
英検受験生さん
初めまして。コメントをありがとうございます。

Saying 'I love you' is not the words I want to hear from you
ここでの Saying は動名詞ではないです。そのように解釈する人が多いのですが、間違いです。もし Saying が動名詞だとすると、Saying が主語になります。その場合、上の文の骨組みを抜き出すと、Saying is not the words となります。これでは論理が成立しません。そのことを上で解説したのですが、わかりにくかったらごめんなさい。

次に「I Love You」はフレーズで「I」、「Love」、「You」の三つの言葉、「Words」と解釈しておられたとのこと。その解釈で結構だと思います。ただ、三つの言葉が主語と考えると、本来は is not ではなくて are not とすべきだと思っております。
Commented by 『かぐら』 at 2018-05-26 00:15 x
実は初めての者ではありません。
そのときは誠に申し訳ございませんでした。

冒頭の歌詞は、

『Saying 'I love you' is』



『Not the words I want to hear from you』

に分割され、

’I love you'に対して『is』を使ってもはたして良いのかという、

『is』が主題になっている歌だと仮に置くと、

歌の文法上の間違いが解消されるようなことがあるのでしょうか?

大変な失礼を重ねております。

宜しくお願い致します。
Commented by 『かぐら』 at 2018-05-26 00:27 x
謝罪の言葉がフィルターに引っかかってしまい、

削るより方法がありませんでした。

なぜかここにお伝えしなければと想いました。

誠に申し訳ございませんでした。
Commented by ladysatin at 2018-05-28 21:54
『かぐら』さん
コメントをありがとうございます。お返事が大変遅くなってすみません。

ご質問の意味がよくわからないので、検討はずれな答えになるかもしれませんが、とりあえずご説明いたします。

Saying 'I love you' をひとまとまりでに考えると、この Saying は動名詞だということになります。そうであれば、is を使っても問題ありません。しかし、そうすると意味が破綻してしまいます。この Saying は I’m saying を省略したものだからです。

例えば以下の文だったら Saying を動名詞と解釈するしかありません。
Saying 'I love you' is difficult now. 「君を愛していると言うことは、今は難しい。」

回答になっていますでしょうか。さらにご質問があればお願いしますね。
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by ladysatin | 2013-11-03 18:34 | Music & English_1 | Comments(9)