「復興」を表す英語

この記事は4年前に書いたものです。
このところ急にアクセスが増えてきたのでトップページに移動しました。

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投稿日:2012年3月1日

以前、ある方から相談を受けた内容です。

東日本大震災に関係するもので、報告書の訳文を作成しているのだが、「復興」に当たる訳語は recovery と reconstruction のどちらがいいですかというものでした。海外の文献は recovery の使用例が多く、日本人の書いた文章では reconstruction がやや多く使われているようだとのことでした。

私も一緒に考えてみました。

recover と reconstruct は synonym(類義語)になるでしょう。似ているけれど微妙にニュアンスが違います。この場合の「復興」という意味では、書く側の思い如何によってどちらでも使えそうです。

recover は「一度悪くなった状況を元に戻す、回復する」という意味で使われますね。病気から回復するときや、停電から復旧したときは recover が使われます。国の場合も震災以前の日本に回復させるという意図であれば recover でよさそうですね。

reconstruct は「損傷を受けたものを再度機能させる」という意味だけでなく、「これまでのシステムを見直し再構築する」という意味もあります。日本をより良い国にしていこう、東北を蘇らせようという強い意志、未来への希望を感じるのは reconstruct です。

日本人が書いた文に reconstruct が多く使われているのは、同じ国に住む者としての強い同胞意識の表れなのかもしれません。同じ「復興」と言っても、書く人の思いはさまざまです。英文を書くとき、どの単語を選択するかにより、その文が読者に与えるインパクトも変わってきます。

言葉の選択にこだわるということは、言葉を大切にするということでもあります。

ところで、「復興」を表す英語はほかにもありそうです。

今度は、別の人から rejuvenation はどうでしょう?という質問をいただきました。

rejuvenation...

なるほど。知的でよい表現だと思います。

類義語のニュアンスを知るには、英英辞典が欠かせません。早速 Longman のオンライン辞書で調べてみました。ジーニアス英和大辞典の定義と併記して recover, rejuvenate, reconstruct の意味を比較してみましょう。

●recover
Longman - to return to a normal condition after a period of trouble or difficulty:
ジーニアス -(人が)(通例思い病気・ショックなどから)元どおりになる、回復する

●rejuvenate
Longman - to make something work much better or become much better again:
ジーニアス -(組織などを)活性化させる

●reconstruct
Longman - to build something again after it has been destroyed or damaged:
ジーニアス -(建物などを)再建する、改築する:(国など)復興する:(組織などを)再編成する

このように見てみると、
recover + rejuvenate = reconstruct
すべて辞書に書いてあったことがわかりました。

微妙なニュアンスの違いもわかってよかった。

もうひとつおまけに「文芸復興」は renaissance ですね。

今頃気付きましたが、上記の単語全てに、「再び」を表す接頭辞 re- が当てられていますね。

他の方の質問や疑問から自分も学び、新たな知識が身につくということがあります。
こういう時ってとてもうれしいと思いませんか。
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by ladysatin | 2016-04-29 13:30 | 語法_English Usage | Comments(0)