ちょっと重たい内容が続きましたので、今日は訳詞の記事にしました。(*^_^*)


誰にでも人生の中で忘れられない曲があると思います。私にもたくさんあります。中学、高校、大学そして社会人になってから出会った曲の数々は、私の人生を彩ってくれました。ただ、その当時好きで聴いていた曲を今でも聴いているかと聞かれたら、そうでもないです。たまに思い出して聴いてみるという感じでしょうか。


その一方で、今もずっと聴き続けている曲があります。決して多くはないですが、そういう曲は、おそらく私が死ぬまで聴き続けるんだろうと思います。今回訳した Culture Club Time は、そんな数少ない特別な曲の中のひとつです。


この Time (Clock of the Heart) という曲はずっと前から訳したかったのです。が、難しいところが2箇所あって、長いこと頓挫していました。もう一度チャレンジしようと思い、詞をじっくり吟味してみました。そして、やっと自分なりに解読できたかなと思えるくらいになったので、アップすることにしました。


その難しかった箇所については最後に解説しますね。




*******************************************************

Time (Clock of the Heart)

Written by Culture Club


Don't put your head on my shoulder

Sink me in a river of tears

This could be the best place yet

But you must overcome your fears


僕の肩にもたれてこないで

僕なんか涙の川に沈んだほうがいい

今も君にはここが一番心地いいのかもしれないけど

自分の恐れを克服しなくちゃだめさ


In time it could have been so much more

The time is precious I know

In time it could have been so much more

The time has nothing to show


時の流れの中で

もっと大切にできたはずさ

僕達の時間は貴重なものだもの


時の流れの中で

もっと大切にしておけばよかった

二人の時間が教えてくれるものは何もないなんて


Because time won't give me time

And time makes lovers feel

Like they've got something real

But you and me we know

They've got nothing but time

And time won't give me time

Won't give me time


なぜなら時はただ僕の前を過ぎていくだけだからさ

時は恋人達に本物だと思えるものを手に入れた気分にさせる


だけど君と僕は知ってるんだ

恋人達が共有するのは時間だけなのだと

時は僕に時間など与えてなどくれない

決して


Don't make me feel any colder

Time is like a clock in my heart

Touch we touch was the heat too much

I felt I lost you from the start


もうこれ以上僕を凍えさせないで

時は僕の心を刻む時計みたいなもの

僕達の触れ合いはあまりにも激しい情熱を帯びていた

最初から僕は君のことを失っている気がしてたんだ


In time it could have been so much more

The time is precious I know

In time it could have been so much more

The time has nothing to show


時の流れの中で

もっと大切にできたはずさ

僕達の時間は貴重なものだもの

時の流れの中で

もっと大切にしておけばよかった

二人の時間が教えてくれるものは何もないなんて


Because time won't give me time

And time makes lovers feel

Like they've got something real

But you and me we know

They've got nothing but time

And time won't give me time

Won't give me time


なぜなら時はただ僕の前を過ぎていくだけだからさ

時は恋人達に本物だと思えるものを手に入れたような気にさせる


だけど君と僕は知ってるんだ

恋人達が共有するのは時間だけなのだと

時は僕に時間など与えてなどくれない

決して


*********************************

ここから考察をします。


まず、この曲には、冠詞なしの time と 定冠詞付きの the time が出てきます。

無冠詞の time は、言うまでもなく空間に対する時間です。定冠詞が付くと特定の時間になります。

私は無冠詞の time を「時(とき)」、定冠詞付きの the time を「二人の時間」として訳し分けをしました。


072.gifでは解釈が難しかったところについて書きます。


その箇所とはここです。

In time it could have been so much more


疑問は二つです。

●この文の it は何を指すのか?

●この文の構造はどうなっているのか?


普通、it は「先行する名詞や文の内容」を受けて[前方照応的]に使いますよね。しかし、この曲の詞には it が受けているとみられるものが、その前の verse に見当たりません。以下が前の verse です。


---------------------------------------------

Don't put your head on my shoulder

Sink me in a river of tears

This could be the best place yet

But you must overcome your fears


僕の肩にもたれてこないで

僕なんか涙の川に沈んだほうがいい

今も君にはここが一番心地いいのかもしれないけど

自分の恐れを克服しなくちゃだめさ

---------------------------------------------


では次に、「漠然と周囲の環境を指示する it」 だと考えられないかとアプローチを変えてみました。例えば It's hot in here. とか It's raining now. などで使われる it は、「環境の it」と呼ばれるものです。ただ、この it は漠然としたものなので、日本語には訳しませんよね。


一方、In time it could have been so much more における it は、漠然とした何かを指しているのではなく、明らかなる何かを指しています。というのは、「何かが so much more であったはずだ」という文なので、「何か」が明らかでないと文の意味が通らなくなってしまうと思うのです。ということで、環境の it という考え方もできないと思われます。


悩んだあげく、私にはひとつの考えが浮かびました。


もう一度このフレーズが入っている箇所を抜き出してみます。

---------------------------------------------

In time it could have been so much more

The time is precious I know

In time it could have been so much more

The time has nothing to show


時の流れの中で

もっと大切にできたはずさ

僕達の時間は貴重なものだもの


時の流れの中で

もっと大切にしておけばよかった

二人の時間が教えてくれるものは何もないなんて

---------------------------------------------


私が最終的に出した結論は、この it は、[後方照応的]に使われているのではないかというものです。


In time it could have been so much more が出てきた時点では、it は何のことだかわかりません。しかし、そのあとに The time is precious I know とあります。つまり、この it は The time を指していると思うに至りました。。


こう考えることで、2つめの疑問「この文の構造はどうなっているのか?」も一緒に解決できます。


In time it could have been so much more は完全な文ではありません。so much more のあとに何かが省略されています。おそらく形容詞でしょう。


その形容詞とは... precious です。これは、it が後方照応的に The time を受けていると考えればこそ、自然に導き出される理屈です。となると、省略しない文はこんな感じではではないでしょうか。


→ In time it (=the time) could have been so much more (precious than we thought it was).

直訳すると「時の流れの中で、僕達の時間は、僕達が思う以上に大切なものであったはずである」」となります。


そしてこのあとに The time is precious I know僕達の時間は大切なものだよね)と続くのです。


以上の解釈は、it の用法を私が検討した結果、一番しっくりくると思ったものです。


ところで、後方照応の it にすることにより、どのような効果があるのかまでは、私にはうまく解説ができません。しかし、修辞的な効果があるのは確かでしょう。先に it があるわけですから、聞き手は「おやっ、何のことだろう」と思います。次に it が示す the time が出てきて、「ああ、そういうこと」って思うんですね。


※現代英文法講義には「後方照応」ではなく、「順行照応」という言葉で説明されています。

例文)It's a nuisance, this delay. (困っちゃうな、こんなに遅れて)


考察は以上です。


*********************************


最後にですが、この歌の詞の中にこんなフレーズがあります。


Time makes lovers feel like they've got something real.

時は恋人達に本物だと思えるものを手に入れた気分にさせる


言い得て妙だと思いませんか?


George は詞の中で核心をついた表現をするのがすごく上手いと思います。

Black Money という曲の中には Somebody else's life cannot be mine. という表現があります。

「おっしゃる通り」って思いながらいつも聴いてます。


現在の George です。

おじさんになっても素敵



# by ladysatin | 2017-02-18 22:35 | Music & English_2 | Comments(8)

experience に関する一考察

以前、同格の that 節がとれない名詞についての考察 という記事を書きました。


この記事で私は、「case がなぜ同格の that 節をとれないのか」について考察しました。


今日は、もうひとつ、experience が同格の that 節をとれないのはなぜなのか」について、考えてみたいと思います。

これは、私にとって長年の疑問なのですが、なぜダメなのかを解説してある文献が、全くありません。


experience は同格の that 節をとれないのだと、機械的に覚えるのもよいと思います。しかし、ダメには何か理由があるはず。そう思うとやはり追求したくなります。

私は一技術翻訳者にすぎないので、この記事でその答えを解明するまでには至らないかもしれません。しかし、考える価値のある問題だと思います。何故ならば「experience + that 節」の誤用は至る所で見るからです。それほど違和感なく使われている(特に日本人の英語学習者の間で)といってよい思います。


この記事は、experience が同格の that 節をとれないのはこの理由ではないかと、私個人が考察した内容を記述するものです。皆様にも考えていただければ幸いです。


------------------------------------------------------------------


同格について(ロイヤル英文法 P130 より引用)

名詞または名詞相当語句をほかの名詞または名詞相当語句と並べて補足的説明を加えることがある。この関係を同格と呼ぶ。(引用ここまで)

では、ここから具体的な英文を作ってみます。

「私は英語を5年間教えた経験がある。」を英文にします。
I have the experience of teaching English for five years. – 正 〇
I have the experience that I taught English for five years. – 誤 ×

が正しくは間違いです。
...をした経験がある」というときは experience of 動名詞 の形にしなくてはなりません。
しかし、
のようにexperience + that 節」の誤用は、実際多く見受けられます。

同格の that 節の用法とは、「先行する名詞の内容を、それに続く that 節が説明する」というものです。したがって、
が成立するには、the experience の内容を that 節が説明している必要があります。

そこで、私はこう考えてみました。

<②がダメなのは、the experience の内容を that 節が説明していないからだろう。これを証明できれば、 experience が that 節を従えることができない理由が導き出せるのではないか。>

そこで、experience の定義を、英英辞書で調べました。
そしたらちょっと面白いことがわかりました。

experience
には様々な用例がありますが、以下は、
の英文に当てはまると思われる説明文です。
いずれも不可算名詞 [uncountable] の用法です。

●Longman
の記載
experience: knowledge or skill that you gain from doing a job or activity, or the process of doing this
仕事や活動、またはこれを行なう過程から得る知識や技能

e.g.) You’ve got a lot of experience of lecturing.
e.g.) He had no
previous experience of managing a farm.

●Merriam-Webster
の記載
experience: skill or knowledge that you get by doing something
何かを行なうことで得る技能や知識

e.g.) She gained/acquired a lot of experience at that job.

●Collins COBUILD の記載
Experience is
knowledge or skill in a particular job or activity, which you have gained because you have done that job or activity for a long time.
experience
とは、ある特定の仕事や活動の中で、それらを長期間行ったがゆえに得た知識や技能のことである。


e.g.) He has also had managerial experience on every level.

以上が、辞書の定義です。

072.gifこれらを見て、英英辞典の記載に共通点があることがわかりました。

それは、experience
とは knowledge(知識)でありskill(技能)だということです。
しかも、gainする(得る)ものだということなのです。

experience
は日本語で「経験」と訳されますが、私達が「経験」というとき、「過去に自分がしたこと」と捉えがちではないでしょうか。少なくとも私はそうでした。しかし、今考えると、それは私が浅はかだったというより他はありません。なぜなら、日本語の「経験」にも「知識や技能」が意味として含まれているからです。

●広辞苑における「経験」の定義の一つにこう書かれています。
「何事かに直接にぶつかり、そこから技能・知識を得ること」

このように、英語の experience に対し、日本語の「経験」を訳語にあてることは全く正しいことがわかります。

そして、ここまで見てきてようやく私は思いました。
experience
は同格の that 節をとることはできないであろうと。

なぜならば、experience の中身を that 節で説明などしていないからです。
もう一度、
の文を見てみましょう。
I have the experience of teaching English for five years.

この文は「私は英語を5年間教えた経験がある。」と訳してかまいませんよね。

しかし、この文がもつ本来の意味は、「私は、5年間英語を教えたことから得た知識や技能をもっています。」ということです。これは、上の辞書の定義からも明らかであろうと思います。

つまり、ここで使われている the experience とは、「得たもの」すなわち「成果物」というとらえ方ができるのではないでしょうか。5年間英語を教えたことを通して、the experience が生じたということです。だから、同格になりようがないのではないかと、私は思うに至りました。

違う視点から見てみます。
以下は、同格の that 節を使った典型的な文です。

I was surprised at the news that she won the game.
彼女が試合に勝ったという知らせを聞いて驚いた。

that 以下(彼女が試合に勝った)は、 the news(知らせ)の内容を具体的に説明しています。

一方、
の文をもう一度見てみます。
I have the experience that I taught English for five years.

②の文は、that 以下は the experience を説明していません。that 以下は the experience を得るために行った内容です。つまり the experience をもたらした要素と考えることができると思います。だから、同格とみなすことはできない。故に、同格の that 節を使うわけにはいかないということではないかと、私は思うに至ったのです。

皆様はいかが思われるでしょうか。

----------------------------------------------------------

最後に、このサイトの記述を取り上げたいと思います。

→ http://www.ravco.jp/cat/view.php?cat_id=5022


(ここから引用)

○ Tom had the sad experience of losing her wife.
× Tom had the sad experience that he lost her wife.


同格の of は、「行為」「経験」「習慣」等の意味を表すような名詞の説明によく使われます。一方、同格のthat 節は、「伝達」「考え」「認識」の意味を表すような名詞の説明によく使われます(名詞節の同格の項を参照)。上記の experience 以外にも、下記の名詞は、同格のof を使用し、that 節は原則的に使用しません。(引用ここまで)

----------------------------------------------------------


このサイトによると experience は 同格の of を使い、同格の that 節は使わないと書かれています。しかし、私はこの記載には納得できないでいます。というのは、ここの記載は明らかに、「experience of 動名詞」を同格表現として説明しているからです。一方私は、experience は「of 動名詞」を要素とする成果物だと考え、同格表現とはとらえていません。理由は上に述べた通りです。


このように、この of は同格の of ではなく、[材料・構成要素]を表す of と考えるのが妥当ではないかと、私は思いました。


●ジーニアス英和大辞典で of を引くと、9a にあります。

[材料・構成要素] …で作った、・・・から成る

これに当てはめて考えると、①は「英語を5年間教えたことで出来上がった experience」のような感じです。


以上、experience について考察しました。


ご感想やご意見がありましたら、コメント欄にお願いいたします。075.gif



# by ladysatin | 2017-01-29 16:22 | 英文法_English Grammar | Comments(10)