先日、高校の英語の先生から「動詞の experience は that 節を目的語としてとれるか否か」についての意見を聞かせてほしいというコメントをいただきました。

こちらの記事の下の方のコメント欄にあります。
同格の that 節がとれない名詞の考察

名詞の experience が同格の that 節をとらないということについては少し前の記事で書きましたが、「(名詞ではなく)動詞の experience が that 節を目的語としてとれるのか」ということは考えたことがありませんでした。そこでいくつかの辞書を調べてみたところ、ジーニアス英和大辞典の experience の他動詞用法のところに、以下の記載がありました。

★[…だということを] 経験により知る [ that 節]


ただ例文が載っていないので、もう少しリサーチをする必要があります。そこで、以前から気になっていたサイトを使ってみようと思いました。それが WordReference.com です。

英語に関する質問があるときは、日本のサイトだと yahoo の知恵袋や英語教材大手の Q&A コーナーなどを利用する人が多いと思います。こういったサイトのボランティアの回答者の中には英語力の高い方もおられて、有益な回答をいただくことがあります。ただ回答者はすべて日本人なので、ネィティブならではの語感という点では、難しい部分が当然あると思います。

WordReference.com には、様々な言語のフォーラムがあるのですが、英語のフォーラムでは、当然ですが英語ネィティブから回答が付くことが多いです。英語ネィティブといってもレベルは様々ですが、このサイトで回答する人のレベルは高いと感じます。また、英語圏以外の人の回答も付きますが、英語で詳しく説明できるレベルの人の回答は、それだけ信頼感があります。

今回、高校英語の先生からの質問を受けて、WordReference.com で問題の件を質問してみました。ご興味のある方は以下をご覧ください。ladysatin の初質問です。
※このサイトでは Stevie_Q というハンドルネームです。アバターはもちろんハードロック女子♪ 127.png

★動詞の experience が that 節を目的語としてとれるか否かのスレッド
https://forum.wordreference.com/threads/experience-that-clause.3314766/

3名の方が詳しく説明してくださっていますね。
あともうひとつ dream の用法についても確認したいことがあり、質問してみました。

★名詞の dream のあとに続く[of doing, that 節, where [in which] 節] の使い方の違いについてのスレッド
https://forum.wordreference.com/threads/usage-of-dream-as-a-noun.3315181/

こちらは2名の方から回答いただきました。その中のおひとりから Ngram での結果を貼り付けていただき、Google Books の検索では dream の後は that 節が圧倒的に多いことがわかりました。

WordReference.com のメンバーになってわかったことですが、ここのフォーラムにはモデレーターが常駐していて、各スレッドをチェックしています。過去にあった同じ内容のスレッドを立てたり、ひとつのスレッドに異なる質問を2つ以上盛り込むとクローズされたり、他の回答者への誹謗中傷に値する内容を書き込むと追放されます。日本のサイトはこういうものが放置されているケースが多く、見苦しいと感じることが多々ありますが、WordReference.com は気分が悪くなるスレッドがないので気持ちよく利用できます。

他の方々のスレッドを読むのも勉強になります。最近見た中で面白かったのが以下です。

Long time no see は日本人の私達にもなじみ深い表現ですね。これは久しぶりにあった人に言う言葉ですがが、では手紙やメールなどで長いこと連絡をとりあってなくて久しぶりに連絡してきた人には Long time no hear でいいんでしょうか?という質問のスレッドです。

★Long time no hear は使えるかについてのスレッド

https://forum.wordreference.com/threads/long-time-no-hear.3311689/

4名のネィティブの方がほぼ同じ内容の回答をしています。とても勉強になります。

WordReference.com は日本人の利用者は少ないです。質問も回答も英語でのやりとりになってしまうからというのもあるかもしれません。でも、ライティングの練習にもなるので一石二鳥だと思います。英語を学習されている方には、是非お勧めしたいと思いました。

注意しなくてはならないのは、正解が必ずしも一つとは限らないということです。言葉は生き物ですから、ひとくちに英語といっても、世代によっても住む地域によっても意見が異なるケースが多々あります。それを踏まえた上で、こういうサイトを英語学習に上手に取り入れていけば効果的だと思います。英語力は確実にアップするのではないでしょうか。

今日は英語学習に役立つサイトをご紹介しました。
ではまた。177.png

by ladysatin | 2017-04-28 22:08 | 英語学習のヒント_Tips | Comments(2)

恩を返す

昨日、浅田真央さんの引退のニュースを知りました。
今日もずっと浅田真央さんのことがテレビやネットで流れていました。
本当に日本中の人から愛されていたんですね。

以下は、2014年 02月 22日に、浅田真央さんについて書いた記事です。
まだブログの読者が少なかった頃の記事なので、読んだ人はあまりいないと思います。
今回のニュースを受けてトップに移動しました。

ソチオリンピックのショートプログラムで16位と出遅れながらも、フリーで完璧な演技を遂げた浅田真央さん。
鮮やかすぎる復活の裏に何があったのでしょうか。
今読み返すと、また心に響くものがあります。

毎日新聞の英語版です。
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2014年 02月 22日

今日は、久しぶりに英文精読の話題です。

英字新聞を読むのはまだ苦手という方も、旬の話題だと興味がわくかな?と思いまして、浅田真央選手に関する記事を選んでみました。

英文を読むときに、背景知識のある内容かそうでないかによって、読むスピードは全く変わってきます。長文を読む力をつけるとともに語彙力を付ける方法のひとつが、こうした直近の話題の記事を読むことだと思います。

ところで、浅田選手のフリーの演技は、多くの人々に感動を与えてくれました。私ももちろんテレビで観まして、この人は別格だと思いました。他のスケーターの方々もそれぞれに素晴らしいのですが、浅田選手はどこか別次元にいる人のように思えました。神がかりといったら大げさかもしれませんが、後光がさしているかのように輝いていました。

浅田選手はフリーのあとのインタビューで「私なりに恩返しができたと思います。」と言いました。

まだ20代前半の浅田選手が「恩返し」という言葉を発したのを聞いて、ちょっとどきっとしました。

「恩を返す」という言葉は簡単には使いません。「感謝」という言葉はよく使われますが、「恩返し」は「感謝」の先にある言葉です。よほどのことをしていただいたという思いが、彼女の中にあったのでしょう。

「皆さまが私のためにしてくださったことの数々、それらに報いるにふさわしい内容の演技で、私は皆さまにお返しいたしました。」

その思いが浅田選手の「恩返し」という言葉となって出たのでしょう。

さて、以下の英文記事の中にも「恩返し」が英語で出てきます。
どんな英語になっているでしょう。
一緒に読んでみませんか。

以下、毎日新聞の英文記事から抜粋します。
http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20140221p2a00m0sp012000c.html

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Mao Asada cries tears of joy despite 6th place finish
浅田真央 - 6位でも喜びの涙


SOCHI, Russia -- Mao Asada finished her performance with her head held high. Then she lowered her gaze and tears welled up in her eyes. As the crowd at the Sochi Winter Olympics roared and applauded, she couldn't stop sobbing.

ソチ・ロシア - 浅田真央選手は、頭を高く上げ演技を終えた。その後、視線を落とすと、涙がこみ上げてきた。冬季オリンピックのソチの観衆の歓喜の声と拍手の中で、彼女は泣くしかなかった。

Back in 2010, Asada had won silver at the Vancouver Olympics but was not satisfied with her performance, which had left her frustrated. She had spent the next four years honing her skills.

2010年を振り返ると、浅田はバンクーバーオリンピックで銀メダルを獲得したものの、自身の演技に満足できてはおらず、そのことが彼女の心にわだかまりを残していた。その後4年をかけ自分の技術を磨いてきたのだ。

After the short program at the Sochi Games, she placed a disappointing 16th. But in a brilliant comeback in the free skate, she lifted her position to come third and finish sixth overall. One episode after another came to her mind and she started to cry.

ソチのショートプログラムの結果は期待はずれの16位。しかし、フリースケートでの見事な復活で3位まで順位を上げ、最終的には6位だった。これまでの出来事が次々に思い出され、彼女は泣き始めた。

Asada began to remember the many emails she received the previous night from people who wrote that they wanted to see her smiling face. She smiled through her tears of joy: The free skate on Feb. 20 was her personal best.

浅田は、前の晩に届いた多くのメールを思い起こし始めた。それは彼女の笑顔が見たいと書いてきた人々からのものだった。喜びの涙を通して彼女は笑顔を見せた。2月20日のフリーは自己最高のスコアだった。

A night before, Asada had been on the same ice at Iceberg Skating Palace, finding herself in the depths of despair due to a stumbling short program performance. "My body didn't move," she recalled. During official morning training, she was in the same mood.

前の晩、浅田は同じアイスバーグ・スケート・パレスいた。ショートプログラムの演技での転倒を受け、深い絶望感の中にいた。「身体が動かなかった。」ことを彼女は思いおこした。朝の公式練習では、同じ思いを引きずっていた。

Her coach Nobuo Sato, 72, raised his voice. "The short program is about getting 70 points; the free program is about getting 140. Give it everything you've got!" he bellowed.

佐藤信夫コーチ(72)は声を荒げ、「ショートは70点。フリーは140点ある。持っている力をすべて出しなさい!」と怒鳴った。

After morning practice, Sato started talking about Mitsuru Matsumura, 56, who was one of his students and who competed in the 1980 Lake Placid Olympics. "His tonsils flared up after the short program but he proceeded to compete in the free program although he could not practice or eat," Sato told Asada. "I told him, 'If you collapse, I will rush into the rink to help you. Skate until you fall down.' He gave the best performance in the free program."

午前中の練習の後、佐藤コーチは、自身の教え子で1980年のレイクプラシッドオリンピックに出場した松村充氏(56)のことを話し始めた。「彼はショートプログラムの後で扁桃腺が悪化し、練習をすることも食べることもできなかった。しかし、フリープログラムを全うした。」と。「彼に言ったんだよ。『君が倒れたら、私がリンクまで走って助けに行く。倒れるまで滑るんだ』と。彼はフリーで最高の演技をしたよ。」と、佐藤コーチは浅田に言った。

Sato's talk had a sobering effect on Asada.
佐藤コーチの話は、浅田の気持ちを落ち着かせる効果があった。

"I'm not sick. I definitely can do it," she thought.
「私は病気じゃない。絶対できるはず。」と、彼女は思った。

"I could not produce a result in the form of a medal but managed to perform to the fullest. I was able to return the favor in my own way." Asada said, reflecting upon her success in translating her coach's advice into her brilliant performance.

コーチのアドバイスが彼女の素晴らしい演技につながったことを振り返りながら、浅田はこう言った。「メダルという形の結果を残すことはできませんでしたが、全力で演じきりました。私なりの恩返しができました。と。

February 21, 2014 (Mainichi Japan)
2014年2月21日(毎日新聞)

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以上です。
日本のメディアで報道されている内容ばかりなので、わかりやすかったかと思います。

私は、こういう大きなニュースのあとで英字新聞をチェックするのが好きです。大体翌日には、日本の報道と同じ内容の英文記事が出ています。その日英の記事を比較すると、直訳ではなく自然な英語が学べることがあります。

例えば、以下は実際に浅田選手がインタビューで答えた言葉です。

「こういうオリンピックという大きな舞台で、日本代表としてメダルを持って帰ることは出来なかったと思うんですけど、自分が目指しているフリーの演技が今日できた。結果としては良くなかったと思うけど、私なりの恩返しができたかなと思います。」

「結果としては良くなかった」を直訳すると The result was not good. とか It was not good as a result.になりますが、ネィティブのライターの文は、上にあるように I could not produce a result.ですね。

なるほど、result を目的語にして動詞は produce が使えるのだなとわかりますね。日本語をそのままではなくて、英語では発想を転換して考えてみる。そういう習慣を付けることで、より自然な英語力もつきます。

「私なりの恩返しができた」 - これは難しいと思いました。

ネィティブのライターはこう訳しました。
私なりに - in my own way
恩返し – return the favor


「恩返し」については、他の新聞記事では pay back を使っているところもありましたが、私は毎日新聞と同じ return the favor を真っ先に思いつきました。pay back も間違いとまでは言えませんが、pay という単語のもつ語感がどうもそぐわない気がするのです。個人的感覚なので、表現の好みの問題かもしれません。

余談ですが、昔、一緒に勤めていた外国人の部下が、帰国する前に手紙をくれました。その手紙の最後に、"I hope to return the favor someday."と書いてくれていました。そのときのことを思い出しました。return the favor というフレーズは、日本語の「恩返し」に一番近いような気がしています。

最後は、浅田選手の美しい笑顔を見ることができて、本当によかったですね。

浅田真央さん、ありがとうございます。
by ladysatin | 2017-04-11 23:01 | 英文精読_Reading | Comments(4)