久しぶりに女性アーティストの曲を選んでみました。

Suzanne VegaLuka という曲です。

Suzanne Vega のデビューは1985年。彼女のファーストアルバムは、美しく深みのあるメロディーが散りばめられていて、毎日のように聴いていた記憶があります。淡々と歌う人です。音域はあまり広くないけど声の質はとても良くて、聴いていると心地よいのです。詞の内容も独特の世界観に満ちています。

ファーストがよかったのでセカンドも買いました。
アルバムタイトルは Solitude Standing(1987年の作品)

(引っ張り出して写真をパチリ↓)
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このアルバムの1曲目 Tom’s Diner は AGF マリームのコマーシャルに使われました。ご存じの方いらっしゃるかしら。1987年のことです。かなり古いけど、YouTube で探したらありました。ついでながら、Tom’s Diner は世界で最初に MP3 フォーマットになった曲なんだそうです。

本日の曲、Luka は Tom’s Diner が終わって2曲目です。
シングルカットされ全米では3位までいきました。

Luka は何も知らずに聴くと、明るいポップスみたい。

でも、内容はとってもシリアス。

というのも児童虐待をテーマにした曲だから。

虐待を受ける少年の視点から描かれた曲です。

詞を読み込んでいくと、とても切ない気持ちになります。

私が訳詞をするときはなるべく原文に忠実に訳します。今回はもう少し踏み込んで、言葉の裏にある思いも私なりに解釈しています。



Suzanne Vega is a brilliant songwriter and singer.

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Luka
Written by Suzanne Vega

My name is Luka
I live on the second floor
I live upstairs from you
Yes I think you’ve seen me before

名前はルカっていうんだ
2階に住んでるの
あなたの部屋の上だよ
うん、僕を見かけたことあると思うよ

If you hear something late at night
Some kind of trouble. some kind of fight
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was

もしも夜遅くにね
もめごととか喧嘩みたいな騒ぎ声を
あなたが聞いたとしても
「何だったのかい?」なんて
僕に聞かないでね
お願いだよ
どうか聞かないで

I think it’s because I’m clumsy
I try not to talk too loud
Maybe it’s because I’m crazy
I try not to act too proud

僕って器用なタイプじゃないんだ
だからだと思う
あまり大きな声では話さないように努力はしてる
それか僕が馬鹿だからかな
えらそうにもしていないつもりなんだけど…

They only hit until you cry
After that you don’t ask why
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore

あの人達は泣くまで殴るだけなんだからさ
それが終わったら「どうしてなの?」って聞かないことだよ
それ以上言い争ってもだめ
口論しても無駄なんだ

Yes I think I’m okay
I walked into the door again
Well, if you ask that’s what I’ll say
And it’s not your business anyway

うん、僕は大丈夫だと思うよ
またあの家に戻ったんだ
もしあなたが聞いてきたら僕はそう言うよ
でもどっちみちあなたには関係のないことだよね

I guess I’d like to be alone
With nothing broken, nothing thrown
Just don’t ask me how I am
Just don’t ask me how I am
Just don’t ask me how I am

ただ、一人になってみたいかな
そしたら何も壊されることもないし
何も投げつけられることもないだろうからね

僕に「大丈夫?」なんて聞かないでね
「どうしてる?」なんて聞かないで
お願いだから

My name is Luka
I live on the second floor
I live upstairs from you
Yes I think you’ve seen me before

名前はルカっていうんだ
2階に住んでるの
あなたの部屋の上だよ
うん、僕を見かけたことあると思うよ

If you hear something late at night
Some kind of trouble, some kind of fight
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was

もしも夜遅くにね
もめごととか喧嘩みたいな騒ぎ声を
あなたが聞いたとしても
「何だったのかい?」なんて
僕に聞かないでね
お願いだよ
どうか聞かないで

And they only hit until you cry
After that, you don’t ask why
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore

あの人達は泣くまで殴るだけなんだからさ
それが終わったら「どうしてなの?」って聞かないことだよ
それ以上言い争ってもだめ
口論しても無駄なんだ

*************************
訳詞は以上です。

ここからは詞について考察したいと思います。

この歌には特徴的なことがありますが、皆さんは気づきましたか?
実は韻を踏んでいる箇所がたくさんあるんです。それについても書きますね。

では最初のパートから…。

Luka はアパートの外の階段にポツンと座っています。
そこを1階の住人が通りかかり Luka に話しかけます。
「君ってこのアパートに住んでる子だよね。たまに見かけるよ。名前は何て言うんだい?」

Luka は恥ずかしそうにこう答えます。
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My name is Luka
I live on the second floor
I live upstairs from you
Yes I think you’ve seen me before

名前はルカっていうんだ
2階に住んでるの
あなたの部屋の上だよ
うん、僕を見かけたことあると思うよ
************************
★floor とbefore が韻

1階の住人は心配そうに Luka を見つめます。
その表情を見てLuka は、夜中に騒動を起こしているのを彼は知っているんだろうと思います。

そしてこう言います。
************************
If you hear something late at night
Some kind of trouble. some kind of fight
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was
Just don’t ask me what it was

もしも夜遅くにね
もめごととか喧嘩みたいな騒ぎ声を
あなたが聞いたとしても
「何だったのかい?」なんて
僕に聞かないでね
お願いだよ
どうか聞かないで
************************
★night と fight が韻

1階の住人は、Luka の話を黙って聞いています。

Luka は話を続けます。
************************
I think it’s because I’m clumsy
I try not to talk too loud
Maybe it’s because I’m crazy
I try not to act too proud

僕って器用なタイプじゃないんだ
だからだと思う
あまり大きな声では話さないように努力はしてる
それか僕が馬鹿だからかな
えらそうにもしていないつもりなんだけど…
************************
★clumsy と crazy、そして loud と proud が韻を踏んでいます。

Luka は、小さな頭で虐待される原因を考えています。
でもどうしていいのかわからないのです。

次のパートで、自分は虐待が終わるまで我慢するしかないのだと、住人に語ります。
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They only hit until you cry
After that you don’t ask why
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore
You just don’t argue anymore

あの人達は泣くまで殴るだけなんだからさ
それが終わったら「どうしてなの?」って聞かないことだよ
それ以上言い争ってもだめ
口論しても無駄なんだ
************************
★cry と why が韻

ここで突然 you が出てきましたが、これはもちろん会話の相手(1階の住人)のことではありません。
一般論を言っています。「そういうものなんだ」という気持ちが入っています。

私はこの後、場面が変わったと思います。
というのは I walked into the door again と過去形が出てきたからです。

しばらく1階の住人は Luka を見かけていなかっただろうと思います。
Luka は多分、家を出たんでしょう。でもまた戻ってきたんです。
そして、Luka を見かけた1階の住人が、心配して話しかけます。
「大丈夫なのかい?」

Luka は答えます
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Yes I think I’m okay
I walked into the door again
Well, if you ask that’s what I’ll say
And it’s not your business anyway

うん、僕は大丈夫だと思うよ
またあの家に戻ったんだ
もしあなたが聞いてきたら僕はそう言うよ
でもどっちみちあなたには関係のないことだよね
************************
★okay, say, anyway の3つが韻

I walked into the door again のところは別の解釈をされている人もおられるようです。
「ドアに頭をぶつけた」という解釈ですが、私はそのように解釈しませんでした。
というのは、1階の住人と Luka は既に事実を共有していますから、うそをつく必要はないのです。
私は「また家に戻った」ことを述べていると思いました。

「君はこれからどうしたいの?」と1階の住人が聞きます。
それに対しての Luka の答えがこれです。
************************
I guess I’d like to be alone
With nothing broken, nothing thrown
Just don’t ask me how I am
Just don’t ask me how I am
Just don’t ask me how I am

ただ、一人になってみたいかな
そしたら何も壊されることもないし
何も投げつけられることもないだろうからね

僕に「大丈夫?」なんて聞かないでね
「どうしてる?」なんて聞かないで
お願いだから
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★alone と thrown が韻

I guess I’d like to be alone のところは、かなり控えめな表現になっています。

文頭の I guess は住人に「君はこれからどうしたいの?」と聞かれて、ここで少しの間があったんだろうと思わせる表現です。「そうだなあ」というニュアンスを感じます。そして、I’d like to be alone は「できたら一人になりたい。無理だろうけど。」という思いで言っていると思います。I want to be alone であれば「是非とも一人になりたい」となるでしょうが、I’d like to be alone はもっと控えめです。おそらく一人になりたいとか Luka はこれまで考えたことはなくて、1階の住人に不意をつかれてそう答えたのではないかと、私は思いました。

考察は以上です。

日本でも親から虐待を受けている子供達がいます。
私達は、死という最悪の結末を受けた子供がニュースになって初めて、こんな状況があるということを知ります。
今も助けを求めている子供達がいるのではないか。
もしかしたら自分の近くに。
何か自分にできることはないだろうかと考えます。

読んでくださった皆さん、ありがとうございました。


by ladysatin | 2016-10-13 00:45 | Music & English_3 | Comments(14)

「盛り土」の英語

このところ、豊洲市場の盛り土の問題が毎日のように報道されていますね。
今後どうなっていくのでしょう。東京都民でなくても気になります。

今日は「盛り土」という言葉に注目してみました。

送り仮名なしの「盛土」も使われるようですが、今回の報道では「り」が入っているものが多いようなので、「盛り土」を使いますね。

「盛り土」というと、私は河川の堤防や鉄道の区間の盛り土を思い起こします。
英語で表現すると、embankmentbanking を使って表現できます。

また、埋め立ての場合の盛り土には landfill filling が適語だと思います

一方、豊洲市場の盛り土は敷地造成のためのものなので、違う表現をする必要があると思います。
調べていくと raising the ground level という表現を Weblio で見つけました。

この raising the ground level は「地表面を上げる」という意味なので、これであれば、豊洲の盛り土を表すことができるように思ったのですが、これにあてはめると疑問に思う点が出てきました。

報道によると、当初の計画では、地表面から下2.0mの部分をきれいな土と入れ替えて、次に上2.5mの部分にきれいな土を盛ることになっていました。そして、この合計4.5mを盛り土として報道しているようです。以下は、今回の報道でよく見る形式の図です。

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一方、raising the ground level は、当初の ground level をゼロとしたときに、それを raise するという意味になります。ということは、この英語では、もとあった地表面から上の 2.5mの部分だけしか言い表せないので、豊洲のケースを正確に表すことができないと思いました。

さて今度は、英字新聞報道では盛り土のことをどのように表現がされているのか、いくつか見てみました。すると、こんな表現がされていました。

land elevation という表現です。

朝日新聞と読売新聞の英語版では、盛り土を land elevation と表現しています。二つの新聞が同じ表現を使っていて新鮮に思いましたが、land elevation は英辞郎にも載っていて、「土盛り」の訳語があてられていました。なるほど。land elevation だと「土地を高くする」という意味になり、raising the ground level ほどの厳密さは感じません。また、たったの2語で表現でき、簡潔です。

というわけで

盛り土 = land elevation

はい、大いに納得しました。

最後に読売と朝日の記事リンクを貼ります。
読売新聞10/1の記事 http://the-japan-news.com/news/article/0003253683
朝日新聞9/16の記事 http://www.asahi.com/ajw/articles/AJ201609160042.html

以下 land elevation の箇所を抜粋します。

●読売新聞
第2パラグラフ
Tokyo Gov. Yuriko Koike has received the results of an internal investigation regarding the problem of the decision not to conduct land elevation work under building sites at the Toyosu market. The investigation could not specify who made the important change to the original plan without even asking the opinion of experts.

小池都知事は、豊洲市場の建物の下に盛り土をしないと決定した問題で、内部調査の結果報告を受けた。この調査では、専門家の意見を聞くこともなしに、一体誰が当初の計画を変更したのかについては特定できていない。

●朝日新聞
第8パラグラフ
To deal with the problem of contamination, the experts’ council, set up by the metropolitan government from Ishihara's idea, decided on soil replacement and land elevation throughout the entire compound at a meeting on May 19, 2008.

土壌汚染対策として、石原前知事の意向で東京都が立ち上げた有識者による専門家会議は、2008年5月19日の会議で、全敷地に対し土壌の入れ替えと、盛り土をおこなうことを決定した。

第14パラグラフ
As for the fact that soil replacement and land elevation was not conducted beneath major buildings, Ishihara said, “I have no knowledge about construction methods. My subordinates decided on them by consulting a design office.”

主要な建物の下の土壌の入れ替えと盛り土がされなかった事実について、石原氏は、「私は建築方法についての知識はありません。私の部下が設計事務所とやりとりして決めたことです。」と述べた。

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上にあるように、land elevation を目的語にとる場合の動詞は、読売も朝日も conduct を使っていますね。ここもしっかり押さえておきたいと思いました。

盛り土をする = conduct land elevation

ではまた。001.gif

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追記)2016年10月23日
land elevation 以外に「盛り土」を表す表現を見つけました。
The Japan Times では soil layer plansoil layers という表現を使っていました。
これらはまさに「盛り土」そのものをさしているように思います。

色んな言い方があるんですね。(^_^)
by ladysatin | 2016-10-04 22:58 | 語法_English Usage | Comments(4)