やっかいな even

even を使った表現ってよく出てきますね。
今日はおもしろい英文に出くわしたので取り上げてみました。
ある参考書に載っていたという英文です。

She was discouraged by her failure to win even one game.

この文なのですが、以下の二つの訳のうちどちらが正しいでしょう。

①彼女は1勝すらできなかったので落胆した。
②彼女は1勝し損なっただけで落胆した。


①と②は意味が全く違いますが。。。

私がこの英文を素直に読んでの解釈は①でした。
おそらくほとんどの方が①を選ぶのではないでしょうか。

しかし。。。

参考書に載っていた訳は②だったそうです。
「えっ、訳の間違いでは?」と最初思いました。
参考書も嘘っぱちを書いている場合が多々ありますからね。

でも、色々と調べた末、この英文については①と②の両方の解釈が可能ではないかと思うに至りました。

まず even についておさらいしましょうか。

ジーニアスを引いてみました。even には、比較級を強める用法や、前出の語句の言い換えを強調する用法などいろいろな場合がありますが、この場合にあたる用法は一番オーソドックスな形です。

ジーニアスの1番目にある記載
even - [例外的な事柄を強調して] ...(で)さえ、...すら、...だって、...までも

誰もが知っている even の意味がこれでしょうか。

では、英文に戻ってみましょう。
She was discouraged by her failure to win even one game.
①彼女は1勝すらできなかったので落胆した。
②彼女は1勝し損なっただけで落胆した。

ほら、①には「すら」が入ってますよね。ジーニアスにある意味がきれいに使われています。
一方②は「だけで」という訳が当てこんであって、辞書の意味とはまったく違うではないですか。
でも、そう短絡的に考えていいものか。。。と思っていたら、ジーニアスに面白い例文がありました。

例文)She didn’t even open the letter.
この英文には2通りの解釈できるとあります。

a) 彼女はその手紙を(読むどころか)開きもしなかった。
b) 彼女はその手紙さえ開けなかった。(letter に強勢を置く場合)


つまりa) は even が open にかかっているのに対し、b) では letter にかかっているということです。
ここでわかることは、even のかかる位置は必ずしも直後ではないということなんですね。

今度は even を英英辞典で調べてみました。
●Merriam-Webster
— used to stress something that is surprising or unlikely
●Longman
— used to emphasize something that is unexpected or surprising in what you are saying


上記の内容はほとんど同じですね。
even の意味は surprising, unlikely, unexpected (驚くべき、ありそうもない、予想していない)なことを、stress, emphasize すなわち強調するために使うということなんです。

したがって、英和辞典にある意味「さえ、...すら、...だって、...までも」は、英英辞典の記載に合う日本語として適切な意味が載っているのです。こういう日本語訳がふさわしかろうということですね。

しかし、英英辞典が述べている even は「概念」しかありません。
つまり、「あれ?おかしいな。そんなことありえないでしょ。びっくりするよね。」という気持ちを even で表しているということです。

ということは、そういう気持ちを表すためであれば、解釈はいろいろ可能になります。

こういうこと。。。
She didn’t even open the letter.
a) 彼女はその手紙を(読むどころか)開きもしなかった。
  →「手紙来たんだから普通は読むでしょうに。信じられないわ。」という驚きです。
b). 彼女はその手紙さえ開けなかった。
  →「たくさん手紙が来ていて、その手紙は一番大切な人からの手紙だった。
    その手紙すら開けないなんてどういうことよ。」という驚きです。

では、元の文から even を抜かして書いてみましょう。
She was discouraged by her failure to win one game.
「彼女は1勝できなかったので落胆した。」

この文自体には複数の試合が全敗だと示唆するところはありません。わかるのは、1つの試合に負けて落胆したということだけです。ここに 「驚きや予想外」の気持ちを出すために even を入れてみると、①も②も成立するようです。

She was discouraged by her failure to win even one game.
①彼女は1勝すらできなかったので落胆した。
1勝くらいはできて当然という思いがあったのだが、それができなかった。1勝もできないのは予想外であり「驚き」だったのです。だから「1つの試合すら」という意味が可能となります。

②彼女は1勝し損なっただけで落胆した。
1勝できなかったくらいで意気消沈することは考えられなかった。まだあと何試合か残っているのだから、「たった1つの試合」に負けた程度で意気消沈するなんて、という「驚き」の気持ちが表れていると思います。

では、only や just にすればよいではないかという意見もあるでしょう。確かにこれらの語も強調のために用いられますね。しかし、only や just では「驚き」や「予想外」という主観は表現できないのです。ここが決定的に違うところと言えそうです。

単語の意味を覚えるときに、私達はつい英和辞典に頼ってしまいがちですが、やはり最終的には英英辞典で確認するということが大切だと再認識しました。apple がリンゴ、book が本というふうに、1対1で対応するものばかりだったら苦労はしません。英語の概念を汲み取った上で、何が言いたいのかを掴むということがいかに難しいことかを感じます。

私自身、これまで even ときたら「~ でさえ」と直結して考えていたので、大いに反省した次第です。

ではまた。
by ladysatin | 2014-03-30 20:52 | 語法_English Usage | Comments(2)

immediately vs. quickly

今日は immediatelyquickly についてです。

二つともよく使う副詞ですが、使い方が紛らわしい場合があるので、書きとめておきたいと思った次第。

まず、quickly には「動作・行為の時間が速く」という意味があるのは誰でも知っています。
●I cook quickly during the weekdays 「平日は手早く料理します。」

この quickly は fast と同じ意味です。「1時間でなく30分で料理をすませる」という意味ですから、この用法において quickly の代わりに immediately を使うことはできません。
この点はわかりやすいと思います。

紛らわしいのは、話者が発話してからの「経過時間」が関わってくるときです。

簡単な文を作ってみました。

① Do it immediately.
② Do it quickly.

両方とも「さっさとやってよ!」みたいな意味になるのかなと思うのですが、同じ「さっさ」でも、間の取り方が違うんです。

Longman で比較をしてみましょう。

★immediately
http://www.ldoceonline.com/dictionary/immediately_1
1番目の項目) immediately: without delay [= at once]
「直ちに」という意味です。つまり、話者は Do it immediately. と言った直後に相手にそれをしてもらいたいと思っています。10分後とかではない。

★quickly
http://www.ldoceonline.com/dictionary/quickly
2番目の項目) quickly: after only a very short time [= soon]
この記載を見ると、immediately との違いがかなりはっきりします。
immediately が at once なのに対し、quickly には soon と記載されています。

soon は「すぐに」という意味がありますが、Do it quickly. と言った直後という差し迫ったニュアンスはないようです。immediately よりも、取りかかるまでに時間の余裕が若干あるといえますね。

お母さんが「はよ宿題せーよ」とせかしている場面
●Do your homework immediately.
ゲームに夢中になっていつまでたっても宿題をしようとしない息子に、しびれを切らして言う時はこっちかな。

●Do your homework quickly.
夕食が終ってテレビを見ている息子に、明日も朝早いんだからさっさととりかかりなさいというときはこっちを使うかしらね。

ということで、この二つの違いをまとめると
immediately -発話後の時間の経過はない。「たった今すぐ」という感じ
quickly -発話後、主観的にそんなに経っていないと感じる程度の時間の経過は許容範囲


こんな感じかなと思います。

今日はちょっと気になった副詞の用法でした。
by ladysatin | 2014-03-22 18:21 | 語法_English Usage | Comments(0)

翻訳のことちょっぴり

2日続けて書くのは久しぶりです。^^

以前お話したと思いますが、私は企業で翻訳のお仕事をしています。社内翻訳者というやつですね。

いろんな分野の翻訳をしますが、家電の取扱説明書は年間通して多くさせていただいています。日英・英日両方とも担当していますが、長くやっていると実務翻訳の卵の方々からいろんな質問を受けます。

今日は知人の娘さんからの相談で、ちょっとおもしろい質問をいただきました。彼女は通信教育で翻訳の勉強をしているらしいのですが、その中でパソコンの取説の題材があったとか。そこで、ある英文に対する日本語訳に違和感をもったらしいのです。

それはこんな文でした。
Are you sure you want to delete this file?

これはパソコンの画面に表示されるメッセージの文です。
これについていた日本語訳はこうでした。

「本当にこのファイルを削除することを希望しますか?」

この日本語訳が何か問題あるのかなと思ってきいてみたら、「この場合『本当に』を訳す必要があるんでしょうか」というのです。「このファイルを削除することを希望しますか?」だけでいいのではというのが彼女の意見。

「ええ~、そうなの?」と私が言うと She said...
『本当に』で念を押している感じがするけど、ちょっとカジュアルな感じがします。取扱説明書には合わないと思います。『本当に』」より『確実に』の方がまだいいと思うのですが。」

ほぅ。。。彼女がいうのもわかるような気がしますが。。。

でも。。。ここはやっぱり「本当に」がふさわしい。
と、ワタシは思う。~(=^‥^A

実際に「本当に」は、警告メッセージとしてよく使われています。「確実に」はこのメッセージには不適でしょう。sure だから「確実に」も使えそうですが、「確実にこのファイルを削除することを希望しますか?」は、日本語として不自然さがただよう。

ここで言いたいのは、「本当にファイルを削除していいの?削除したら元には戻れないわよ~。」ということなのね。「あとは知らんよ~。」と警告しているので、「本当に」がよろしいと思います。はい。

真面目な彼女らしい質問だなあと思いました。
こういうところが気になる彼女は、いい翻訳者になりそうだなと思います。

で、ここでもうひとつ私が気になった点がありました。

それは、「希望しますか?」という表現です。英文に you want to とあるからだと思うのですが、英語に引きずられすぎて日本語訳は今一つです。

Are you sure you want to delete this file?

この英文の訳としては「本当にこのファイルを削除しますか?」くらいがしっくりきます。
つまり want to の訳は不要。

もしくは、パソコンを操作している人は「何を」にあたる部分、今回は「このファイル」のことがわかっているので、あえて「このファイル」のことも文言には入れず「本当に削除しますか?」あるいは「本当に削除してもよいですか?」と短く表現することの方が多いです。そのあとには「削除すると元に戻すことはできません。」などの表現が続いたりします。

英語は日本語のように主語を省いたり、目的語を省いたりはほぼしませんが、日本語ではよく省きます。だから、真面目に全部訳出してしまうと、とってもくどくなってしまうことがあります。流れに沿って、ストレスのない日本語訳にすることが大切だと思います。

「翻訳の基本は直訳」が私のポリシー。

でも読む人にストレスを与えてはいけない。

そのさじ加減が難しいです。いまだに。

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by ladysatin | 2014-03-17 22:54 | 日英 Translation | Comments(2)

今日は reason のお話です。

これも英語学習者の盲点になりそうなところです。
自分の復習もかねて書きとめておきたいと思います。

まず reason の意味って皆様ご存じ?

「理由」に決まってるじゃないですかぁ。何をいまさら。

はい、「理由」という答えは正しいんですが、それだけじゃないんですね。

その前に、先日 remember の意味について色々考察しましたが、何といったらいいでしょう。こういう誰もが知っているような単語こそ盲点なんですよ。というのは、一度「わかった」と思ったら、それから先は辞書を引かなくなるケースが多いの。私の場合、Eric Clapton の Tears in Heaven の訳詞のときにもびっくりしました。「tear – 涙」が複数形の tears になると「深い悲しみ」という意味になるということを初めて知りましたから。

では本題の reason について考察します。
以下の2つの文を見てみましょう。

①She has a good reason to be angry.
②She has good reason to be angry.


上の①と②の違いは、reason に a があるかないかですね。
ということは①の reason は可算名詞、②の reason は不可算名詞なのです。で、辞書を引いてみると可算か不可算かで意味が違うことに気付きます。

・可算の reason:理由、原因
・不可算の reason:理性、思考(判断)力、分別、道理、理屈


この違いはかなり重要です。
reason イコール「理由」だと思っていると、思わぬ落とし穴になると思います。

では①と②の意味はどのように違うのかみていきましょう。

①She has a good reason to be angry.
この reason は可算ですから「理由」の意味です。ということはこの文は「彼女が怒るのにはもっともな理由がある。」という意味になります。発話している人が彼女の気持ちに同意しているかどうかは、この文だけではわかりません。「彼女には彼女なりのもっともな理由がある。」という客観的な事実を述べています。

ジーニアスで good を調べてみると似た例文がありました。
I had a good reason to be absent from school.
「私には学校を休むもっともな理由があった。」

②She has good reason to be angry.
今度は reason が不可算です。不可算の reason には「理由」の意味はありません。「道理、理屈」の意味になります。この文を直訳すると「彼が怒るのはもっともな道理(理屈)にかなったことだ。」という意味です。つまり「彼が怒る気持ちはわかる。」という発話者の気持ちが表れています。

このように reason は可算名詞のときと不可算名詞では意味が違うということがわかった上で、もう少し検討しましょう。

②の文についてある人から質問されました。
以下のどっちの意味ですかね?という質問なんです。

「彼女が怒るのは当然だ」が示唆するのは
ア)今すでに怒っている
イ)まだ怒っていないが、これから彼女が怒ってもそれは当然だ


これは難しいですね。今怒っているのかどうかということです。
②の文は may well を使って書きかえることができます。
She has good reason to be angry. = She may well be angry.

また辞書を引いてみると、これも似た文がジーニアスに載っていました。
You may well be surprised at the news.
=You have good reason to be surprised at the news.
=It is natural you should be surprised at the news.
意味は「君がそのニュースを聞いて驚くのも当然だ。」

上記の例文は You に対して言っています。つまり、すでに驚いている人に対して言っています。
ということは、②の文は「彼女が怒るのは当然だ。→今すでに怒っている」と考えられますよね。

今日は reason について考察しました。

「理由」の意味で使う時の reason は、可算名詞のときなんだということ、不可算になると意味が変わるよというお話でした。

ではまた。001.gif
by ladysatin | 2014-03-16 20:23 | 語法_English Usage | Comments(2)

I Will Remember You の考察の2回目です。

訳詞はこちらにありますので読んでない方はよかったら読んでくださいね。
→ 訳詞の世界~I Will Remember You - Sarah McLachlan(和訳)

では一気にいきます~。(^-^)

*****************************
Remember the good times that we had
We let them slip away from us when things got bad

一緒に過ごした楽しい日々のこと覚えてる?
二人の間がうまくいかなくなって
楽しい時があっという間に失われていくことを
私達は許してしまった
*****************************

★We let them slip away from us when things got bad
この them はその前の the good times を受けていますね。

状況が悪くなって私達から楽しい日々がすべるように消えていくのを let - 私達は許した。
一旦関係が悪くなると、楽しかったことなど忘れてしまう。。。という感じでしょうか。

●Longman の slip away/past/by の記載
 if time slips away, past etc it passes quickly
「時間が slips away, past などという場合、時間がすばやく過ぎるということ」

例文)
The search for the missing child continued, but time was slipping away.
行方不明の子供の捜索は続いたが、時はすばやく過ぎていった。
The hours slipped past almost unnoticed.
ほとんど気付くこともなく時間はすばやく過ぎていった。

*****************************
How clearly I first saw you smilin’ in the sun
I want to feel your warmth upon me
I want to be the one

初めて会ったときに見た
太陽の下で微笑むあなた
それがどんなに鮮明であったことか
あなたの温かさを感じたい
私は特別な存在でいたい
*****************************

★How clearly I first saw you smilin’ in the sun
この How は感嘆文で「どんなにはっきりとあなたの笑顔を見たことか」という意味。

★I want to be the one
the one は the person のことで、特定の人を表しています。
「私こそ(あなたにとっての)特別な人になりたい」
the one は少し前に Vision of Love の訳詞考察で解説したのですが、このあとに関係代名詞が続くことが多いですね。

*****************************
I'm so tired but I can't sleep
Standin' on the edge of something much too deep
It's funny how we feel so much, but we cannot say a word
We are screaming inside, but we can't be heard

とても疲れているのに眠ることができない私
あまりに深い何かの際に立っているよう

おかしいわね私達
たくさんのことを感じてはいるのに声が出ないなんて
心の中で叫び声を上げても
その声は聞こえることはないのね
*****************************

この箇所は特に難しいところはありませんが、一つだけ。
★It's funny how we feel so much, but we cannot say a word

この cannot say a word は「言葉にできない」という訳でも良さそうですが、英辞郎を調べてみると
can't say a word に「声がでない」という訳がついていました。
心の中では screaming – 大声で叫んでいるのに、それを声に出して言うことができないということなのかもしれません。

例文)
I was so scared I couldn't say a word.  恐怖のあまり声が出なかった。

*****************************
I'm so afraid to love you, but more afraid to lose
Clinging to a past that doesn't let me choose
Once there was a darkness, deep and endless night
You gave me everything you had, oh you gave me life

あなたを愛することがこわい
でも失うことはそれ以上にこわい
私の望むとおりにさせてくれない過去にこだわっている

かつての暗闇、それは深くて終わりのない夜だった
あなたは持っているものすべてを与えてくれた
そう、私に生きることの素晴らしさを教えてくれたの
*****************************

最後のパートは注意すべきところがあります。

★Clinging to a past that doesn't let me choose
「私の望むとおりにさせてくれない過去にこだわっている」

この文の past に注目してみてください。
past は一般的に「過去」という場合、定冠詞の the をつけます。

●ジーニアスより
a thing of the past  過去の遺物、時代遅れの物 [人]
We cannot undo the past. 過ぎ去ったことは取り戻せない
It’s all in the past. それはもうみんな終わったことだ。みんな昔のことだ。

past に the が付くのは future との対比によるものと聞いたことがあります。

in the past ←→ in the future

しかし、ここでは Clinging to a past....になっています。
不定冠詞がつくと少し意味が変わるんです。

●ランダムハウスより
a past - (生涯・経歴などの上での)暗い(いかがわしい、恥ずべき)過去

例文)
A woman with a past couldn’t be accepted socially.
「いやしくも過去のある女性は社交界には受け入れられない。」

これはわかるような気がします。
人によって色んな過去があります。ある人の過去の様々な側面の一つと考えると、a past になりますよね。あまり話しに取り上げたくない過去についていうとき、不定冠詞を付けてぼやかすんです。深いです。

さらに choose はここでは自動詞であることにも注目。
自動詞の choose には make a choice (選択する)のほかに、be inclined (望む、・・・したい)の意味があります。

●ランダムハウスより
You may stay here if you choose. お望みならここにいてもよろしい。
She is deaf when she chooses. 都合が悪くなると聞こうとしない。

ジーニアスより
You can do as you choose. したいようにできますよ。

ということで、この箇所は意味がとても深いんですね。もう一度書きます。
★Clinging to a past that doesn't let me choose

ここから読み取れることは、この女性には何か喜ばしくない過去があって、それがあるがためにしたいようにできないということ。つまり、彼といたかったのだけれど、その過去がそうさせないのだということが読み取れます。

★Once there was a darkness, deep and endless night
「かつての暗闇、それは深くて終わりのない夜だった」

この文は、Once が文頭にあるので「いったん~すると」の構文かしらと思ったんです。でも次の文の You gave me everything you had につなぐには、Once は副詞の「かつて」がおさまりがよさそうです。

ということで、I Will Remember You の考察はこれにて終了です。

やっぱり Sarah McLachlan の詞には掘り出し物がたくさんありますね。
以前、Angel の訳詞をしましたが、Angel の詞からもたくさん学びました。
まだ読まれていない方は、よかったら上のカテゴリーから読んでいただけるとうれしいです。

いい音楽を聴いて、英語の知識も深まって。。。ああ、何という幸せ。 043.gif

ではまた。
by ladysatin | 2014-03-12 22:20 | Music & English_3 | Comments(0)

前回、I Will Remember You の訳詞をアップしました。

まだ読んでない方はこちらからどうぞ
→ 訳詞の世界~I Will Remember You - Sarah McLachlan(和訳)

で、そのあと、何回も書き直してしまいました。

ほんまにこんなに書き直すこともめずらしい。
というのも remember がとても日本語にしにくいからなんです。

Sarah の曲には似たようなタイトルの曲が二つあります。
I Will Not Forget You と I Will Remember You

I Will Not Forget You ... 「私はあなたを忘れません」
直訳ですが、これ以外の訳はできなさそうですね。

I Will Remember You...
これに「私はあなたを忘れません」という訳が付けられるでしょうか?

私はできないと思う。。。いえ「忘れません」でも間違いではないです。しかし、remember に「忘れない」という意味はそもそもないということは知っておく必要があると思います。

ジーニアスで remember を引くとおもしろいことがわかりました。

I’ll remember your kindness forever.
これには「ご親切は永久に忘れません。」という訳がついています。しかし、そのすぐ後ろに「この意味で I’ll not forget your kindness forever. とは言えない」と書いてあるんです。う~ん、「忘れません」なら not forget でいいでしょうと思いませんか?

私見ですが、remember の訳として「忘れません」とするのは日本語のコロケーションの問題だと思うんです。

例えば、「ご恩は一生忘れません」とは言いますが、「ご恩は一生覚えておきます」とは言わないですよね。だけど、この日本語の裏にあるのは、remember であって、not forget ではないということだと思うのです。そのことを、上のジーニアスの例文は物語っていると思います。

※ここで誤解を避けるために、「remember + to 不定詞」のことはここでは言及していないことを申し上げておきます。あくまでここでとりあげているのは、remember + 名詞(句)のことです。

●さて元にもどりまして、remember について Longman にはこう書いてあります。
to have a picture or idea in your mind of people, events, places etc from the past
「過去における人々、出来事、場所などのイメージ心の中にもつこと」


●ランダムハウスも引用します。
rememberの2つ目の項目
記憶にとどめる (retain in the memory)、覚えておく・覚えている (keep in mind)

この二つの辞書にあるように、remember の意味は「記憶の中に何かを保持する」すなわち「何かを覚えている」ということであって、「忘れない」ということではないのです。

こう考えてみました。
「忘れる」という行為は、まず「記憶する」ということが前提にあります。その次の段階が「忘れる」です。つまり remember があるからこそ forget があるということです。

一方の remember は forget に行く前の状態にほかならず、remember には「忘れる」という概念まで存在しないのです。ここはとても大切なところだと思います。

ただし、「注意して」という断りがあると remember に「忘れないようにする」という意味があるようです。これも書いておきましょう。
 ランダムハウスの記載 - 忘れないようにする (be careful not to forget)
 ジーニアスの記載 – 忘れないように注意する

さて、前置きが長くなりましたが、このように色々と考えてみて、I will remember you. の訳として、できることなら「忘れません」を使わずに何とか表現できないかと考えました。

最初は「あなたのことを覚えておくわ」にしたのですが、やっぱり日本語のコロケーションとして不自然さがあるんですね。正しい訳だと思いますが、違和感がぬぐえないのです。

苦しんだあげく以下のようになりました。
では考察行きます~。

**************************
I will remember you
Will you remember me?
Don't let your life pass you by
Weep not for the memories

あなたは私の記憶の中で生き続ける
あなたは私のことを覚えていてくれる?
あなたの人生をしっかりと生きてほしい
思い出を振り返って泣いたりしないで
***************************

★I will remember you - あなたは私の記憶の中で生き続ける
ランダムハウスにあった「記憶にとどめる (retain in the memory)」を少しばかり表現を変えました。
意訳ではないと思っていますがどうかな~。

不思議なことに疑問文の Will you remember me? だと「あなたは私のことを覚えていてくれる?」としても違和感がないのですね。なんでだろう?

★Don't let your life pass you by
直訳すると「人生を通り過ぎさせてはいけない」となります。
これでも良さそうですがいくつか調べてみました。

英辞郎より
let life pass by -「人生を無駄[無為]に過ごす」

Longman の pass somebody by の記載
if something passes you by, it happens but you are not involved in it:
「何かが passes you by と言う場合、その何かが起きてもあなたはそれに関わっていないということ」

この Longman の記載の裏返しとして解釈し、私の訳はこうなりました。
「あなたの人生に積極的に関わりなさい」→「あなたの人生をしっかりと生きてほしい」

★Weep not for the memories - 思い出を振り返って泣いたりしないで
この文はおもしろいです。

本来なら Do not weep for the memories. になるはず。
語順が変わることによってどうなるのか。

否定語の not は for the memories を打ち消しています。

ということは
Weep で「泣いてもいいんだよ」と肯定して not for the memories 「でも記憶のことを思って泣いちゃだめだよ」って言っていると解釈できますね。

最初の節だけで長くなってしまった。
次回に続きます。(^^)
by ladysatin | 2014-03-09 20:57 | Music & English_3 | Comments(12)

3月は、私たち日本人にとっては節目の月というイメージがありますね。

卒業式、人事異動など、日常の生活に変化が訪れることの多い月です。
必然的に別れを経験することが多い月とも言えるのかな。

今回の訳詞の世界は、この季節にぴったりかもしれません。

Sarah McLachlan - I Will Remember You

この曲は1998年のアメリカのTVドラマ「フェリシティの青春」の挿入歌だったの。
このドラマを見て遅ればせながら、Sarah McLachlan という人を知りました。
それ以来、Sarah の大ファンになった私です。

ところで I Will Remember You ってどう訳す?
日本語訳では「あなたを忘れない」と訳されているのをよくみます。
自然な日本語だと思うのですが、「あなたを忘れない」を英語に直訳すると
I will not forget you. になりますよね。

実は、Sarah の Solace というアルバムに I Will Not Forget You という曲があるんです。
ホントに。(゚゚;)

I Will Not Forget You は「あなたを忘れない」でもちろん問題ない。
では I Will Remember You にも「あなたを忘れない」という訳をつけることができるかしら。
同じ人が作った歌なのに。
Sarah は意味的に使い分けをしているんじゃないかと。。。

そんなこと考えてたらまた悩んでしまいました。

やっぱり。。。

I Will Remember You に「あなたを忘れない」という訳は付けられないみたい。
その理由は、次回の考察で書きます。(^-^)
また皆さん読みに来てくださいね。

こちらにリンク貼ってます。
→ I Will Remember You - Sarah McLachlan 訳詞考察(1回目)
→ I Will Remember You - Sarah McLachlan 訳詞考察(2回目)




Sarah さんは、年齢を重ねるごとに穏やかな表情になっているような気がします。
これからも素晴らしい曲をたくさん書いてほしいです。

Yamaha 125th Anniversary concert (January 25, 2013)

**************************************************

I Will Remember You

I will remember you
Will you remember me?
Don't let your life pass you by
Weep not for the memories

あなたは私の記憶の中で生き続ける
あなたは私のことを覚えていてくれる?
あなたの人生をしっかりと生きてほしい
思い出を振り返って泣いたりしないで


Remember the good times that we had
We let them slip away from us when things got bad

一緒に過ごした楽しい日々のこと覚えてる?
二人の間がうまくいかなくなって
楽しい時があっという間に失われていくことを
私達は許してしまった


How clearly I first saw you smilin’ in the sun
I want to feel your warmth upon me
I want to be the one

初めて会ったときに見た
太陽の下で微笑むあなた
それがどんなに鮮明であったことか
あなたの温かさを感じたい
私は特別な存在でいたい


I will remember you
Will you remember me?
Don't let your life pass you by
Weep not for the memories

あなたは私の記憶の中で生き続ける
あなたは私のことを覚えていてくれる?
あなたの人生をしっかりと生きてほしい
思い出を振り返って泣いたりしないで


I'm so tired but I can't sleep
Standin' on the edge of something much too deep
It's funny how we feel so much, but we cannot say a word
We are screaming inside, but we can't be heard

とても疲れているのに眠ることができない私
あまりに深い何かの際に立っているよう

おかしいわね私達
たくさんのことを感じてはいるのに声が出ないなんて
心の中で叫び声を上げても
その声は聞こえることはないのね


But I will remember you
Will you remember me?
Don’t let your life pass you by
Weep not for the memories

だけどあなたは私の記憶の中で生き続ける
あなたは私のことを覚えていてくれる?
あなたの人生をしっかりと生きてほしい
思い出を振り返って泣いたりしないで


I'm so afraid to love you, but more afraid to lose
Clinging to a past that doesn't let me choose
Once there was a darkness, deep and endless night
You gave me everything you had, oh you gave me life

あなたを愛することがこわい
でも失うことはそれ以上にこわい
私の望むとおりにさせてくれない過去にこだわっている

かつての暗闇、それは深くて終わりのない夜だった
あなたは持っているものすべてを与えてくれた
そう、私に生きることの素晴らしさを教えてくれたの


And I will remember you
Will you remember me?
Don't let your life pass you by
Weep not for the memories

だからあなたは私の記憶の中で生き続ける
あなたは私のことを覚えていてくれる?
あなたの人生をしっかりと生きてほしい
思い出を振り返って泣いたりしないで。。。



************************

この曲の訳詞の考察はこちらです。
→ I Will Remember You - Sarah McLachlan 訳詞考察(1回目)
→ I Will Remember You - Sarah McLachlan 訳詞考察(2回目)
by ladysatin | 2014-03-06 22:49 | Music & English_3 | Comments(4)

英語の欠陥について

ここ3カ月ほど、バーコードリーダーのプログラミングに関する説明書を数冊翻訳しました。ページ数がとにかく多かったもので大変でした。その中で、「久しぶりに出てきたな~」と思いつつ、「困ったな~」と悩んでしまった文がありました。

それはこんな文でした。2つほど例をあげてみます。
1. 基準位置から何番目のレコードを読み出すか指定します。
2. 読み取った連結QRコードを構成するコードのうち、何番目のコードであるかを示します。


何か堅苦しい日本語ですが、上記の2つに共通している「何番目の」という表現が今回のテーマです。

「何番目の」ってどう表現したらいいのでしょう?
これって。。。そう「序数」をたずねる文ですよね。

そのまえにちょっとおさらい。。。
英語の数詞には、基数(cardinal number)と、序数(ordinal number)というのがあります。
基数・・・ one, two, three など基礎となる数のこと
序数・・・ first, second, third など順序を表す数詞のこと

ということで「序数」をたずねる文を作りたいのです。
しかし、「序数をたずねる疑問詞ってありますか?」と言われたら何と答えましょうか。
たぶん誰も答えられない。。。なぜなら、英語には「序数をたずねる疑問詞がない」から。

まあ、なんてこと!

簡単な例をあげてみましょう。目の前に複数の鉛筆が並んでいます。
まず基数をたずねる疑問文から。
「鉛筆はいくつありますか?」
→ How many pencils are there?

簡単でしたね。では序数をたずねる疑問文にいきます。
「何番目の鉛筆を使いますか?」
???????? うっ、英語で書けません。。。
What number ...? なんて言えないし。。。

これが「どの鉛筆を使いますか?」だったら簡単なんです。
Which pencil do you use? でいいですよね。

このように「序数をたずねる疑問詞がない」という事実は、英語という言語の大きな欠陥を表していると言わざるをえません。日本語では問題ないのにね。

「安倍首相は、何代目の内閣総理大臣ですか?」って英文書けと言われても困っちゃう。
答えは He is the 96th prime minister.(96代目です。)と簡単なのに、96th を得るための質問が作れません。

ではどう表現するのかというと、こんな感じになります。

●How many prime ministers preceded Abe? 
●How many prime ministers were there before Abe? 
「安倍首相の前に何人の首相がいましたか?」という質問だから「95人」と答えますよね。そこから安倍首相は、96代目だと考えるんです。

●What number prime minister is Abe?
「安倍首相は何番の首相ですか?」ってこれも可能だけど、苦しい。。。
何番目じゃなくて何番ってきいてますから、序数でなく基数の質問になっちゃう。

●Which prime minister is Abe?
「どの首相が安倍首相ですか?」 ああ~どんどん遠ざかっていきます。

とにかく序数をたずねる文を作るのは不可能なので、あれやこれや表現を考えねばならないということなんです。

元に戻って私が悩んだ文ですが、あれやこれや悩んで、以下のように訳しました。

1. 基準位置から何番目のレコードを読み出すか指定します。
This specifies what number record from the reference position is read.

2. 読み取った連結QRコードを構成するコードのうち、何番目のコードであるかを示します。
This shows the code position (number) among the codes constituting the read concatenated QR code.


2つとも苦しいですね。(汗)
特に2つ目なんか、カッコ書きまでしています。(泣)

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そうそう。序数といえば、過去の報道でおもしろいものがあったんです。
これも首相がからんでくるのですが、皆さんは安倍首相の前の首相は誰だったか覚えていますか?
忘れた方は思い出してね。野田さんです。

2011年に野田氏が首相になったときの報道記事をコピーしてとっていたので引用します。

「何人目の首相?知りません」=野田新代表選出で米報道官 (時事通信)

「知らないわ。何人目の首相になるの?」。米国務省で29日に行われたヌーランド報道官(女性)の定例記者会見で、民主党の新代表に選ばれた野田氏はこの数年間で何人目の日本の首相になるのか質問され、報道官が苦笑混じりにこう問い返す一幕があった。ヌーランド氏は、野田氏の新代表選出のコメントを求められ「日本政府や次期首相と幅広い課題について緊密な連携を続けていくことを期待している」と回答。これに対し、米国の記者が「それは(近年)何人目の首相だ」と突っ込みを入れた。日本で毎年政権交代が繰り返される事態に、米国では「回転木馬のような政治」などと否定的な論調が多い。
(引用ここまで)

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「それは(近年)何人目の首相だ」
「知らないわ。何人目の首相になるの?」


ネィティブのインテリはどうこれを表現したのか興味津々でした。早速調べて、米国国務省のプレスリリースの記事にたどりつきました。

その該当箇所です。
記者:How many prime ministers would that be?
報道官:I don’t know. How many prime ministers would that be?

「何人目の首相ですか?」 ⇒ How many prime ministers would that be?

なるほどぉぉ。。。と言うしかないでしょうか。今までに見たことがない表現です。

おもしろいので現在形の文をまず書いてみましょう。
How many prime ministers are there?
これは How many apples are there? と同じですから「首相は何人いるか?」と存在している数をきいています。

これを仮定法の婉曲で表現すると
How many prime ministers would there be?
となり、「何人の首相が存在することになるだろうか?」という意味になるでしょう。

そこで今回出てきた表現は there の代わりにthatを使っている点に注目です。
How many prime ministers would that be?

that は there のように存在を表しません。指示代名詞なので何かを指しています。おそらくこの場合の that は「状態」を表しているのだろうと思います。that は具体的な物に限らず既知の状態を指すことができます。

つまり「(野田氏が首相になったという)その状態」= that と考えることができるでしょう。
最終的に考えられる訳は「(野田氏が首相になって)そうなると、これで何人の首相ということになりますかね?」になり、おそらくこれがネィティブにとっては感覚的に序数を表しているのではないか、と思った次第です。

ところでこれに対して、記者は何と答えたのか。。。
記者:It seems - better keep that in the book. (Laughter)
「本にしまっておいた方がいいですね。」(笑)

がっかり。
言ってほしかったなあと思うけど、もし答えていたとしたら、95th(序数) ではなく、95(基数)で答えているはずです。

もうひとつおまけですが、How many prime ministers would that be? で will ではなく would を使っています。would ですから仮定法ですよね。

「首相の数を数えたら(ここで仮定の意味が出る)、その数(=that)は何人?」と言ってるんじゃないかな。そして、ネィティブの知人にきいたところ、この would には皮肉が入っているとのことでした。普通にきくなら will でいいはず。日本では首相がころころ変わるので、ちょっとイヤミ?を込めたんですね、きっと。

最近は、序数を表す疑問詞として How manieth なるものがあるとかきいたことがあります。斎藤和英大辞典に載っているとか。私の勉強不足でこの本の著者を知りませんでした。おもしろい表現だとは思ったのですが、実際に使われている文献を見たことがありません。。。

ということで、「序数を表す疑問詞がなくて困っちゃたよ~」というお話でした。

読んでくださったみなさん、ありがとうございます!

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by ladysatin | 2014-03-02 18:43 | 英文法_English Grammar | Comments(3)