訳詞の世界~Time (Clock of the Heart) – Culture Club(和訳)

ちょっと重たい内容が続きましたので、今日は訳詞の記事にしました。(*^_^*)


誰にでも人生の中で忘れられない曲があると思います。私にもたくさんあります。中学、高校、大学そして社会人になってから出会った曲の数々は、私の人生を彩ってくれました。ただ、その当時好きで聴いていた曲を今でも聴いているかと聞かれたら、そうでもないです。たまに思い出して聴いてみるという感じでしょうか。


その一方で、今もずっと聴き続けている曲があります。決して多くはないですが、そういう曲は、おそらく私が死ぬまで聴き続けるんだろうと思います。今回訳した Culture Club Time は、そんな数少ない特別な曲の中のひとつです。


この Time (Clock of the Heart) という曲はずっと前から訳したかったのです。が、難しいところが2箇所あって、長いこと頓挫していました。もう一度チャレンジしようと思い、詞をじっくり吟味してみました。そして、やっと自分なりに解読できたかなと思えるくらいになったので、アップすることにしました。


その難しかった箇所については最後に解説しますね。




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Time (Clock of the Heart)

Written by Culture Club


Don't put your head on my shoulder

Sink me in a river of tears

This could be the best place yet

But you must overcome your fears


僕の肩にもたれてこないで

僕なんか涙の川に沈んだほうがいい

今も君にはここが一番心地いいのかもしれないけど

自分の恐れを克服しなくちゃだめさ


In time it could have been so much more

The time is precious I know

In time it could have been so much more

The time has nothing to show


時の流れの中で

もっと大切にできたはずさ

僕達の時間は貴重なものだもの


時の流れの中で

もっと大切にしておけばよかった

二人の時間が教えてくれるものは何もないなんて


Because time won't give me time

And time makes lovers feel

Like they've got something real

But you and me we know

They've got nothing but time

And time won't give me time

Won't give me time


なぜなら時はただ僕の前を過ぎていくだけだからさ

時は恋人達に本物だと思えるものを手に入れた気分にさせる


だけど君と僕は知ってるんだ

恋人達が共有するのは時間だけなのだと

時は僕に時間など与えてなどくれない

決して


Don't make me feel any colder

Time is like a clock in my heart

Touch we touch was the heat too much

I felt I lost you from the start


もうこれ以上僕を凍えさせないで

時は僕の心を刻む時計みたいなもの

僕達の触れ合いはあまりにも激しい情熱を帯びていた

最初から僕は君のことを失っている気がしてたんだ


In time it could have been so much more

The time is precious I know

In time it could have been so much more

The time has nothing to show


時の流れの中で

もっと大切にできたはずさ

僕達の時間は貴重なものだもの

時の流れの中で

もっと大切にしておけばよかった

二人の時間が教えてくれるものは何もないなんて


Because time won't give me time

And time makes lovers feel

Like they've got something real

But you and me we know

They've got nothing but time

And time won't give me time

Won't give me time


なぜなら時はただ僕の前を過ぎていくだけだからさ

時は恋人達に本物だと思えるものを手に入れたような気にさせる


だけど君と僕は知ってるんだ

恋人達が共有するのは時間だけなのだと

時は僕に時間など与えてなどくれない

決して


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ここから考察をします。


まず、この曲には、冠詞なしの time と 定冠詞付きの the time が出てきます。

無冠詞の time は、言うまでもなく空間に対する時間です。定冠詞が付くと特定の時間になります。

私は無冠詞の time を「時(とき)」、定冠詞付きの the time を「二人の時間」として訳し分けをしました。


emoticon-0171-star.gifでは解釈が難しかったところについて書きます。


その箇所とはここです。

In time it could have been so much more


疑問は二つです。

●この文の it は何を指すのか?

●この文の構造はどうなっているのか?


普通、it は「先行する名詞や文の内容」を受けて[前方照応的]に使いますよね。しかし、この曲の詞には it が受けているとみられるものが、その前の verse に見当たりません。以下が前の verse です。


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Don't put your head on my shoulder

Sink me in a river of tears

This could be the best place yet

But you must overcome your fears


僕の肩にもたれてこないで

僕なんか涙の川に沈んだほうがいい

今も君にはここが一番心地いいのかもしれないけど

自分の恐れを克服しなくちゃだめさ

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では次に、「漠然と周囲の環境を指示する it」 だと考えられないかとアプローチを変えてみました。例えば It's hot in here. とか It's raining now. などで使われる it は、「環境の it」と呼ばれるものです。ただ、この it は漠然としたものなので、日本語には訳しませんよね。


一方、In time it could have been so much more における it は、漠然とした何かを指しているのではなく、明らかなる何かを指しています。というのは、「何かが so much more であったはずだ」という文なので、「何か」が明らかでないと文の意味が通らなくなってしまうと思うのです。ということで、環境の it という考え方もできないと思われます。


悩んだあげく、私にはひとつの考えが浮かびました。


もう一度このフレーズが入っている箇所を抜き出してみます。

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In time it could have been so much more

The time is precious I know

In time it could have been so much more

The time has nothing to show


時の流れの中で

もっと大切にできたはずさ

僕達の時間は貴重なものだもの


時の流れの中で

もっと大切にしておけばよかった

二人の時間が教えてくれるものは何もないなんて

---------------------------------------------


私が最終的に出した結論は、この it は、[後方照応的]に使われているのではないかというものです。


In time it could have been so much more が出てきた時点では、it は何のことだかわかりません。しかし、そのあとに The time is precious I know とあります。つまり、この it は The time を指していると思うに至りました。。


こう考えることで、2つめの疑問「この文の構造はどうなっているのか?」も一緒に解決できます。


In time it could have been so much more は完全な文ではありません。so much more のあとに何かが省略されています。おそらく形容詞でしょう。


その形容詞とは... precious です。これは、it が後方照応的に The time を受けていると考えればこそ、自然に導き出される理屈です。となると、省略しない文はこんな感じではではないでしょうか。


→ In time it (=the time) could have been so much more (precious than we thought it was).

直訳すると「時の流れの中で、僕達の時間は、僕達が思う以上に大切なものであったはずである」」となります。


そしてこのあとに The time is precious I know僕達の時間は大切なものだよね)と続くのです。


以上の解釈は、it の用法を私が検討した結果、一番しっくりくると思ったものです。


ところで、後方照応の it にすることにより、どのような効果があるのかまでは、私にはうまく解説ができません。しかし、修辞的な効果があるのは確かでしょう。先に it があるわけですから、聞き手は「おやっ、何のことだろう」と思います。次に it が示す the time が出てきて、「ああ、そういうこと」って思うんですね。


※現代英文法講義には「後方照応」ではなく、「順行照応」という言葉で説明されています。

例文)It's a nuisance, this delay. (困っちゃうな、こんなに遅れて)


考察は以上です。


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最後にですが、この歌の詞の中にこんなフレーズがあります。


Time makes lovers feel like they've got something real.

時は恋人達に本物だと思えるものを手に入れた気分にさせる


言い得て妙だと思いませんか?


George は詞の中で核心をついた表現をするのがすごく上手いと思います。

Black Money という曲の中には Somebody else's life cannot be mine. という表現があります。

「おっしゃる通り」って思いながらいつも聴いてます。


現在の George です。

おじさんになっても素敵



Commented at 2017-02-21 10:52 x
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Commented by ladysatin at 2017-02-21 16:19
あるあるさん
コメントをありがとうございます。

>time won't give me time
>二人の時間は僕に、君との時間をくれなかった

「僕に君との時間をくれない」という表現は素敵ですね。
won’t とあるので、これから先のことを言っています。
「時は、僕に君との時間を決してくれることはないんだ」のようにするといいですね。

>I lost you from the start
>最初から二人で歩んでなかった

この訳は素晴らしいと思います。恋人が自分の方を向いていなかったということですよね。

この曲の詞は Boy George が書いたのですが、当時、ドラムスの Jon Moss と付き合っていたのです。George は Jon のことが大好きだったんだなと、この歌を聴くとよくわかります。後に二人は別れ、Jon は女性と結婚し子供もいます。今は良いお友達関係を築き、また同じバンドで活動しています。(*^_^*)
Commented at 2017-02-22 22:02 x
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Commented by ladysatin at 2017-02-22 23:21
あるあるさん
大丈夫ですよ。削除なんかしません。いつも真面目に考えてくださって感謝しています。
ただ非公開なので、他の方にはあるあるさんのコメントは見えないんです。それが残念ですね。

訳詞についての私の考え方なんですが、解釈として何が正しいのかは結局のところ、作った人にしかわからないと思っています。私がここで訳詞をする対象のアーティストの曲は、私の人生で重要な意味をもったものばかりなんです。だから、真意を読み解こうと、あれこれ考えます。そして、「私はこう思いましたよ」って、皆さんにお伝えしています。

それに対して賛成してくださる方もいれば、違う意見の方もおられます。それでいいのです。私の訳はたたき台のようなものです。だから、あるあるさんが「私はこう解釈しました」って書いてくださると、また私も考えることができます。これって私にとってはとてもうれしいことなんです。
by ladysatin | 2017-02-18 22:35 | Music & English_2 | Comments(4)