「紹介する」は introduce でいいですか?

私の本業は日英翻訳ですが、その傍らで、時々、ビジネスメールの代筆を頼まれることがあります。

今日は、最近依頼された英文メールについて書きたいと思います。

そのメールの中で、相手先に送信する前に語法の誤りに気付いて、慌てて修正した箇所がありました。それがけっこう日本人が引っ掛かりやすいところなんです。

ということで、また皆様と共有したいと思いました。よかったらお付き合いください。

私に英文メールの代筆を依頼してきた会社を A社とします。A社は XYZ社から翻訳を含めた制作物を受注しています。英語から他言語に展開する場合、通常、A社は、自分のところで使っている翻訳会社に翻訳を依頼しています。しかし、XYZ社からその翻訳会社の質が悪いとクレームがあり、そこは使わないでくれと言われました。そこで、XYZ社から、過去に直接取引をしていた B という翻訳会社を紹介され、B社を使わねばならなくなりました。A社が B社にコンタクトをとるのは今回が初めてです。

そこで私に回ってきたのは、B社との取引開始打診のメールです。
私は A社の担当者としてメールを書くことになりました。

では、修正前の実際の英文を書いてみましょう。実際は A4に一枚程度の長さでしたが、問題の箇所はメールの最初の方にあります。そこだけ抜粋します。

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I’m sending this e-mail through our client, XYZ Corporation based in Japan. We have researched reliable translation companies over the years, and recently, we were introduced to your company by XYZ. They offer positive assessment on your company’s overall services including translation quality. If conditions are met, we would like to begin business with your company.
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下線部の箇所を見てくださいね。
We were introduced to your company by XYZ.
ここで私が言いたいことは、「当社は XYZ 社から御社を紹介していただきました。」ということです。
しかし、この英文には語法の誤りがあります。

★introduced はここでは使えませんよね。

なぜ?「紹介された」だから introduced でいいでしょう?
「紹介する」は introduce なんですからって思いません?

「紹介する」を英語にせよといわれたら、条件反射のように introduce と答えてしまう人はとても多いです。
しかし、言わんとすることによっては、使えないんですね。

なんで使えないんでしょうね。前半はここまで。

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後半にいきます。
あ~ん、もうすでに3名の方からコメントがはいっちゃってる σ(^_^;)

もう一度、文を書きます。
We were introduced to your company by XYZ.

この文自体は正しい英文なんです。文法上の間違いは何もありません。
意味は「当社は、XYZ社によって御社へ紹介されました。(当社→御社)」ということです。

一方、私が言いたかったことは「当社は XYZ 社から御社を紹介していただきました。(御社→当社)」ということなので、そもそも目的語のとらえ方が間違っていますね。「誰を→誰に」紹介するのかという矢印の向きが逆ですから、この時点でダメな英文です。

しかし、ここでの問題はそれだけではありません。
もっと大きな問題があるんです。

話を簡単にするため、会社ではなく人物を例にして書きます。
I was introduced to John by Mariko.
能動態にするとこうなります。
= Mariko introduced me to John. マリ子は私をジョンに紹介した。

この例では、「マリ子、私、ジョン」という3人の当事者がいます。
この3人は今、どういう状況なんでしょうか。

マリ子が私をジョンに紹介したとき、当事者の3人全員がその場にいます。マリ子は「この方が○○さんです」と言って、ジョンに私を紹介しました。ここから想像できるのは、私とジョンは Nice to meet you. と言葉を交わして握手などをしたであろうということです。

元の英文に戻って検討します。
We were introduced to your company by XYZ.

we = A社、your company = B社、そして XYZ社という3社が当事者になります。ここでおわかりになるかと思いますが、この文が意味するところは、過去のある時点で、A社は XYZ社から B社に紹介されたのだということ、すなわち、A社と B社は面識があるということなんです。(※A社、B社、XYZ社は組織ですが、当然、ここでは擬人化して表現しています。)

ということは、もし、この英文のままメールを送信したとして、B社の担当者がそれを読んだら、「いつ XYZ社から A社をうちの会社に紹介されたっけ?覚えがないなあ。」と思ってしまう英文なんです。初めてコンタクトをとる会社に対して We were introduced to your company なんて書くと、もう以前に紹介済みの話になるので辻褄が合わなくなってしまうんですね。

じゃあ、どうしましょってことなんですが、introduced を 別の単語に変えたらおみごとな英文になるんです。

後半第2部につづく。

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佳境に入ってきましたよ~ん。
この時点でコメント下さった方は4名になりました。
うれしいやらあせるやらですが、最後のパートにいきます。

introduced を別の単語に変えます。その単語とは…

referred でございます。

★ We were referred to your company by XYZ.
これが正しい文です。「当社は XYZ社から御社を紹介していただきました。」という意味です。
この文であれば、初めてコンタクトをとる会社へのメールで堂々と使えます。

ところで何で referred なんでしょう?

現在形は refer ですが、refer は単体ではほとんど使われず、refer to という phrasal verb として使うことがほとんどではないでしょうか。私自身も refer は to を伴った用例しか知りません。上記の文も referred to となっていますね。そして、refer は使い方が結構難しい単語です。

私が仕事上で refer to を使うのは、ほぼ決まって参照ページに誘導するときの文言としてです。
例) Refer to page 35. (35ページをご覧ください。)

では今回の英文における refer to の用法は何なのか、ここは英英辞典で確認しておきます。
Longman のオンライン辞書で referを見てみましょう。
http://www.ldoceonline.com/dictionary/refer

4番目の項目が今回の用法になります。(以下引用)
refer somebody/something to somebody
to send someone or something to a person or organization to be helped or dealt with
人または物を、人または組織に送って、手助けまたは対応してもらうこと

う~む。「紹介」に相当するような言葉はなさそうです。しかし、「当社は XYZ 社から御社を紹介していただきました。」が意味することと合致します。当社は、XYZ社から B社に送られたんです。送られたのは、B社に対応してもらうことを期待してですよね。

ついでに例文も引用しておきます。
・My doctor is referring me to a dermatologist.
かかりつけの医者から皮膚科医を紹介してもらっている。

・My complaint was referred to the manufacturers.
メーカーに私の苦情を伝え対応してもらった。

ちなみに "we were referred to your company" でgoogle してみてください。
そのものズバリの用例がたくさんでてきます。

introduce についてもおさらいしておきます。こちらも Longman を見てみましょう。
http://www.ldoceonline.com/dictionary/introduce

見てみると、Longman は introduce を8つの用例に分けて記載しています。
今回のメールの introduce は「紹介」という日本語が固定観念としてあるために、1番目の用法を間違って使ってしまったものです。

[WHEN PEOPLE MEET]
If you introduce someone to another person, you tell them each other's names for the first time.
この文からわかるように、当事者である you, someone & another person はすべてその場にいるんですね。

もう一つ、皆様の中で疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれないと思う用法についても書いておきます。同じく Longman の introduce の4番目の項目を見てみましょう。

[NEW EXPERIENCE]
to show someone something or tell them about it for the first time
このように「人に何か新しいことを紹介する」という場合にも introduce は使います。ということは、今回のメールはこの用例に該当するのではないかという疑問がよぎるかもしれません。つまり、この用例に則したら初めてコンタクトする相手に対しても introduce が使えるのではということです。

どうでしょう。やっぱり使えませんね。今回の件で refer を使うのは、この単語に「A社を B社に対応してもらう to be helped or dealt with」という明確な含意があるからです。

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今回の記事では、日本語の「紹介する」を introduce に直結してしまったがゆえに、おかしな英語になりましたという例をとりあげました。自分では翻訳をする際に、元の日本語は何を言わんとしているのかを常に考えなければならないと言い聞かせているつもりです。しかし、こういうミスをするということは、頭のどこかに思い込みや固定観念があるということなんですね。大いに反省しなければならないと思っています。

ほかにもこんな例はたくさんあります。例えば、「反映する」と聞いたら reflect を思い浮かべる方が多いと思います。これも要注意です。いつでも reflect は使えませんよね?という話をまたいつかしたいと思います。

今回はこれにて。
読んでくださった皆さん、ありがとうございます。 001.gif
Commented by ami at 2016-04-06 15:03 x
はじめまして。訳詞の検索で見つけて以来拝見しております。
文法的に説明できないのですが、be+受動態だと導入されたと解釈しちゃうかもと感じました。知らされた、教えてもらったというほうが文脈に近いのかなとも。解説楽しみにしています。
Commented by ladysatin at 2016-04-06 15:49
ami さん
初めまして。コメントをありがとうございます。

こんなに早くにコメントをいただけなんてとてもうれしいです。
後半の解説をあとでアップしますのでお待ちくださいませ。
Commented by ファイト at 2016-04-06 19:23 x
あー、いいところで終わるな~。まるでドラゴンボールみたい!
Commented by ladysatin at 2016-04-06 20:20
ファイトさん こんにちは。
最近は一つの記事を小出しにして書いています。(笑)
ただ今、後半の部を執筆中です。
Commented by Shira at 2016-04-06 20:46 x
こんにちは。

受信した側はびっくりしちゃいますね…。
Commented by ladysatin at 2016-04-06 21:20
Shira さん こんにちは。
そうですね。(汗)
時々何も考えずにおかしなことを書きます。
送る前に「何か変だ」と気づきました。
Commented by tochanful at 2016-04-06 23:15 x
いつも、関心して拝見しています。初めて投稿させていただきます。introduceに関しては、以前NHKのテキストで、確か、I introduce you to Ms. XXYY.の語順で記され、語順が気になっていました。Cobuild Advanced Lerner's Dictionary の用例でも、May I introduce you to my uncle's secretaryとありました。これを受動態にすると,主語はto 以下になるのではないかと思います。
初めの文を受動態にすると、変になりますが、Ms.XXYY was introduced to you by me. Cobuildの疑問文を平常文に変えたうえで、受動態にすると、My uncle's secretary was introduced to you by me. になると思います。もし、 We were introduced to your company by XYZとすると、私どもは貴社にXYZに紹介してもらいましたので、よろしくお願いしますといった感じで、「私ども」を貴社に売り込むときのような感じになるのではないかと思います。 
Commented by ladysatin at 2016-04-07 23:58
tochanful さん
初めまして。コメントをありがとうございます。
お返事が遅くなりすみません。

NHK のテキストの I introduce you to Ms. XXYY. という文につきましてですが、この文は「あなたを Ms. XXYY に紹介してあげるよ」という意味で書かれてあるのではないでしょうか。SVO の構文だと思います。

S = I
V = introduce
O = you

主語の S は「する側」で、目的語の O は「される側」になります。
受動態は「される側」を主語におきますので、この文を受動態にすると
You are introduced to Ms. XXYY by me.
となると思います。
“to Ms. XXYY” は文の要素ではないので、受動態の主語にはならないと思いますがいかがでしょうか。

Ms. XXYY was introduced to you by me. という文は、I introduced Ms. XXYY to you. を受動態にしたものと考えると、成立するものと思います。
Commented by tochanful at 2016-04-08 19:40 x
ありがとうございます。
テキストをもう一度みてみました。正確には、
Everyone, let me introduce you to Mr. Chandrasekhar. He will be overseeing all contract-related matters.
です。「みんな、チャンドラセカールさんを紹介します。」とあります。これを読んで、語順が気になった訳です。新入社員を職場で紹介する場面ですので、皆さんをチャンドラ氏に紹介するというのは、変なので、英語ではこの言い方が、チャンドラさんをみなさんに紹介していると思いました。これは、introduce you to ○○で、あなたに○○について知らせるという使い方と同じかと思われます。例えば、It was my sister who introduced me to Fellini movies. と同じ使い方かと考えました。
Commented by ladysatin at 2016-04-09 23:48
こちらこそありがとうございます。
正確な英文を載せてくださってよくわかりました。

Everyone, let me introduce you to Mr. Chandrasekhar.
「みんな、チャンドラセカールさんを紹介します。」

tochanful さんは、この英文は「introduce you to ○○で、あなたに○○について知らせるという使い方と同じ」だと考えておられるということで、その例文として
It was my sister who introduced me to Fellini movies.
をあげてくださいました。

この文ですが、私の記事の中でリンクを貼った introduce の用法の4番目に該当すると思います。
Longman の [NEW EXPERIENCE] の用法です。

ここの記載を引用します。
introduce somebody to something/introduce something to somebody
例文)Malcolm introduced me to the joys of wine-tasting.

このように、[NEW EXPERIENCE] の用法では somebody to something または something to somebody とあります。

一方、お示しのチャンドラセカールさんについての英文は、somebody to somebody です。
ということは、「introduce you to ○○で、あなたに○○について知らせるという使い方と同じ」ではないように思います。

では何なのかというと、やはり初対面の人同士を紹介する文と考えてよいのではと思います。

確かに日本語訳の「みんな、チャンドラセカールさんを紹介します。」を直訳すると
Everyone, let me introduce Mr. Chandrasekhar to you.
となりそうです。「チャンドラセカールさんを」が目的語の位置にあるべきのように思います。

(以下続きます。)
Commented by ladysatin at 2016-04-10 00:14
(上からの続き)

実はここは controversial なところで諸説あります。
基本的な考え方は、introduce A to B は「A を B に紹介する」になると思います。
そうしないと目的語の考え方が崩れてしまいます。
Let me introduce myself (to you).
は「自己紹介させてください。」ですよね。

その一方で、introduce を使う場合には注意を必要とします。
introduce A to B では、A と B が初対面ですが、両方の重要度や社会的地位は異なる場合があります。
その場合、重要度の高い方あるいは社会的地位の高い方を to 以下に置く場合が多いように思います。

Everyone, let me introduce you to Mr. Chandrasekhar.
この場面では、you と Mr. Chandrasekhar は初対面であるという部分では平等なわけですが、Mr. Chandrasekhar は、大勢の you にとっては新情報であり、重要度が高いと思うのです。だから Mr. Chandrasekhar を to 以下に置いているのではないでしょうか。これがもし、Everyone, let me introduce Mr. Chandrasekhar to you. であれば、特別な理由がない限り不自然な印象を受けます。

それと、「みんな、チャンドラセカールさんを紹介します。」については、日本語の語順としてはこれが自然なのだと思います。これについては特に問題を感じませんでした。

以上は私見ですので、異なる意見をお持ちの方もおられるかもしれません。
この話題は私にとっても勉強になりますので、ご意見がある方はコメントをお願いできれば幸いです。
Commented by tochanful at 2016-04-11 22:37 x
introduceに関し、過度に拘ってしまい、本来のreferの使い方や、紹介を受けたとの表現が主題のところ、introduceばかりの投稿で脱線になってしまったのではないかと汗顔の至りです。you were referred .. や you come (highly) recommended from XYZ で表現等、紹介についてお聞きするべきだったと反省しています。

Satinさんからintorduce に多くの考察とご教示いただき、本当にありがとうございます。
introduce A to BとしてAをBに紹介すると思っていたところ、Aのところにyouを使った英文で、どうも逆に解するしか仕方がない文章にあたり、気になっていました。特に、let me introduce you to XXの形の文章は、NHKのテキスト以外でも「皆さんにXXを紹介します」の使い方に出会い、どうしてそうなるのかを考えていたところ、Satinさんのブログでintroduceを取り上げておられたのを見つけ、これは疑問についてお聞きするチャンスと思い、ついついこれについて書きすぎました。自分勝手な書き込みをしてしまい申し訳ありませんでした。

Commented by ladysatin at 2016-04-13 13:14
tochanful さん
とんでもないです。tochanful さんから introduce について考える機会をいただき、感謝しています。問題提起していただくまで、自分自身、深く考えていなかったことを反省した次第です。intorduce A to B については、英文の構造から考えると A が目的語になりますので「A を B に紹介する」と訳するのがわかりやすいです。しかし、A と B の関係やそれぞれの立場を考えたときに、日本語訳では「B を A に紹介する」とすべき場合が多々あるということを心に留めておく必要があると思いました。言葉は方程式ではないということをあらためて思います。

私が書く記事をたたき台にして皆様が考えてくださり、疑問に思ったことをこのようにコメントにしてくださると、私自身とても勉強になります。お返事を書くために辞書で意味を再確認したり、文法書や参考書を読み直して知識を拡充することができます。本当にありがたいです。

これからも忌憚のないご意見をお願いいたします。
by ladysatin | 2016-04-06 14:10 | 語法_English Usage | Comments(13)