不定冠詞を使う条件について

以前から書いていますが、冠詞って難しいですね。

英語学習の最難関は冠詞と言い切ってしまえるほど難しいと個人的には思っています。
たぶんそう思っているのは私だけじゃないかも。

なぜ難しいのでしょう。

それはおそらく 規則がありながら当てはめて考えることができないことが多い からではないでしょうか。

ある名詞を辞書で引くと、必ず 可算(Countable) と 不可算(Uncountable) の記載がありますね。

可算だから a が付く。不可算には a は付かないと普通は考えます。この分類の仕方は学習者にも教える側にも便利ではあるものの、何と大雑把なくくりなのかと思うことが多いです。定冠詞の the についても既出の名詞について使うことが多いわけですが、それだけではないことは英語を勉強している方はご存じの通りです。

私も長く英語を勉強してきたわけですが、冠詞だけは得意にならない。
う~ん。得意にならなくてもいいけど、もう少し頭の中を整理したいという思いはずっとありました。

ということで不定期ですが冠詞についてちょっとずつ書いていこうと思います。

先生は、現代英語冠詞事典(大修館書店)です。
これ以降は省略して「冠詞事典」と記載します。

注:この記事では、冠詞辞典からそのまま引用する場合は、その旨わかるような書き方をしていきます。
  例文は辞書や英辞郎から拾っていく方針です。

まず、冠詞事典を読んで特徴的なのは、可算名詞・不可算名詞という考え方がされていない点です。
私が一番驚いたのはここでした。

いままで可算・不可算という分類にとらわれすぎて壁にぶつかってきたのかとも思えてきます。
というのも、可算でありながら不可算になる名詞のなんと多いことか。

例えば bus は可算だから a bus だけど、手段を表すときは by bus のように無冠詞なんだよね~って覚えるんだけど、では手段を表す時は何で無冠詞なの?と聞かれても答えられない。とりあえずそんなもんだと覚えるしかないので、いつまでたってもスッキリしないわけです。

もう可算名詞・不可算名詞という前提はやめなさいと言われているように思えたのが、冠詞事典の序章に書いてあった以下の文言。

072.gif英語の不定冠詞は、名詞部が完結を表すときに用いられる。

さらに「上の一文に不定冠詞の用法のすべてが凝縮されている。」とあります。

つまり名詞部が完結を表すとは、ぼやっとしたものじゃなくて、まとまった形として認識できるか否かということ。それが不定冠詞を使う条件だということです。

ここで用語の定義が重要なので、ここは本からそのまま引用させていただきます。
-------------------------------------------------------
「名詞部」(nominal part) とは名詞句 (noun phrase) から限定詞 (determiner)(=冠詞や所有格、指示形容詞など)を除いた部分を指す。

例)This book is a treasure chest of information.(本書は情報の宝庫だ)
名詞句 - this book, a treasure chest of information, a treasure chest, information
名詞部 - book, treasure chest of information, treasure chest, information
--------------------------------------------------------

ところで、まとまった形として認識できるかどうかの例は、私にはこんなのが思いつきます。例えば一匹の鶏は姿かたちが想像できるものだから a chicken だけど、料理で「チキンとビーフのどっちにする?」なんて会話のときは I prefer chicken. のように無冠詞になるよってことです。もう鶏の形状は保っていないからですね。

chicken は普通名詞ですが、抽象名詞はどうでしょう。抽象名詞は、概念的なものを指しますから普通は不定冠詞はつきません。しかし、抽象名詞であっても名詞部が完結を表すときは不定冠詞が付くんです。

それは修飾語を伴って、その抽象名詞に関する意味が完結するときです。

例)have a true intelligence  真の知能を持つ[有する](英辞郎より)

知能という意味の intelligence は辞書では不可算名詞となっていますが、形容詞の true により intelligence の程度が限定されたため a が付いています。

しかし、これも必ずしもということではありません。以下の例には a が付いていません。

have average intelligence 人並みの知能がある(英辞郎より)
have good intelligence に関するしっかりとした情報を持っている(同上)

何故なのかというと、average や good という形容詞には不定冠詞とつけるにふさわしい完結性・具象性を表すには情報が不足しているからです。true は限定度が非常に高い形容詞なので a が付くということです。

このように、形容詞の修飾により抽象名詞に a, an が付くことは知っていましたが、無条件に付けられるということではないようですね。good や average は何となくぼやっとしたイメージしかありません。このぼやっとした感じって結構大切なような気がします。

これまで私自身、不定冠詞を付与する際の条件として、可算・不可算という分類は常にありました。この分類をすっぱり頭の中から消すことはありえないと思います。しかし、これにこだわりすぎるとあとに進めないこともわかりました。

本日の最後の冠詞事典からの引用
★「名詞部が完結を表す」ということは「名詞部がイメージ可能である」と言い換えてもよい。

「イメージが可能」ということは、「漠然としたものでない」「ぼやっとしたものでない」ということですね。
ここから長い道のりですが、とりあえず掴みはOK ということにしておきます。

ではまた。001.gif
Commented by Shira at 2015-06-01 19:25 x
こんにちは。

Shape of my Heart の歌詞が縁でこちらのブログに漂着しましたが、有益な記事が多いのに驚いてます。鉱脈発見!という感じです。

手を付けづらい大部な参考書もこうして「ドア」を開けてもらうとわかりやすいですね。

私も自身のブログに勝手なことばかり書いていますが、貴ブログを紹介してもよろしいでしょうか。
Commented by ladysatin at 2015-06-01 23:47
Shira さん
ありがとうございます。Shira さんもブログをなさっているんですね。リンク先を早速拝見しました。通訳のお仕事をされているとは、素晴らしいですね。プロフィールを拝見して、私と共通点があることを発見しました。同じ通訳学校に通っていました。私の場合は大阪校でした。15年くらい前になります。会議通訳コースの入門科IとⅡを修了し、同時通訳の本科に進級したのですが、途中から翻訳に進路変更したのです。

通訳と翻訳は同じ英語を使う仕事ですが、全く異なる職業だと思っています。私の場合は英文を組み立てることにやりがいを感じていたので日本語から英語への翻訳が自分に合っていたようです。

私のブログを紹介してくださるとのこと、とてもうれしいと同時にありがたく思います。もちろんOKですと書こうとしたのですが、その前に、Shira さんのブログの右の欄でご紹介されているリンク先のサイトを一つずつ拝見し、とても真面目で高尚な方々のサイトばかりだったので、一気にひるんでしまいました。(;^_^A アセアセ・・・

私のブログは真面目な英語学習の記事もあるのですが、ハードロックのミーハーな記事も多く、かなり独特なノリでやっていますので、その方々のブログと並ぶと恥ずかしいような気がします...なので、Shira さん個人用のブックマークにしていただいて、たまに遊びに来ていただければ大変うれしく思います。せっかく皆さんにご紹介してくださるというご提案をいただきましたのにすみません。でもとてもうれしかったです。時々私も Shira さんのブログにおじゃましますので、Shira さんも気が向いたときに是非お越しください。

どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします。(*^_^*)
Commented at 2015-06-02 22:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ladysatin at 2015-06-03 10:43
ブログ本文でのご紹介でしたら問題ありません。
とてもうれしいです。(^_^)
ご配慮いただきましてありがとうございます。
Commented by OED-LovesMeNot at 2022-10-26 15:56 x
>>("have a true intelligence" という用例に関して)true は限定度が非常に高い形容詞なので a が付くということです。
====

いや実際には、have * true intelligence" の場合でも、a がつかないで無冠詞の方が圧倒的によく使われていると思います。

Or, for instance, think about your humble Roomba vacuum. Roomba is a robot, but it does not ★have true intelligence★.
(ニュース記事より)
https://uscatholic.org/articles/202002/ai-and-ethics-arent-mutually-exclusive-says-this-data-scientist/

ご自分で検索されてみたらすぐにわかると思いますが、have a true intelligence のように a のついた用例を挙げているサイトは、英辞郎を初めとする日本の変なサイトばかりであるように見えます。英辞郎は無料で膨大な英語情報を提供する素晴らしいサイトのように見えますが、それはあくまで素人にとって便利だということであって、プロが使うにはあまりにぞんざいにできた(少なくとも100回に1回くらいは間違いを含む)間違いだらけのサイトだと思いますが、いかがでしょうか?
Commented by ladysatin at 2022-10-31 15:06
OED-LovesMeNotさん
こちらにもコメントをいただきありがとうございます。

英辞郎の件は確かに真に受けるのは考えものかもしれないと思う時があります。私は有料版を使っているのですが、英辞郎だけを頼りにするのは危険ですね。
基本的には英英辞典を使うようにしているのですが、やはり手間がかかってもインターネットで数多くの事例を調べなければと思っています。
あと WordReference というサイトをときどき使っています。冠詞に関してではないのですが、以前どうしてもわからないことがあって質問したら、ネィティブの方が何名か回答してくださって、とても参考になりました。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by ladysatin | 2014-11-03 17:42 | 冠詞_Article | Comments(6)