compensate の用法

今日は compensate という単語の使い方にフォーカスです。

またまたお友達からの質問。
こんな英文がある参考書に載っていたらしい。

① He compensated him for his lack of experience with the effort.
 彼は自身の経験不足を努力で補った。

compensate には「(損失・欠点などを)相殺する、埋め合わせをする」という意味があります。

compensate には他動詞と自動詞の用法がありますが、この英文では him が目的語にきていますので、ここではもちろん compensate は他動詞として使われています。

そこで、compensate を自動詞として使えば、him はなくてもよいのではないかと質問されたのです。
しかも、この文では He と him は同一人物であることは明らかです。him はとっちゃっていいでしょって。

というのも、英辞郎には compensate の直後に for がきている例があるとのこと。

抜粋します。
★compensate for 「~を償う、~を相殺する」
② You don't need to compensate me for this. : 弁償は結構です。
③ Reading often compensates for lack of knowledge. : 読書はしばしば知識不足を埋め合わせる。

なるほど。②の compensate は他動詞用法で me を目的語としています。
一方、③は自動詞用法で compensate for となっています。

ということは、自動詞用法にすればいいことにして①から him をとってみよう。
①’ He compensated for his lack of experience with the effort.

③がよかったから①’も良さそうですが、この文はおかしいんです。

では検討します。
③ Reading often compensates for lack of knowledge.
この文においては、Reading というものが lack of knowledge を補完すると言っています。わかりやすく言えば、知識全体を100としたときに、今現在はその知識は70しかない。そこで残りの不足した知識30を Reading で補うのです。

この理屈を①’に当てはめるとおかしなことになってしまいます。
①’ He compensated for his lack of experience with the effort.
経験全体を100としたときに、今は70しかない。残りの不足分の経験を He で補うと解釈されるため論理が破綻します。さらに、with the effort は何なのさって話になります。

結論として、①’は非文になるでしょう。him は省略できません。

元に戻って①の英文を見てみます。
① He compensated him for his lack of experience with the effort.

この文から him を省略することはできないことはわかりました。
ただし、他動詞用法であれば、his lack of experience を直接目的語にすれば①と同じ意味になります。
= He compensated his lack of experience with the effort.

さらに、同じ意味を表すために compensate を自動詞として使って書くことはできるかと言われたら、もちろんできます。
= The effort compensated for his lack of experience.
経験全体を100としたときに、今は70しかない。残りの不足分の経験を The effort で補うという意味になりますから、③のReading...と全く同じ考え方です。

compensate の用法はもちろんのこと辞書に書いてあるのですが、前置詞の使い方ひとつで大きな間違いになるという典型的な例ではないかと思いました。

ではまた。
Commented at 2016-08-27 15:47 x
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Commented by ladysatin at 2016-08-27 20:46
岡崎さん
初めまして。コメントをありがとうございます。

お返事する前に質問ですが、You compensate for what I lack. と Please allow me to compensate for it. の意味するところと出典を教えていただけますか。後者は特に it が意味するところが知りたいです。よろしくお願いいたします。
Commented at 2016-08-28 02:32 x
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Commented by ladysatin at 2016-08-29 00:59
岡崎さん
改めてコメントをありがとうございます。

① He compensated him for his lack of experience with the effort. ○
 彼は自身の経験不足を努力で補った。
①’ He compensated for his lack of experience with the effort.. ×

岡崎さんがあげてくださった例文は以下の通りです。
ア I will compensate for those costs.
イ You compensate for what I lack.
ウ I compensate for this damage with my insurance.
エ Please allow me to compensate for it.

そしてご質問は上記ア~エの文は①‘と同じ形だから、私の説明はおかしいのではないかということですね。

私の見解を述べさせていただきます。
①の場合の compensate は「<損失・欠点など>を(事で)埋め合わせをする(ジーニアスより)」という意味です。通常は、この意味で compensate を使う場合、compensate one’s lack of experience with diligence (ジーニアスより)のように使います。記事本文に書いた He compensated his lack of experience with the effort. がこの形です。with the effort が「(事で)」に当たります。

あるいは自動詞を使って書くこともできます。②Reading often compensates for lack of knowledge. がこの形です。注意していただきたいのは、ここで主語にきているのは、Reading であって「人」ではないということです。ジーニアスには自動詞の例文はなかったのですが、信頼のおける文献を調べた結果、この意味における compensate の自動詞用法で、「人」が主語にくる用例は見つかりませんでした。以下は見つかった例文です。
Commented by ladysatin at 2016-08-29 01:00
(上からの続きです。)

Her intelligence more than compensates for her lack of experience. (Longman)
A dog’s good sense of smell compensates for its poor eyesight. (現代英語語法辞典)
I believe that hard work can compensate for lack of experience. (現代英語語法辞典)
His enthusiasm more than compensates for his lack of experience. (Cambridge Dictionary)

これら4つの例文は「(事で)」にあたる部分はそれぞれ、Her intelligence, A dog’s good sense of smell, hard work, His enthusiasm です。

このように「<損失・欠点など>を(事で)埋め合わせをする(ジーニアスより)」の表現としては、上記2種類(他動詞と自動詞)が一般的なのですが、①の文は He を主語にしたものだということです。He を主語にしているので、him を省略して compensate を自動詞として使うことができません。何故ならば、この用法では「人」が主語にこないからです。

次に、岡崎さんがあげてくださったア~エの文は、compensate を自動詞として用いた正しい文だと思います。ただし、ア、ウ、エの文における compensate は「(主に)金銭で支払う」という意味であって、①の用法とは異なります。イの You compensate for what I lack. は、私が本文で書いた③ Reading often compensates for lack of knowledge. と同じです。「完全なる私」を100%としたときに、その中の欠けている30%を「あなたという人」で補うという考え方になると思います。ここではたまたま「人」である You が主語に来ているだけであって、Books でも Movies でもかまいません。

①は He が主語であるために、him をとって①’にしてしまうと、意味をなさなくなると私は思います。
Commented by ladysatin at 2016-08-29 01:00
(上からの続きです。)

私としましては、記載内容に誤りがある場合には訂正する方針です。compensate を検索すると私の記事がトップから3番目くらいにありますので、間違った情報を皆様にお届けすることは不本意です。以上は、私が色々と調べ考察した結果の内容であり、現段階では岡崎さんがご指摘の内容にはあたらないと考えております。見落としている部分がある場合は、さらなるコメントをお願いできれば幸いです

一旦これで回答とさせていただきます。
Commented at 2016-08-29 02:33 x
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Commented by ladysatin at 2016-08-29 23:02
>仕事と研究の両立で時間がタイトなため、せっかく詳しく書いてくださったものをすぐに読む余裕がございません。またゆっくり拝見したいと思います。

これはいくらなんでも失礼だと思いますよ。私は、これまで全てのコメントに目を通し、どんなに仕事で忙しくとも翌日にはお返事を差し上げてきました。全ての人に対してです。今回の岡崎さんの疑問についても、再度、様々な文献を読み、お返事をさせていただきました。調査の時間を含めると5時間はかかっています。どのように書けばわかりやすいだろうと考えながら、何度も書き直しています。

すぐに読む余裕がないのであれば、なぜ質問をされたんでしょうか。岡崎さんは「これについてどのように理解すべきなのかよくわかりませんので、もしよろしければご説明いただけませんでしょうか。」と書かれています。私はこれを読み、早く解決してさしあげなければと思いました。だからあれだけ丁寧な解説をしたのです。

読むつもりがないのであれば、質問などしないでいただきたい。
Commented by ladysatin at 2016-08-29 23:04
>訂正云々などといったことには関心を持っておりません。

こういう投げやりな発言もどうかと思います。私が「記載内容に誤りがある場合は訂正する方針です。」と書いたのは、岡崎さんがこのことに関心があるのかないのかとは関係ありません。私のブログには毎日1000人を超える方が訪問されます。通訳や翻訳などの業種の方もおられるため、適当なごまかしは通用しないのです。これまでも、間違いを指摘されたことが数回あり、その都度、訂正してきました。記事を書きかえるのでなく、訂正として追記しています。また、間違いを指摘してくださった方のコメントもそのまま残しています。

私は英語を使った仕事をしており、英語力を上げるために人並み以上の努力をしてきたという自負があります。しかし、完璧な人間ではなく、間違いをおかすのです。私がこれまで指摘された間違いを削除することもなく、そのまま残しているのは、私という人間はこの程度のものであるということを、皆様に知っていただくためです。

この記事も毎日多くの方が読みます。私が今回書いた岡崎さんへのお返事は、そうした方々も読むのです。岡崎さんと同じ疑問をもった人々への回答でもあります。また、「いや、やはりあなたの書いている内容は間違っているよ」と思う方がおられたとすれば、その方がコメントを書いてくださるでしょう。そして、私が間違っていれば「訂正します」ということを言っているのです。
by ladysatin | 2014-06-21 20:35 | 語法_English Usage | Comments(9)