訳詞の世界~Angel – Sarah McLachlan (和訳)

この曲は Angel と「彼」とのダイヤログ(対話)だったようです。
登場人物とストーリー展開、点と点がつながりました。

このシリーズは全部で4回あります。
残りの3回は訳詞の考察です。
以下をクリックしてくださいね。
→ Angel - Sarah McLachlan 訳詞考察(1回目)
→ Angel - Sarah McLachlan 訳詞考察(2回目)
→ Angel - Sarah McLachlan 訳詞考察(3回目) 


実は数年前にこの曲の訳を試みたのですが、理解できない部分がありました。それはこの曲には一人称の I と二人称の you が出てくるのですが、これがどういう関係なのかということでした。

ひとりの人物が「私」として存在し、別の誰かに「あなた」と語りかけているのかなと思っていたのです。しかし、そう考えると意味をなさないところが出てきてしまい、あきらめの境地でした。

今回、もう一度この曲と向き合って目を見開いてよく読んでみました。そしたらわかりました。

「私=I」というのは何らかの問題を抱えていて天に召されようとしている人です。
その人に対して「あなた=you」と言って語りかけているのが Angel です。

この曲を訳するにあたり、様々な文献を見て、実際に Sarah が言及した言葉もよく読みました。
疑問点がほぼクリアになり、自分でもつじつまが合う訳ができたように思います。


では訳詞にいく前に Wikipedia に書かれていた内容を引用します。

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●Wikipediaより
It was inspired by articles that she read in Rolling Stone about musicians turning to heroin to cope with the pressures of the music industry and subsequently overdosing. She said that she identified with the feelings that might lead someone to use heroin: "I've been in that place where you've messed up and you're so lost that you don't know who you are anymore, and you're miserable—and here's this escape route. I've never done heroin, but I've done plenty of other things to escape."

She said that the song is about "trying not to take responsibility for other people's problems and trying to love yourself at the same time".


●訳してみましょう。
Angelは、Rolling Stone紙に掲載されてあった記事を読みインスパイアされてサラが書いた曲です。その記事とは、音楽業界におけるプレッシャーに耐えていくためにヘロインに手を出し、しだいに過剰摂取になってしまったミュージシャンについてのものでした。彼女は、ヘロインを使うにいたる気持ちに共感したと語っています。「とても混乱して、身も心もぼろぼろになり、自分が誰なのかもわからなくなり、とっても自分がみじめに思えてしまう。そんな状況に私はずっといました。そしてここに逃げ道があるんです。私はヘロインに手を出したことはないけれど、逃げるためにほかのことをたくさんしてきました。」

彼女がこの曲で言いたかったこと - 「他人が問題をもっているからといって、自分がその責任を引き受けようなどとはしないこと。同時に自分自身を愛そうとすること。」
(引用ここまで)

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City of Angelsという映画の挿入歌でした。
メグ・ライアンとニコラス・ケイジのラブストーリー

最後は悲しい結末でした。

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Angel

※以下、青文字は Angel の言葉、黒文字は主人公の言葉です。
二人の対話を聞いてください。。。

Spend all your time waiting
For that second chance
For a break that would make it okay

ずっとそうやって待ち続けているのね
もう一度チャンスがやってくるのを
それをつかめる幸運を

There's always some reason
To feel not good enough
And it's hard, at the end of the day

十分に心が満たされないと感じてしまうのには
いつだって何らかの理由があるのでしょう
だから一日の終わりは辛いのね


I need some distraction
Oh, beautiful release
Memories seep from my veins

僕には気晴らしが必要なんだ
そう、美しい解放感がね
記憶が僕の血管から染み出ていくような

Let me be empty
Oh, and weightless
And maybe I'll find some peace tonight

僕が空っぽな状態に
そう、そして無重力な状態になることを許してほしい
そうすれば今夜
心の平安を見つけることができるだろうから

In the arms of the angel
Fly away from here
From this dark, cold hotel room
And the endlessness that you fear

天使の腕に抱かれて
ここから飛び立つといいわ
この暗くて冷たいホテルの部屋から
そしてあなたが恐れる悪循環から

You are pulled from the wreckage
Of your silent reverie
You're in the arms of the angel
May you find some comfort here

あなたの中の静かなる幻想の残骸
そこから助け出されるわ
天使の腕の中にあなたはいるの
ここで安らぎを見つけられますように

So tired of the straight line
And everywhere you turn
There's vultures and thieves at your back

真っ直ぐな道を歩くのにうんざりして
後ろを振り返ったと思ったら
どこを見ても他人を食い物にしたり
盗みをはたらく人ばかりね

The storm keeps on twisting
You keep on building the lies
That you make up for all that you lack

嵐のような日々があなたにつきまとい
あなたは自分に欠けているものすべてを補いたくて
自分で作り上げた嘘を積み重ねていくの


It don't make no difference
Escaping one last time
It's easier to believe in this sweet madness
Oh, this glorious sadness
That brings me to my knees

状況は何も変わらないんだ
最後にもう一度だけと思って逃避してみると
この甘美な狂気、ああ、この美しき悲しみを
信じることのほうがたやすいことなのだとわかる
僕はそれにさからうことはできない

In the arms of the angel
Fly away from here
From this dark, cold hotel room
And the endlessness that you fear

天使の腕に抱かれて
ここから飛び立つといいわ
この暗くて冷たいホテルの部屋から
そしてあなたが恐れる悪循環から

You are pulled from the wreckage
Of your silent reverie
You're in the arms of the angel
May you find some comfort here

あなたの中の静かなる幻想の残骸
そこから助け出されるわ
天使の腕の中にあなたはいるの
ここで安らぎを見つけられますように


**********************************

次回からは Angel を深く考察しています。
なぜ「 Angel と「彼」とのダイヤログ(対話)だった」と考えた経緯についても解説していますので、よかったら読んでくださいね。上の方にリンクを貼っております。
Commented by おんぴこりん at 2014-10-22 15:46 x
大変参考になりました。
some distraction,beautiful releaseはスラングでドラッグだと感じます。
Commented by ladysatin at 2014-10-22 22:07
おんぴこりんさん
初めまして。コメントをありがとうございます。
some distraction と beautiful release は本当にそんな感じがしますね。
別の言葉で言い換えたのかもしれません。
サラさんの言葉の選び方のセンスは卓越していますね。
Commented by Dark at 2015-04-24 01:38 x
素晴らしい和訳に感激を受けました
今、色々とすごく行き詰まっていて、凄く共感しました
CITY OF ANGELSは大好きな映画トップ10に入るくらいに大好きな映画です
ちなみにキリスト教徒ではありませんが
人は亡くなる時に天使が魂に寄り添ってくれるのかと思うと「死」が不思議と怖くなくなりました
あたしの守護天使はミカエルでした
心に響く和訳を本当にありがとうございます
Commented by ladysatin at 2015-04-24 23:04
Dark さん
初めまして。コメントをありがとうございます。
心に響く和訳と言っていただいて大変恐縮しています。

私も City of Angeles は大好きな映画です。
とても切ない物語でしたね。
最後のシーンは目に焼き付いて離れません。

Dark さんの守護天使はミカエル...そういうのわかるんですね。
私の守護天使は誰なのか調べてみます。

自分自身につらいことがあったときに寄り添ってくれる歌の存在ってとても大きいですよね。私の場合、この歌を聴くと、不思議に心が落ち着くと言うか、足元を見つめ直すきっかけになってくれます。
Commented by PSMN at 2020-07-26 09:12 x
美しい曲と歌声が心に響くのはこんな悲痛な叫びが秘められているからなのですね。現代人の誰もがもちあわせているであろう感情。この曲がますます好きになりました。
Commented by ladysatin at 2020-07-26 19:17
PSMN さん
コメントをありがとうございます。
ブログを始めた頃に書いた記事なので、今読み返すと少し恥ずかしいです。
Sarah McLachlan は素晴らしいアーティストですね。
私も大好きな曲なので、ご共感いただき大変うれしく思います。
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by ladysatin | 2013-11-24 16:45 | Music & English_3 | Comments(6)