2013年 08月 20日
文法の勉強はほどほどがいいかな
キーワードは「優先順位」と「出たとこ勝負」
以前、おもしろい質問に出くわしました。ご紹介します。
「文法書を読んでいると、不定詞の副詞的用法には「目的、結果、原因・理由、判断の根拠、条件、感嘆・願望」などがあるのですが、例文を読んでもすぐにどの役目を果たすのかわかりません。どうしたらすぐわかるようになるのでしょうか?」
というものでした。
これを読んだ私の感想 - 「わ~こんなこと考えながら英文を読んでるの?」
というのは、こういった分類(目的、結果、原因・理由、判断の根拠、条件、感嘆・願望)を念頭におきながら英文を読むということを、私自身したことがなかったからです。と言いながらかつて高校生に教えていたころは、この分類を使って指導していました。我ながら矛盾しています。
しかし、英語を教える立場にいる人は、これらの分類を知っていて「この場合の不定詞は副詞的用法で目的を表しているのですよ。」と明確に教えます。市販の文法書のどれを見てもこのような分類をされています。学習者に頭の中を整理して理解してもらうために、便宜上このような分類がなされているのです。
分類自体には何の問題もありません。しかしその一方で、こういった分類が学習者に害を及ぼしているのではと、この質問を読んで思いました。
真剣に英語を学習している人々がいます。英文法をマスターしたいと思って文法書と問題集を購入し勉強します。しかし、途中でさじを投げてしまう人が多い。これは何故なんだろうと思っていたところに、この質問がありました。考えていくうちに、ひとつの理由がわかったような気がしています。
それは、「文法を学習する際に優先順位をつけていない」ということです。
すべてを一律の重要度で理解しなければならないという思い込みにより、脳みそがキャパ超えをおこします。結果としてモチベーションの低下につながり「文法の勉強はもういやだ」となってしまうことは想像に難くありません。
そもそも、英文法をすべて自分のものにすることなんて、私を含めて普通の人には無理な話なのですが、真面目な人ほど文法書一冊を制覇したがります。私は、そういう人々には「そんなことやめようよ。」と言いたいですね。
「文法を学ぶ際の優先順位」と書きましたが、上手に英文法を学習していく上で、このことはとても大切だと思っています。
先の質問で「不定詞の副詞的用法」の話が出ましたので、これを例にとって説明します。
不定詞の副詞的用法には、「目的、結果、原因・理由、判断の根拠、条件、感嘆・願望」などがありますが、この中で一番重要なのは何でしょうか?
「目的と結果」です。
それは英文に登場する頻度を見れば一目瞭然でしょう。「目的と結果」は副詞的用法の中のおそらく7割程度の頻度で登場していると思います。(数的根拠は一切ありません。私がこれまで英語の文献を読んだ経験値からの印象です。)
「目的と結果」はおそらくどの文法書をみても副詞的用法の筆頭に出てきているはずです。一番重要だからです。「感嘆」が最初に出てきているものはないと断言してよいでしょう。辞書も同じですね。主として使われるものが最初に出てきます。
ということは、「目的と結果」以外は一括して「その他」のくくりにしちゃってかまわないって思いませんか。「目的、結果、原因・理由、判断の根拠、条件、感嘆・願望」を一列にならべて学習するのでなく、重要度の高いものだけまずつぶそうという考え方です。
すべてを一律に勉強しようとするから苦しくなります。
まずは各項目の重要度の高いところからやるということを提案したいです。
「目的と結果」は常に対にして考えます。何故ならば互換可能な場合が多々あるからです。例えば次の文です。
I went to the department store to buy Christmas presents.
目的と考えると「クリスマスプレゼントを買うためにデパートへ行った。」となり、結果ととらえると「デパートへ行ってクリスマスプレゼントを買った。」となります。この場合どちらがふさわしいのか?それは前後の文脈をみながら、何に力点がおかれているかにより判断します。
では、目的でも結果でもない文が出てきたらどうするか。「その他」のくくりにしたところです。
He was surprised to hear the news.
不定詞に違いありません。全部知っている単語ばかりですね。おそらくここで普通の人は想像力を働かせて「そのニュースを聞いて驚いたんだな」と解釈するでしょう。あるいは、surprise を辞書で引いて、これと全く同じ形式の文があることで理解力を深めるでしょう。これは副詞的用法のどの分類になるのだろうということは考えないはずです。ですからこれはこれで終わり。先に進みましょう。気になるようであれば文法書を見てみましょう。「理由」のカテゴリーに入っているはずです。
見たこともない英文に出くわしたときには、その都度調べる。その積み重ねがすべてなんじゃないかと思うのです。最初に「出たとこ勝負」と書いたのはこのことでした。
私なんてそれの繰り返しでここまできました。少し前の記事で「anymore を肯定文で使うことを知らなかったんです」って書きました。今までその用例を見たことがなかったし、不自由をしたこともありませんでした。私にとって、anymore を肯定文で使うことは「その他」のくくりだったんですね。だから、これも「出たとこ勝負」です。出たからには調べまくりました。そして今では自分のものになりました。
これでいいのでは?
先の質問をされた方は TOEIC のスコアが800程度で、そこから伸びないのだと言っておられました。ある程度の英語力がついてきた人が、そこで足踏みしてしまうことはよくあることです。文法を一からやり直そうと思って分厚い文法書を買ったものの、いろんな用例がありすぎて、何をどこから勉強すればいいのかわからなくなったのでしょう。
英文法はもちろん大切です。文法とはその国の言語の規則をまとめたものなので、正しく理解し使えることは理想です。でも皆、忙しい。時間をやりくりして勉強するのですから、出来る限り要領よくいきたいですよね。
まずは「優先順位の高いところ」からやっつける。あとは「出たとこ勝負」でいきませんか。
「文法力が高い」イコール「英文が読める」ではないですから。
このことについては、またの機会に書きたいと思います。
本日は長文でございました。
いつか書きたいなと思っていたことだったので、つい力が入っちゃったな。(;^_^A